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クィア・シネマ・スタディーズ

編著:菅野 優香
他著:河口 和也
他著:長島 佐恵子

紙版

内容紹介

ジェンダーやセクシュアリティの規範性やカテゴリーの境界線を問い直す概念としての「クィア」は、LGBTブームのはるか以前から、映画文化を通じて日本に流入し、その地平を広げてきた。作品や表象のなかで、不可視化され、無視され、隠蔽されてきたものは何か。それらを「クィアなもの」としていかに再発見できるか。あつかう地域や新旧問わず、幅広い作品を様々な方法論で論じた本書は、クィアとシネマをめぐる思考と実践のアーカイヴである。

目次

序章 
クィアとシネマをめぐる思考と実践【菅野優香】

第1章 
クィア・シネマの歴史【菅野優香】
:『パンドラの箱』に見る可視性と共時間性
正しい間違い
可視性とは何か
クィアという方法論:複数の時間と歴史へ
『パンドラの箱』と誤引用
ルル/ブルックスのレズビアン的主体性

第2章 
アメリカ合衆国のゲイ解放運動の表象に向けて【河口和也】
:『真夜中のパーティ』から『ミルク』まで
ストーンウォール・インの暴動以前:『真夜中のパーティ』(ニューヨーク)
ホモファイル時代における「自己嫌悪」の物語
ゲイ・リベレーションの「ヒーロー」:『ハーヴェイ・ミルクの時代』(サンフランシスコ)
ゲイ・リベレーションの歴史化:劇映画としての『ミルク』

第3章 
溶け込まずに生き延びること【長島佐恵子】
: 映画におけるバイセクシュアリティ表象を読む
はじめに
バイセクシュアリティの表象をめぐって
〈壁〉をめぐる欲望
バイセクシュアリティをいかに視覚化するか
新しいバイセクシュアル表象へ

第4章 
崩壊へと横辷りする世界【出雲まろう】
:谷崎潤一郎「細雪」を読み/観る
「細雪」執筆時の時代雰囲気
音楽会と帯:谷崎の予言力
見逃されるクィア性:雪子の「下痢」
夢の幻影:女優・京マチ子
単純でない存在形態:雪子

第5章 
レズビアン青春映画としての『櫻の園』【赤枝香奈子】
はじめに
映画『櫻の園』における女性同士の関係
近代日本における(女性の)「同性愛」概念
「男装の麗人」
「レズ(ビアン)」と女性にとっての「性」
女子校というコミュニティ
おわりに

第6章 
ゲイ男性と結婚・恋愛・家族【前川直哉】
:『二十才の微熱』と『ハッシュ!』を男性同性愛の歴史に位置づける
はじめに
女性との結婚をめぐって
「兄貴」から「恋人」へ
ゲイ男性と「家族」:結婚との分離、そして再び結婚へ?
おわりに

第7章 
SOMEDAYを夢見て【久保 豊】
:薔薇族映画「ぼくらの」三部作が描く男性同性愛者の世代
薔薇の花が咲きひらいたとき
「ぼくら」三部作と世代間の交流
『ぼくらの季節』:子どもを育てること、永遠を誓うこと
男性同性愛者の若さと老い

第8章 
スクリーニング/アウト・ディスアビリティ【井芹真紀子】
:障害学とクィア・シネマ
クィア/フェミニスト映画とディスアビリティの表象
「スーパーヒューマン」表象お美的イメージ
FRのフェミニスト・ナラティヴと越境的身体
「語りの補綴」と取り除かれる身体 

第9章 
『東京ゴッドファーザーズ』におけるトランス女性表象と「エイズ」の語【宮本裕子】
:異性愛規範の外から中心への道程 
トランス女性としてのハナの表象:心理的な内面をもった個人とステレオタイプ
血液のイメージと台詞のなかの「エイズ」
死の可能性のなかを生きること


第10章 
クィア・アニメーションの可能性【矢野ほなみ】
アニメーションにおけるクィア・アニメーションの位置とは? 
クィア・アニメーションとどう向き合うか
メディアとしてのアニメーションとクィア
クィア・アニメーションを制作すること
これからのクィア・アニメーション


第11章 
ビート ゴーズ オン【秋田 祥】
:エイズやクィアに関する映像の上映を続ける理由
知られざる結末たち
燦然たる存在
ノット オーヴァー
斬新な幕開け

ISBN:9784771035539
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:196ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2021年11月
発売日:2021年11月16日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:ATFA
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:JBSF3