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社会的うつ

うつ病休職者はなぜ増加しているのか

著:奥田 祥子

紙版

内容紹介

うつ病休職者の8割強が真の病ではなかった――。

うつ病休職者の増加は、病そのものの広がりではなく、社会的要因の影響を受けた
「社会的うつ」の存在が関係しているのではないか。

「社会的うつ」から企業と働く人々を救う処方箋。



うつ病をめぐる深刻な社会問題の根底にある構造・力学とは何か。
うつ病休職経験者へのインタビュー調査や専門医による再診断、
メディア報道分析などの多面的な方法によって検証し、今日のうつ病問題の本質を解き明かす。
さらには「社会的うつ」のない社会に向けて、
企業など組織、国・自治体、医療従事者、そして個々人はどのようにすればよいのかを提言する。

目次

序 章 「社会的うつ」とは
第1節 うつ病問題の深層 
第2節 本書の視点とアプローチ 
第3節 本書の構成 

第1章 日本におけるうつ病をめぐる状況
第1節 うつ病患者数の増加 
第2節 うつ病を中心とする精神障害の労災請求・認定件数の増加 
第3節 うつ病患者増による企業・社会的経済損失
第4節 職場のメンタルヘルス対策に関する国の指針 

第2章 抗うつ薬とうつ病患者増
第1節 抗うつ薬の市場拡大とうつ病患者増 
第2節 SSRI発売後の処方増と患者増の国際比較 
第3節 薬物療法に傾倒した日本のうつ病治療 
第4節 製薬会社の疾病啓発キャンペーンとDisease Mongering 

第3章 うつ病の操作的診断
第1節 DSMの操作的診断基準 
第2節 日本における伝統的診断方法 
第3節 操作的診断の功罪 
第4節 うつ病診断範囲の拡大 

第4章 メディア報道の影響力
第1節 うつ病に関するメディア報道分析 
第2節 「逸脱」から「大衆的」病へ 
第3節 社会的意味づけとオーディエンスの認知・行動 
第4節 新たなスティグマづくりとセンセーショナリズム
 
第5章 うつ病休職者の社会的要因の探索
     ―インタビュー調査から
第1節 うつ病休職者の心理に迫る 
第2節 「うつ病」診断を求める患者と主治医の対応 
第3節 「うつ病」診断に潜む社会的要因の可能性
 
第6章 うつ病休職者の社会的要因の検証
     ―ケース開発による再診断から
第1節 主治医診断の背景にある社会的要因を探る 
第2節 「診断しない」が八割強 
第3節 患者の要望、企業内制度、主治医の意図 

終 章 「社会的うつ」のない社会に向けて
第1節 うつ病休職者からみる社会的要因 
第2節 「社会的うつ」にみる社会問題の医療化 
第3節 臨床判断における「社会的うつ」否定の可能性 
第4節 医療、産業保健面での対策 
第5節 企業など組織、社会、個々人はどうあるべきか

著者略歴

著:奥田 祥子
近畿大学教授、ジャーナリスト。元読売新聞記者。博士(政策・メディア)。ニューヨーク大学文理大学院修士課程修了。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程単位取得退学。専門は労働・福祉政策、メディア論、ジェンダー論。社会問題の医療化(労働問題の精神医療化)をはじめ、働き方改革や育児・介護問題、メディア言説と社会変容、非婚化、家族などをテーマに、学術論文やルポルタージュ、評論を国内外で発表している。主な論文・著書に、‟Medicalization of Social Problems: Rising Depression-related Absenteeism in Japan”(International Journal of Japanese Sociology誌掲載)、ベストセラーとなった『男性漂流 男たちは何におびえているか』(講談社)、「女性活躍」に翻弄される人びと』(光文社)のほか、『夫婦幻想』(筑摩書房)、『男という名の絶望 病としての夫・父・息子』(幻冬舎)、『男はつらいらしい』(文庫版:講談社)などがある。日本文藝家協会会員。専門社会調査士。

ISBN:9784771033580
出版社:晃洋書房
判型:A5
ページ数:216ページ
定価:2800円(本体)
発行年月日:2020年04月
発売日:2020年05月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MJ