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筋肉のメランコリー

ラカンとともに読む三島由紀夫

著:福田 大輔

紙版

内容紹介

三島によって自在に繰り出される美しい文字の群れ、その饒舌な言葉の行間から一瞬流出する、死の欲動の線(ライン)をたどる。
ラカンの声とまなざしとともに、三島の文体と肉体と身体を読み直し、これまでの三島像と訣別する試み。

目次

イントロダクション

第1章 
ラカンによるフロイトの欲望への問いかけ

フロイトの芸術解釈と精神分析の創設
鼠男のシニフィアン
狼男のシニフィアンと対象a
母親の体位から導出される去勢不安と対象選択
フロイトの急き立て:狼男の分析治療の発展と終結
狼男の精神病発症
ラカンによるフロイト批判
絵(タブロー)から絵画(パンチュール)へ

第2章
『音楽』精神分析家の欲望への問いかけ

精神分析家とヒステリー患者の交差配列(キアスム)
症状と経過:手紙による治療の構造化
麗子の手紙を巡る三角形
汐見の身体的出来事(1):レコードの擦り音
花井の手紙と花井という手紙
花井と麗子における〈花〉のシニフィアン
汐見の身体的出来事(2):切り裂かれた花の幻視
汐見による現実への介入
麗子の電報におけるシンコペーション

第3章
筋肉のメランコリー

書かれた幼少期/隠された幼少期
終りなき喪の作業からの離脱
ボディビルディングの開始のひとつの契機
世界一周旅行とボディビルディングの効果
『鏡子の家』:ボディビルディングの彼岸へ
『太陽と鉄』:肉体と言葉からの離脱もしくは死への二重の同一化
制服の脱個性とその眩さ

第4章
家族の見掛け(サンブラン)と対象aの弁証法

■『禁色』:出産の想像的幻想と対象分離の根源的幻想
『禁色』第二部の路線変更
胎児の奇怪な記述
出産場面の瞠視の命令と悠一の変容
対象aのヴェールとしての子ども
子どもの誕生後の家庭の危機とファリック・マザーによる救済
子どもという対象の眩さ
『禁色』から『憂国』へ
■『憂国』:対象aの物象化と現実界における出産幻想
映画版『憂国』
■『豊饒の海』:現実的なまなざしと父親の生殖の現実的機能
窃視症者本多の逮捕
『暁の寺』校了による著者への影響
■『天人五衰』:窃視症と養子縁組
ファリック・マザーの介入による家庭生活の破壊

第5章
金閣の書字と身体

溝口の身体像の欠如/青年たちの身体イメージの投げ返し
金閣の意味の重層化
幻想の女性への接近と現実の女性への接近
父性の代理者たちの失墜と性的体験
金閣の書体=身体の美 
金閣の書体=身体の揺らぎと享楽
『金閣寺』という〈他者〉の身体における象徴的ファルスとその文体・カリグラフィー
「リチュラテール」論文における「流出」の考察
「リチュラテール」論文における「溝入」の考察
『金閣寺』における「流出(ruissellement)」と「溝入(ravinement)」

第6章
『サド侯爵夫人』と『わが友ヒットラー』のあいだ

両作品の関係性について
■『サド侯爵夫人』
戯曲の構造
黒ミサをめぐる母親との対決:母親の身体の鎧
パロールの奪取:死の要求と要求の死の弁証法
大革命の到来
「カントとサド」:倒錯的幻想におけるシニフィアンの身体
死の欲動における無からの創造
放逐される老サド
文字の飛翔と政治
幕間:現実世界へのコミットメント
■『わが友ヒットラー』
戯曲の構造
言語の不調
革命なき世界の脱落感
アドルスト:鼠の二重の身体
兜虫という身体の非シニフィアン性
クルップという超自我の失墜
美と幻想の終焉
退屈さと現実的なもの

第7章
剣と身体の政治的享楽

剣道と「怪物的日本」の声  
映画版『憂国』の剣の論理
楯の会の創設
一なる線になること:三島の賭け

結語

ISBN:9784771035287
出版社:晃洋書房
判型:4-6
ページ数:254ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2021年09月
発売日:2021年09月13日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:QD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:DSBH
国際分類コード【Thema(シーマ)】 3:1FPJ