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吉本隆明と中上健次

著:三上 治

紙版

内容紹介

吉本の一番弟子による吉本・中上論
戦後の唯物論の時代、精神やヨーロッパの近代思想の影が薄くなり色褪せてくるなかで、思想と格闘し思想の可能性を追究した二人の巨人の「精神」にこだわった生き方を明らかにした。

常に現実の問題と向き合い、走り続けた戦後思想界の巨人・吉本隆明の没後から5年半(2012年3月16日死亡)。
和歌山県新宮市の「路地」を舞台に、重厚な作品群で独自の世界を築いた芥川賞作家・中上健次の没後から25年(1992年8月12日死亡)。
60年安保闘争を契機に吉本と中上と交流した著者が、生涯の闘いとして挑んだ吉本の思想と行動を振り返り、紀州を舞台にサーガ(一家一門の歴史を描いた叙事小説)を紡ぎ「精神の闇屋」として生きた中上の作品群を論考する。
吉本隆明の思想・行動が多くの註を補助線に良く理解できる、また、中上健次の思想の根拠も理解できる作りになっている
吉本は原発容認派と思われている。それは「技術や頭脳は高度になることはあっても退歩することはあり得ない」として、科学技術の観点からみた原発の必然性を説いていたからだ。このことに著者は疑問を感じている。そして11年3.11以降も吉本は反原発運動を終戦時の転向のように考えていた節がある。しかし官邸前抗議運動などは「自立」の運動と評価していた。
本書はその分かりにくい立場を述べながら著者の運動も展開した。

著者略歴

著:三上 治
1941年生まれ。三重県四日市市生まれ。三重県立四日市高等学校卒業。1960年中央大学法学部政治学科に入学し、安保闘争に参加。学生時代より梁山泊のような吉本隆明氏宅に出入りし、吉本氏の思想的影響を受ける。1962年、再建された社会主義学生同盟の全国委員長になる。1966年中央大学中退、第二次ブントに加わり、全共闘運動やベトナム反戦闘争にも加わる。のち、共産主義者同盟叛旗派をつくり、同派のリーダーとなる。1975年叛旗派を辞め、政治的実践活動から退く。その後、雑誌『乾坤』を創刊し、執筆活動に転じる。現在は思想批評誌『流砂』の共同責任編集者(栗本慎一郎氏と)を務める。
著書に『戦闘の指示向戦 過渡期世界と綱領創出の基礎』現代思潮社 1972 『幻想の革命 党派思想の彼岸へ』三一書房 1978 『戦後世代の革命』彩流社 1981 『三島・角栄・江藤淳 保守思想の構図』彩流社 1984  『1960年代論』批評社 2000『憲法の核心は権力の問題である—九条改憲阻止に向けて』(御茶の水書房など。

ISBN:9784768457467
出版社:現代書館
判型:4-6
ページ数:240ページ
定価:2200円(本体)
発行年月日:2017年09月
発売日:2017年09月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ