出版社を探す

異世界と転生の江戸

平田篤胤と松浦静山

著:今井 秀和

紙版

内容紹介

江戸後期の文政年間、天狗にさらわれて異世界を見てきたという少年、自分は他人の生まれ変わりだという少年があいついで現れ、江戸の知識人たちの注目を浴びた。なかでも在野研究者・平田篤胤は少年たちの証言を熱心に聞き取って『仙境異聞』『勝五郎再生記聞』を記録するなど「幽冥界」の探求に没頭した。一方で、随筆『甲子夜話』に数多くの怪異を記録した隠居大名・松浦静山は「幽冥の談」を言う者を警戒して篤胤らに近づかなかった。同時代を生きた二人の怪異への関心はなぜ交わらなかったのか?
本書は、篤胤と静山の二人をとりまく江戸知識人のネットワークに着目し、江戸後期の知識人たちが少年たちの語る異世界に何を期待したのか、篤胤の熱意、静山の冷静、彼らの怪異への関心の温度差は何に由来するのかを明らかにした。妖怪が娯楽として楽しまれると同時に、天狗や河童が跳梁し狐や狸が人を化かすと信じられてもいた時代、合理か非合理かだけではとらえきれない複雑な怪異観を解きほぐす気鋭の論考。

目次

第一章 「仙境」とは何か──江戸の「異世界」調査録
第二章 『仙境異聞』と和漢の文献知識──寅吉の語りを構成するもの
第三章 『仙境異聞』と仏教──寅吉の出家を軸に
第四章 『勝五郎再生記聞』と日本人の転生観
第五章 流転する語りと聞き取り──『勝五郎再生記聞』における「聞き書き」
第六章 「口寄せ」と勝五郎の前世語り──憑依と転生の分水嶺
第七章 「幽冥の談」を言う者──松浦静山と平田篤胤
第八章 松浦静山の怪異観
第九章 松浦静山と平田篤胤──その差異と接点
終章 異世界と転生の江戸

著者略歴

著:今井 秀和
1979年、東京都生まれ。大東文化大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。専攻は日本近世文学、民俗学、比較文化論。国際日本文化研究センター機関研究員などを経て、大東文化大学非常勤講師、蓮花寺佛教研究所研究員。著書に『天狗にさらわれた少年 抄訳仙境異聞』(訳・解説、角川書店)、共著に『〈江戸怪談を読む〉皿屋敷』(白澤社)、共編著に『怪異を歩く』(青弓社)などがある。

ISBN:9784768479773
出版社:白澤社
判型:4-6
ページ数:240ページ
定価:2500円(本体)
発行年月日:2019年10月
発売日:2019年10月23日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC