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格差と分断/排除の諸相を読む

編著:林 拓也
編著:田辺 俊介
編著:石田 光規

紙版

内容紹介

格差はいかにして生じ、人びとの行動や意識にどのような影響をおよぼすのか。
職業や教育などの社会階層、ジェンダーや国籍(ナショナリティ)、社会関係(ソーシャル・キャピタル)、政治参加や国民意識などにおける様々な格差とその影響について、社会学の視点と手法を通じて明らかにする。
2020年にはじまったコロナ禍によって,残念ながら本書で論じたような各種の格差は拡大傾向にあると考えられる。その拡大を押しとどめ,可能であれば解消を目指すならば,ただ格差を「問題」と告発するだけでは不十分であろう。解決の糸口をつかむためにも,問題を正確に理解し,その発生の要因やもたらす影響を明らかにするような研究が必要である。多様な側面から「格差」の発生要因とともに,様々な社会現象への「格差」の影響力を解明した本書は,まさに現代社会の学術研究上の必要に応えた一冊であると自負している。(「おわりに」より)

目次

序 章 「 格差問題」と現代の日本社会 【田辺俊介・林 拓也・石田光規】
 1 現代社会における「格差」
 2 「格差」をつうじた排除と分断
 3 本書で読み解く格差と分断/排除
 4 本書の概要

第Ⅰ部 格差に関わる社会的属性

第 1 章 地位達成過程の国際比較 【中尾啓子(著)/田辺俊介・林 拓也(訳)】
     ― 2008年東アジア社会調査に基づく4カ国のデータ分析
 1 地位達成過程の研究
 2 東アジア4カ国の背景―日本,韓国,台湾,中国
 3 分析で使用するデータ
 4 分 析 結 果
 5 地位達成過程に関する社会的文脈

第 2 章 職業の序列構造を捉えるアプローチ 【林 拓也】
     ―評価的/関係的アプローチに着目して
 1 職業を指標とする不平等尺度
 2 評価的アプローチに基づく職業威信尺度―「合意」ベースの序列
 3 社会関係に潜む不平等性
 4 関係的アプローチに基づく社会的距離尺度―「凝離」ベースの序列
 5 関係の不平等構造と「分断」を捉えるために

第 3 章 日本の階層研究とジェンダー 【脇田 彩】
     ―女性とジェンダーの包摂が切りひらく視角
 1 階層研究へのジェンダーの導入
 2 階層研究における「ジェンダー問題」の背景
 3 日本の階層研究における女性・ジェンダーの包摂
 4 ジェンダーと社会階層による不平等研究のこれから

第 4 章 社会階層と移民 【大槻茂実】
     ―国勢調査データによる探索的検討
 1 はじめに―社会階層と移民
 2 移民研究の焦点と課題
 3 国勢調査データの利用
 4 階層構造における中国系移民と日本人の比較
 5 階層構造における移民と性別分離

第 5 章 教育機会の格差と家族 【斉藤裕哉】
     ―家族の資源と教育選択に着目して
 1 教育機会の拡大と定位家族間の格差
 2 経済的資源による教育格差
 3 文化的資源による教育格差
 4 合理的選択に基づく教育格差
 5 家族に起因する教育格差

第Ⅱ部 格差が人々の行動・意識に与える影響

第 6 章 弱い紐帯の強み(The strength of weak ties)再訪 【石田光規】
     ―包摂の機能に着目して
 1 弱い紐帯への注目
 2 弱い紐帯にまつわる一連の研究
 3 強い紐帯のジレンマと弱い紐帯の強み
 4 弱い紐帯の包摂機能の検証
 5 弱い紐帯の強み―再訪

第 7 章 育児サポートネットワークと社会階層 【星 敦士】
     ―出産・育児に関する相談相手の時系列変化
 1 育児サポートネットワーク研究の背景
 2 社会関係の変化と育児サポートネットワーク
 3 誰に出産,子育ての悩みを相談するか
 4 育児サポートネットワークのこれから

第 8 章 政治意識・行動と格差 【桑名祐樹】
     ―対立と格差の階層政治論
 1 投票参加の階層的格差を議論する
 2 投票の階層的格差を階層政治論に位置づける
 3 対立の中の「格差」
 4 投票参加の階層的格差から示唆されること

第 9 章 ナショナリズムと社会的格差 【田辺俊介】
     ―類型化と国際比較による関連性の検証
 1 ナショナリズムと格差の影響関係
 2 格差とナショナリズム
 3 ナショナリズムの類型とその担い手
 4 ナショナリズムの類型と格差

ISBN:9784771035904
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:194ページ
定価:3300円(本体)
発行年月日:2022年02月
発売日:2022年03月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JHB