漱石の書斎
外国文学へのまなざし 共鳴する孤独
著:飛ヶ谷 美穂子
内容紹介
漱石はいかにして外国文学を読み、
傑作をうみだしていったのか?
▼漱石作品のなかには、謎の外国語、そして外国作品の引用句がちりばめられている。本書では、遺された蔵書をたんねんに調べ上げることで、それらの出所を突き止め、漱石がどのように外国語の本を読み、作品のなかに取り込んでいったのかを明らかにする。
▼とりわけ、ピーコック、ブラウニング、シェンキェヴィチ、ウィリアム・シャープなどの典拠を手がかりに漱石作品を読み解き、〈東洋と西洋〉、〈影響と受容〉という二項対立を超えた、その〈現代性〉――近代人の絶望的な〈孤独〉の所以――をさぐりあてていく。
目次
はじめに
<b>第一章 漱石文庫をたずねて</b>――蔵書は語る
Ⅰ 「漱石山房」から「漱石文庫」へ
Ⅱ 「漱石文庫」と「狩野文庫」
Ⅲ 漱石の愛蔵書
<b>第二章 英学から英文学へ</b>――漱石の修業時代
Ⅰ 六ペンス叢書の伝説
Ⅱ 英語との出会い
Ⅲ 漢学塾から英学塾へ
Ⅳ 英文学への道
<b>第三章 奇人たちの饗宴</b>
――『吾輩は猫である』とピーコックの〈談話小説〉
Ⅰ 〈写生文〉から〈長篇小説〉へ――『猫』の変容
Ⅱ ピーコックと漱石
Ⅲ 〈談話小説〉(ノベル・オブ・トーク)
Ⅳ 『クロチェット城』
Ⅴ ピーコックの周辺
<b>第四章 ロンドンの異邦人たち</b>――漱石・カーライル・シャープ
Ⅰ 「カーライル博物館」の材源
Ⅱ 『文学地誌』とウィリアム・シャープ
Ⅲ 異邦人たち
<b>第五章 江藤淳『漱石とアーサー王伝説』の虚構と真実</b>
――死者を愛し続ける男の物語
Ⅰ 〈学術論文〉という〈暗号〉
Ⅱ 「言葉の世界」と「不在の世界」
Ⅲ 〈物語〉の完成
<b>第六章 『三四郎』とブラウニング</b>
――「ストレイシープ」と「ダーターフアブラ」をめぐって
Ⅰ 「ストレイシープ」の出典
Ⅱ 漱石のブラウニング体験
Ⅲ 「炉辺にて」と「ストレイシープ」
Ⅳ 「騎馬像と胸像」と「ダーターフアブラ」
Ⅴ 引用と象徴
<b>第七章 《趣味の審判者》(アービター・エレガンシアルム)の系譜</b>
――ペトロニウスから代助まで
Ⅰ 「arbiter elegantiarum」(アービター・エレガンシアルム)の出
典
Ⅱ 『ドリアン・グレイの肖像』――世紀末の耽美家
Ⅲ 『グリル・グレッジ』――恋におちた快楽主義者(エピキユリア
ン)
Ⅳ 『クオ・ヴァディス』――影響の種々相
<b>第八章 『行人』とヴァルター・カレ</b>――共鳴する孤独
Ⅰ 『行人』の「独逸(ドイツ)の諺(ことわざ)」
Ⅱ ヴァルター・カレ
Ⅲ 詩句の用例と異同
Ⅳ カレからケーラー、そして漱石へ
Ⅴ 共鳴する〈孤独〉
あとがき
参考文献
索引