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リズム,音楽,脳

新版

神経学的音楽療法の科学的根拠と臨床応用

著:Michael H. Thaut
他訳:三好 恒明
他訳:頼島 敬

紙版

内容紹介

「音楽療法はなぜ治療に役立つのか?」その根拠を脳神経科学から論じた名著の完訳。

著者のマイケル・タウトは自身がヴァイオリン奏者、音楽学の教授であり、そして神経科学者です。本書は人類の歴史とともにある「音楽」と人間の脳機能とをつなぐ領域に「神経学的音楽療法」という新しいジャンルをつくりあげた記念碑的な著作です。
本書で扱われているテーマは、脳神経科学はもとより、哲学、美学、社会学と多岐にわたり、さらには脳機能障害をもつ人々にとって必要とされるセラピーを厳密な治療技法の体系として提案した実践的なガイドブックでもあります。
このたびの「新版」は、2006年に刊行された翻訳をベースに全面的な訳文の刷新を図ったもので、いっそう読みやすくなっています。

音楽療法に関わる認定音楽療法士はもちろん、作業療法士や理学療法士、そして言語聴覚士にとって、本格的な科学的知識を提供するものです。

目次

序 章

第1章 リズムの構造:音楽における時間の本質
 1.1 音楽におけるリズム,時間,およびコミュニケーション
 1.2 美的知覚におけるリズム
 1.3 リズムの要素
 1.4 コーダ

第2章 美学と精神生物学
 2.1 Berlyneモデル:生物学と芸術的経験との関連性
 2.2 芸術と精神生物学についてのBerlyneの理論
 2.3 人類学が語る初期人類の芸術活動
 2.4 歴史を通した美学に関する考察
 2.5 新しい典型へ向けて:音楽美学への新アプローチ
 2.6 エマニュエル・カントと美学の精神生物学

第3章 リズムの神経学的ダイナミクス
 3.1 音楽のリズムと時間性
 3.2 リズム的同調における過程
 3.3 神経生理学的,神経解剖学的根拠
 3.4 認知における脳のリズムと音楽的リズム
 3.5 結論

第4章 音楽の医学生物学的研究(バイオメディカル・リサーチ)
 4.1 はじめに
 4.2 感覚運動リハビリテーションの研究
 4.3 会話と言語のリハビリテーションについての研究
 4.4 認知リハビリテーションの研究
 4.5 音楽のタイミングと脳のタイミング
 4.6 メカニズムの作動モデル

第5章 リズムによる運動制御の最適化
 5.1 はじめに
 5.2 動きに関する3つのシナリオ
  5.2.1 目的指向型の動き
  5.2.2 リズム的な動き
  5.2.3 リズムによって調整された動き
 5.3 リズムによる腕運動の2つの研究
  5.3.1 研究1 脳卒中患者における上肢の引き込み
  5.3.2 研究2 閾値下周期移行への適応
 5.4 運動の最適化に関する背景
  5.4.1 リズムと運動との関連
  5.4.2 最適化基準
  5.4.3 一次元運動に関する運動学
 5.5 時間的な同期の結果
 5.6 リズム刺激の知覚と対応する運動生成のモデル化
 5.7 要約
  5.7.1 周期の優位性
  5.7.2 タイミングに基づく動きの最適化

第6章 セラピーや医療のための音楽─社会科学から神経科学へ─
 6.1 歴史的なパラダイム転換
 6.2 合理的─科学的媒介モデル
  6.2.1 音楽的行動モデル
  6.2.2 非音楽的類似モデル
  6.2.3 媒介モデル:行動に対する音楽の影響
  6.2.4 臨床研究モデル
  6.2.5 要約
 6.3 神経学的音楽療法の出現
 6.4 神経学的リハビリテーションの理念
 6.5 神経学的音楽療法を実践するための変換デザインモデル
 6.6 要約

第7章 感覚運動のリハビリテーションにおける神経学的音楽療法
 7.1 はじめに
 7.2 感覚運動リハビリテーションにおける神経学的音楽療法
 7.3 聴覚リズム刺激(聴覚を経由して得られたリズムによる刺激:RAS)
  7.3.1 治療技術が脳および行動機能に与える影響のメカニズム
  7.3.2 RASの臨床プロトコール
  7.3.3 臨床でRASを使用する場合の実践面での留意点
  7.3.4 RASの治療メカニズムに関する臨床的な概要
 7.4 パターン的感覚強化(PSE)
  7.4.1 PSEの臨床法則
  7.4.2 PSEを適用する際の実際的考察
 7.5 治療目的の楽器演奏(TIMP)
  7.5.1 TIMPの臨床的法則
 7.6 臨床適用のガイド
  7.6.1 領域:感覚運動訓練
  7.6.2 領域:感覚運動訓練
  7.6.3 領域:感覚運動訓練

第8章 言語リハビリテーションにおける神経学的音楽療法
 8.1 はじめに
 8.2 メロディック・イントネーション療法(メロディ抑揚療法:MIT)
 8.3 音楽による発話刺激(MUSTIM)
 8.4 リズムによる発話の手がかり(RSC)
 8.5 音声イントネーション療法(音声抑揚療法:VIT)
 8.6 口腔機能・呼吸訓練(OMREX)
 8.7 音楽による発達性音声言語障害訓練(DSLM)
 8.8 治療目的の歌唱(TS)
 8.9 音楽によるシンボリック・コミュニケーション・トレーニング(SYCOM)
 8.10 NMTと聴覚障害

第9章 認知リハビリテーションにおける神経学的音楽療法
 9.1 認知リハビリテーションの原理
  9.1.1 はじめに
  9.1.2 一般的な原理
  9.1.3 結果の原理
  9.1.4 注意リハビリテーションの原理
  9.1.5 記憶リハビリテーションの原理
  9.1.6 遂行機能リハビリテーションの原理
  9.1.7 心理社会的リハビリテーションの原理
 9.2 神経学的音楽療法(NMT)へ適用される認知リハビリテーションの原理
  9.2.1 はじめに
 9.3 認知リハビリテーションと変換デザインモデル(TDM)
  9.3.1 聴覚的注意・知覚の訓練
  9.3.2 記憶訓練
  9.3.3 遂行機能訓練
  9.3.4 心理社会的行動訓練
 9.4 変換デザインモデルを用いた注意リハビリテーション
  9.4.1 アセスメント
  9.4.2 治療目標
  9.4.3 認知リハビリテーションの方略
  9.4.4 神経学的音楽療法:音楽的注意コントロール訓練
 9.5 まとめ
 資料A 注意
 資料B 注意と集中力を改善させるために
 資料C 神経学的音楽療法(NMT)認知リハビリテーションへの適用:NMT-MACT-FOC
 資料D 神経学的音楽療法(NMT)認知リハビリテーションへの適用:NMT-MACT-SEL
 資料E 神経学的音楽療法(NMT)認知リハビリテーションへの適用:NMT-MACT-SUS
 資料F 神経学的音楽療法(NMT)認知リハビリテーションへの適用:NMT-MACT-ALT
 資料G 神経学的音楽療法(NMT)認知リハビリテーションへの適用:NMT-MACT-DIV
 資料H 注意力のための自宅用課題

 新版の翻訳を終えて
 参考文献
 索引

ISBN:9784763910622
出版社:協同医書出版社
判型:B5
ページ数:224ページ
定価:5000円(本体)
発行年月日:2011年04月
発売日:2011年04月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:MJ