テクストとは何か
編集文献学入門
編:明星 聖子
編:納富 信留
内容紹介
▼テクストを疑え!
印刷されたテクスト、検索されたテクストをより主体的に、より深く楽しく読み解くための知の技法。
一度成立したテクストは、それ自体が一人歩きして、あたかも確固とした権威をそなえているかのように錯覚させます。それらは、どれを用いても大丈夫なように見えます。しかし、テクストとはそもそも何かを意識し、心得をもって臨まないかぎり、私たちはテクストに裏切られ、使いそこなってひどい目にあうことでしょう。その結果、どんなテクストも信用できない、意味がない、などと過剰な嫌悪を抱いても、なんの得にもなりません。むしろ「テクストを疑う」という健全な態度をもって技法を培いながら、それぞれのテクストに向かっていくしかないのです。
印刷されたテクスト、情報で検索されたテクストはそのまま受け取ってはならず、読者として主体的に読み解く必要があります。そこでは、複数の接し方、読み方の可能性が現れることでしょう。しかし、相対主義に立って、どんな読みをしても構わないということにはなりません。開かれたテクストへの接近をつうじて、一定の作法にのっとった蓋然性、つまり<ruby>も<rt>・</rt></ruby><ruby>っ<rt>・</rt></ruby><ruby>と<rt>・</rt></ruby><ruby>も<rt>・</rt></ruby>な解釈へと進むことが、テクストを読むということなのです。
目次
序 編集文献学とは何か 明星聖子
Ⅰ 古典とは何か
第1章 西洋古典テクストの伝承と校訂
―― プラトン『ポリテイア(国家)』 納富信留
第2章 著作集編集と「古典」の成立
―― ゲーテ『若きウェルテルの悩み』 矢羽々崇
Ⅱ 聖典とは何か
第3章 聖なるテクストを編集する
―― 新約聖書 伊藤博明
Ⅲ 作品とは何か
第4章 ヨーロッパ中世の俗語文学
―― チョーサー『カンタベリー物語』 松田隆美
第5章 可能態としてのテクスト
―― ムージル『特性のない男』 北島玲子
Ⅳ 上演とは何か
第6章 演劇テクストの作者は誰?
―― シェイクスピア『ハムレット』 井出 新
第7章 歌劇の「正しい」姿?
―― ワーグナー《タンホイザー》 松原良輔
Ⅴ 作者とは何か
第8章 モダニズムのテクスト
―― フォークナー『響きと怒り』 中谷 崇
第9章 遺稿編集の問題
―― ニーチェ『権力への意志』 トーマス・ペーカー(矢羽々崇
訳)
終 章 テクストとは何か
―― カフカの遺稿 明星聖子
結 テクストを読み解く技法 納富信留
人名索引
ISBN:9784766422801
。出版社:慶應義塾大学出版会
。判型:A5
。ページ数:274ページ
。定価:2200円(本体)
。発行年月日:2015年10月
。発売日:2015年10月25日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:GLK。