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腐敗と再生

身体医文化論 III

編:小菅隼人

紙版

内容紹介

「身体の発見」をめぐる研究史の中で、〈観念/肉体〉〈個人・社会><文系/理系>の区別は、一見対立項に見えながら、実際には繋がり、重なり、逆転する。そして、この"連接・重層・逆転"は、今日、あらゆる知の現場で、不断に起こっている現象であり、好むと好まざるとに関わらず我々はそれを意識し、自らの知の在り方を再考せざるを得ない。身体という場で、集団という場で、そして、学問という場においても、かつてあったパラダイムの変更が不可避なものとなっているのである。
 本書のテーマ「腐敗と再生」もまた、身体、医、文化のあらゆる局面に見出され、しかもこの主題系もまた”連接・重層・逆転"をその性格とする。身体、医、文化という場面において、腐敗は再生へ(再生は腐敗へ)と変転し、腐敗は再生を(再生は腐敗を)包容し、腐敗と見えたものに再生の美が(再生と見えたものに腐敗の醜が)宿るのである。

目次

 序章 腐敗と再生——身体医文化論Ⅲ 小菅隼人

第Ⅰ部 腐敗——浄化—再生
 第1章 ギリシアの医学と文化における「浄め」の曖昧さ G・E・R・ロイド(齋藤健太郎訳)

第Ⅱ部 腐敗——恐怖・忍耐・誘惑
第2章 祈祷と治療
——中世のペスト蔓延の中での感染・生き残り・死への社会文学的なアプローチ ウィリアム・スネル
 第3章 腐敗と救済——スペクタルとしての死体と腐敗 小池寿子
 第4章 フランス・バロック詩における死と再生 伊藤進
 第5章 十七世紀後半の水銀学派の腐敗/発酵理論——スターキー、ボイル、ニュートン 吉本秀之
 第6章 デカダンスあるいは腐爛について——ユイスマンス小論 谷川渥

第Ⅲ部 腐敗と再生——十七世紀から二十世紀
 第7章 メランコリーと腐敗の体内イメージ——精気と瘴気と神経と 仙葉豊
 第8章 魔女の大釜、レヴェットの洞窟——文学的表象にみる近代英国ヤブ医者群像 原田範行
 第9章 「不運な女」と「堕ちた女」——十八世紀から十九世紀の慈善と売春婦 鈴木実佳
 第10章 腐敗の意味——アメリカン・ゴシックの荒野 時実早苗
 第11章 腐敗は再生?——D・H・ロレンス、『リズム』、リズムの時代 武藤浩史

第Ⅳ部 再生——現代
第12章 切断/補綴、あるいは身体の再構成
——オットー・ディックスの一枚の絵をめぐって 萩原眞一
 第13章 泰緬鉄道の日本軍捕虜収容所における腐敗、即興、再生 小菅信子
 第14章 乳癌との闘い=再生へのプロセス——オードリー・ロードの拓いた道 中村哲子
 
第Ⅴ部 再生——科学的展開
 第15章 微生物による腐敗と再生 梅澤一夫
 第16章 細胞の機能と行動に視点をおいた形態形成の解明——ヒトデ胚の形態形成を中心に 金子洋之
 第17章 うつること——遺伝と環境とひと 藤井千枝子

ISBN:9784766411201
出版社:慶應義塾大学出版会
ページ数:422ページ
定価:4200円(本体)
発行年月日:2004年11月
発売日:2004年11月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MB