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開かれた身体との対話

ALSと自己物語の社会学

著:伊藤 智樹

紙版

内容紹介

ALSをもって生きる経験を、「物語」をキーワードとして読み解く社会学。
難病とともに生きなくてはならない混沌とした現実を、「物語」へおとしこんでとらえる。
苦しくも人間的な対話の営みは、病いの苦しみに寄り添う社会のあり方への端緒となる。

目次

プロローグ ALSの苦しみと開かれた身体

第1章 ALSをめぐる情況
 1 ALS=終末期?――揺らぎの時代――
 2 ALSの経験がもつ「喪失」の側面
 3 ALSの経験がもつ規範的な側面――生存と自己決定――
 4 研究方法としてのナラティヴ・アプローチ
 5 まとめ――ふたつの問い――
 コラム 社会学および関連領域における物語論的研究
 コラム アーサー・フランク
 コラム 筋とキャラクター

第2章 中断された自己物語、物語の混沌
 1 発病のプロセスについて
 2 中断される物語――2006年9月研修会にて――
 3 中間考察――物語の混沌を許容すること――

第3章 生きることへの問いかけ
    ――今井尚志医師への受診(初診)――
 1 診察の前に
 2 人工呼吸器装着をめぐるやりとり
 3 頑健な物語の模索に向けて
 コラム 神経難病とセカンド・オピニオン
 コラム 患者の「自己管理」がもつ意味
 コラム 時間設定と会話のきっかけ
 コラム 語りにおける動機の語彙と物語の声、モチーフ

第4章 物語における家族
 1 忠彦さんから広子さんへの性格づけ
 2 今井医師から広子さんへの性格づけ
 3 中間考察――家族の性格づけ、キャラクター変容の提言――

第5章 前向きな変化を語る
 1 忠彦さんとピアとの交流――日本ALS協会富山県支部設立――
 2 村上達是さんとの交流(2007年4月25日)
 3 体験発表がもつ意味――今井医師との2回目の診察でのやりとり――
 4 介護を家族に頼らないこと、広子さんの変化
 5 胃ろう造設
 6 コミュニケーション・エイドを使うようになる
 7 講演の内容とその変化
 8 中間考察――物語の筋、キャラクターの変化――
 コラム コミュニケーション・エイド
 コラム 物語と身体

第6章 自己物語の軋み
 1 モチーフとしての一枚の写真
 2 症状の進行と人工呼吸器に関する思い
 3 キャラクター変容の要請と埋まらない溝
   ――今井医師との3回目の診察でのやりとり――
 4 変わる家族の性格づけ――広子さんとの関係について――
 5 居場所づくりの苦労
 6 難病合同相談会にて
 7 事前指示書
 8 春の雪――別れの日々――
 9 中間考察
 コラム 「自立性」を守ることと手放すこと
      ――排泄に関する問題――
 コラム 事前指示に何を期待できるのか

第7章 考察と結論
 1 自己物語の模索と聞き手たち
 2 規範的な亀裂と自己物語のキャラクター
 コラム 病いによるピアの聞き手としての多様性――伊藤(2009)との比較――
 コラム 家族療法との類似と相違

エピローグ

著者略歴

著:伊藤 智樹
富山大学学術研究部人文科学系(人文学部社会文化コース(社会学))教授

ISBN:9784771034273
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:200ページ
定価:2300円(本体)
発行年月日:2021年01月
発売日:2021年01月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MJ