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記憶現象の心理学

日常の不思議な体験を探る

編:アン・M・クリアリー
編:ベネット・L・シュワルツ
他訳:清水 寛之

紙版

内容紹介

デジャビュ現象や「喉まで出かかっているのに出てこない」状態,記憶の流暢性錯覚,摂食の記憶など,日常生活で体験する人間の不思議な記憶の「現象」に焦点を当て,実証的に議論を展開。素朴な疑問から逆照射して記憶のプロセスやメカニズムに接近し,これまでに解明してきた研究知見に疑問を投げかけ,修正をも迫る。

目次

 日本語版の読者のみなさんへ
 はじめに
 謝辞

第1部 自伝的記憶に関する不思議現象
 第1章 自伝的編集:個人的な過去の修正
  1 借用された物語
  2 自伝的編集
 第2章 自伝的記憶の不思議
  1 幼児期健忘
  2 レミニセンスバンプ
  3 ノスタルジア
  4 人生の加速化
  5 結論
 第3章 フィクションの記憶を含む自伝的記録の拡張
  1 はじめに
  2 自伝的記憶の機能
  3 自伝的記憶の特性
  4 フィクションへのモデルの拡張
  5 フィクションの記憶の特性
  6 結論
 第4章 摂食の記憶
  1 食べ物の拒絶反応
  2 コンフォートフード
  3 食と自伝的記憶
 第5章 妨害された記憶と回復された記憶
  1 不思議現象
  2 記憶妨害
  3 記憶妨害からの回復:記憶の孵化効果
  4 結論

第2部 知識と記憶の気づきに関する不思議現象
 第6章 記憶の手がかり減価効果:多いほうが乏しいとき
  1 はじめに
  2 他の手がかり呈示抑制効果との関連
  3 初期の研究知見とその意義
  4 境界条件に関する実証的知見
  5 説明
  6 考察と結論
 第7章 不思議現象としての潜在記憶の魅力
  1 時間と記憶
  2 愛とプライミング効果だけが永遠に持続するのか
  3 非常に長期間にわたる実験結果の再現
  4 子どもの発達と健常加齢
  5 健常の実験参加者における健忘の不思議
  6 神経学的症状
  7 理論的意義
  8 今後の研究の方向性
  9 なぜ潜在記憶は今なお重要なのか
 第8章 反復とテストにおけるネガティブ効果
  1 ネガティブ反復効果
  2 ネガティブテスト効果
  3 結論
 第9章 いつ,なぜ,本当に大事なことを忘れてしまうのか
  1 はじめに
  2 忘却の性質
  3 メタ記憶の正確さとバイアス
  4 習慣化と記憶バイアス
  5 注意転導+習慣=記憶の失敗
  6 加齢と重要事項の想起
  7 忘却感と忘却の恐怖
  8 失われてしまって,重要でなくなる:忘却に関するバイアス
  9 要約 不思議現象:なぜ私たちはときどき重要事項を忘れてしまい,それを予測しないのか?
 第10章 メタ記憶の流暢性錯覚
  1 メタ記憶における1つの手がかりとしての流暢性
  2 メタ記憶への流暢性の寄与を探るための研究手法としての錯覚
  3 流暢性の寄与を支持する間接的証拠のあるメタ記憶錯覚
  4 流暢性の寄与を支持する直接的証拠のあるメタ記憶錯覚
  5 流暢性の寄与を支持する証拠がほとんど,あるいはまったく認められないメタ記憶錯覚 
  6 流暢性の寄与がまだ検証されていないメタ記憶錯覚
  7 今後の研究の方向性
  8 結論
 第11章 知ることの文脈依存錯覚:もっと知っているのか,あるいは「もっと知っている」と思っているだけなのか
  1 はじめに
  2 記憶とメタ記憶における文脈効果
  3 アクセス可能性ヒューリスティック
  4 結論

第3部 記憶の感覚に関する不思議現象
 第12章 行為主体性に関する主観的経験(SEA)の記憶
  1 SEAの性質
  2 SEAと記憶
  3 限界と現在進行中の研究
  4 結論
 第13章 「喉まで出かかっているのに出てこない(TOT)」状態:過去と未来
  1 TOTの基礎にあるメカニズムまたはプロセス
  2 TOT状態であることがわかる他の情報源
  3 結果:TOT状態のときに何が起きているのか
  4 測定の問題
  5 結論
 第14章 「バスの中の肉屋(BOB)」体験
  1 BOB体験はどれくらいよくあることか
  2 BOB調査
  3 なぜBOB体験が重要なのか
  4 理論を説明するための手段としてのBOB
  5 理論的視点
  6 BOBと神経心理学
  7 文脈は人に親近性をもたらすのか
  8 BOBの拡張:声,歩き方,ジェスチャー
  9 「反転した」BOB体験:なじみがある人物のことを強く「なじみがない」と感じるとき
  10 BOB体験に関連した現象
  11 BOB研究に関するいくつかの留意点
  12 将来の方向性
  13 要約
 第15章 部分検索:人間の記憶において顕著だが,まれにしか起きない現象
  1 はじめに
  2 長期記憶に関する簡潔な概観
  3 再認記憶のプロセス
  4 部分検索の機会を増やすための手段:刺激の複雑性
  5 部分検索の機会を増やすための手段:刺激の情動性
  6 いくつかの実用面での意義と今後の研究の方向性
  7 記憶内のエピソード情報と意味情報と知覚情報の境界線をみえにくくすること
  8 部分検索がまれにしか起こらず,とらえにくいという問題について
  9 結論
 第16章 デジャビュ現象の科学領域への参入
  1 デジャビュとは何か?
  2 デジャビュに関する科学的研究の遅れ
  3 デジャビュが認知心理学の主流となるきっかけ
  4 ブラウンの発展的な論評に続くデジャビュの認知心理学的研究
  5 デジャビュ研究のためのSMFアプローチの新展開
  6 今後の方向性
 第17章 デジャビュ体験の収束的理解に向けて
  1 主観的経験としてのデジャビュ
  2 デジャビュ研究の優先事項
  3 方法論的問題
  4 収束的アプローチによる方法論的問題の克服
  5 結論
 第18章 反復,デジャビュと身体化された意識
  1 はじめに:意識的記憶の不思議
  2 結論:デジャビュの意味

 エピローグ
 文献
 人名索引
 事項索引
 訳者あとがき

著者略歴

編:アン・M・クリアリー
Anne M. Cleary
アン・M・クリアリー(編者)は,米国コロラド州立大学心理学科教授で,人間の記憶プロセス,メタ記憶,およびメタ認知の研究を行っている。専門雑誌『記憶言語研究(Journal of Memory and Language)』の副編集長であり,「現代心理学(Psychology Today)」というサイトで『記憶の不思議現象』(原書と同名)のブログを開設している。
編:ベネット・L・シュワルツ
Bennett L. Schwartz
ベネット・L・ シュワルツ(編者)は,米国フロリダ国際大学心理学科教授で,記憶とメタ記憶に関する研究をはじめ,さまざまな興味深い研究テーマに関する研究に取り組んでいる。専門雑誌『心理学の新しい考え方(New Ideas in Psychology)』の編集長であり,同じく『メタ認知と学習(Metacognition and Learning)』の副編集長も務めている。
他訳:清水 寛之
清水寛之(しみず・ひろゆき)
1989年 大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得退学
現 在 神戸学院大学心理学部教授 博士(文学)
主著・論文 記憶におけるリハーサルの機能に関する実験的研究 風間書房 1998年
メタ記憶(編著) 北大路書房 2009年
認知発達研究の理論と方法(分担執筆) 金子書房 2016年
最新老年心理学(分担執筆) ワールドプランニング 2018年
エッセンシャル心理学(分担執筆) ナカニシヤ出版 2020年

ISBN:9784762831966
出版社:北大路書房
判型:A5
ページ数:560ページ
定価:5800円(本体)
発行年月日:2022年06月
発売日:2022年06月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JMA