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あらわれを哲学する

存在から政治まで

編著:荒畑 靖宏
編著:吉川 孝

紙版

内容紹介

現象学の無限の可能性

すべてはあらわれざるをえない。

世界は、その根本のところで、<なにかが・なにかに対して・なにかとしてあらわれる>というあり方をしているのではないか。これが私たちの直観である。そしてこの直観は、さらなる哲学的探求へと開かれていく。

目次

はじめに   編者

第1部 ある
第1章 存在と真理  荒畑 靖宏
はじめに
1 「ある」と「真」
2 「ある」の真実的用法
3 ハイデガー真理論の眼目?
4 論理学(真)と存在論(有)の同一性
5 『存在と時間』第四四節の真相―哲学的論理学の可能性

第2章 存在と真理における「多と一」  秋葉 剛史
 はじめに—存在に関する一元論と多元論
1 多元主義のいくつかのモデル
2 真理の多元主義
3 単一の存在概念にもとづく多元主義
4 二つの多元主義の相違点

第3章 無と存続 メルロ=ポンティによるベルクソン批判を巡って  岡嶋 隆佑
 はじめに
1 疑似観念としての無
2 肯定主義としてのベルクソン哲学
3 時間意識:メルロ=ポンティによる批判
4 無と想像力:絶対的な働きとしての持続
5 持続と行為
結びに代えて

第2部 あらわれる
第4章 意識を意識する 「意識」概念への媒介論的アプローチ  田口 茂
はじめに
1 「意識」概念は「否定」によって媒介されている
2 媒介現象としての意識―実体から媒介へ
3 志向性―対象と世界による媒介
4 身体による媒介
5 身体と世界の捻れたループ
結語

第5章  体験の一回性について  村田 憲郎
はじめに
1 風船の箱
2 志向的体験
3 「過程」としての体験
4 永劫回帰

第6章 像はどのようにあらわれるのか フッサールの像意識論を解釈して擁護する  植村玄輝
はじめに
1 物的な像・像主題・像客体―フッサールの基本的発想
2 像意識の分析に像客体は必要なのか
3 像客体に向けられた疑念を取り除く
4 本章の解釈をさらに擁護する
おわりに

第7章 魔術とは何か 自然主義的アプローチ                  武内 大
はじめに
1 魔術とアストラル界
1.1 不思議の国、アストラル界/1.2 アストラル界へのアクセス技法
2 魔術の自然化
2.1 クロウリーの科学的イルミリズム/2.2 自然主義的オカルティズム
3 魔術の自然主義的解釈
3.1 アストラル界とは何か/3.2 魔術的技法の自然主義的解明/3.3 魔術儀式の役割/3.4 魔術の効果
おわりに

第3部 かんがえる
第8章 デカルトと合理主義の臨界   秋保 亘
はじめに
1 「科学革命」と合理主義
2 永遠真理創造説と自然学の関連
3 数学的真理と私たちの精神の構成
4 自然学と数学的真理
5 思考の枠組みの摘出と合理主義の臨界

第9章 哲学は遅れて メルロ=ポンティと構造の問い  小林 徹
はじめに
1 世界の揺らぎ
2 哲学の遅延
3 構造の哲学
4 視覚の謎
5 最後の言葉

第10章 認識と倫理 水俣から問われる哲学  吉川 孝
はじめに
1 マードックと現象学
2 市井三郎の挫折
3 中立性への批判
4 認識の正義から倫理へ
おわりに

第4部 よくいきる
第11章 現れを迎え入れるという倫理  小手川正二郎
はじめに
1 「何かが私に現れる」とは?
2 「あるがままに現れる」とは?
3 私の見え方が問い直される
4 「あるがまま」に対して「透明」になる
5 <他者とともに>見る
結び

第12章 レヴィナスにおける悪と責任   村上暁子
はじめに
1 悪の因果的責任追及における困難
2 <苦痛を被ること>における悪のあらわれ
3 他者の被る苦痛=悪に対する応答責任
4 「間人間的秩序」としての「倫理」

第13章 私は「私」から出られるのか   中村 佑子
はじめに
1 「私」という閉じ込め
a ある雪の日/b「私」と物質/c 死とは何か/d 論理実証主義に抗して/e 世界の限界
2 私からの脱出としてのケア的主体
a 母とは器である/b 主体が溶け合う世界/c ヤングケアラーの宙吊り感/d 病の人間の言葉

第5部 ともにある
第14章 喪失という攪乱 死別を中心に  中 真生
はじめに
1 あるとないから考える
1.1 あるからないへ/1.2 あるとないのあいだの不均衡/1.3 あるをはみ出していくない
2 世界へのかかわりに与える影響
2.1 世界へのかかわりの前提としての故人/2.2 死別と身体の喪失――共通性と相違/2.3 馴染みの世界と現実のずれ/2.4 世界へのかかわり方の再構成/2.5 故人との絆

第15章 不可視性と共同体の倫理 アウグスティヌス「説教」九九における聖書解釈佐藤 真基子
はじめに
1 倫理的正しさを自負する人の盲目性
1.1 自己の存在についての理解の欠如/1.2 目に見えないものを信じる心の欠如
2 共同体と倫理
2.1 規範にしたがって人を排除する分断的思考/2.2 見えない愛、見えない共同体
おわりに、に代えて

第16章 自由と政治 <ただ共にある>ことを護る  斎藤慶典
はじめに
1 根源自由
2 積極的=応答的自由
3 自由の拮抗と共存
4 法の下での消極的=限定的自由
5 法の支配への異義申し立て
6 もう一つの、別の共同体

あとがきにかえて  斎藤慶典

人名索引

著者略歴

編著:荒畑 靖宏
慶應義塾大学文学部教授
編著:吉川 孝
高知県立大学文化学部准教授

ISBN:9784771037076
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:304ページ
定価:3300円(本体)
発行年月日:2023年03月
発売日:2023年04月07日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QDHR5