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法臨床学への転回 3

過程としての裁判と法専門家

著:和田 仁孝

紙版

内容紹介

裁判とは,一般に流布された言説のように,本当に法に基づく公正な裁きの場なのか。実は当事者にとって,善意ではあれ権力的な解決の場ではないのか。テミス神の落としものを掬い上げ,司法過程と社会に生きる紛争当事者本人の認識を視座の中心に据え,裁判過程,法専門家(弁護士,司法書士等)の役割と機能を再考。

目次

 テミスの落し物 「法臨床学への転回」(通巻タイトル)について
 はしがき

第1部 社会構造の変容と裁判の機能
 第1章 裁判モデルの現代的変容
  Ⅰ 近代法型裁判モデルの理念と社会基盤/Ⅱ 現代社会の変容と裁判モデル/Ⅲ 新たな裁判モデルの胎動/Ⅳ 交渉型裁判モデルの可能性

 第2章 秩序維持機能から交渉整序促進機能へ──裁判機能の変容
  Ⅰ 秩序維持機能モデルとその限界/Ⅱ 公共訴訟と裁判機能/Ⅲ 裁判外紛争処理と裁判機能/Ⅳ 過程志向型機能理解へ:交渉促進・整序機能

 第3章 法の浸透と司法の正当性──医療事故訴訟をめぐる専門性の交錯と正当性
  Ⅰ 法との距離と法への懐疑/Ⅱ 医療事故訴訟と法の正当性/Ⅲ 法の浸透と正当性のゆらぎのパラドクス

 第4章 拡散型社会と開かれた法専門性
  Ⅰ はじめに/Ⅱ 「専門性」への信頼喪失/Ⅲ 訴訟過程における当事者本人の位置/Ⅳ 訴訟手続改善の手がかり

 第5章 アジアにおける裁判と紛争処理──分析の枠組み
  Ⅰ 紛争処理研究の意義とアプローチ/Ⅱ 紛争処理研究の枠組み/Ⅲ 文化・認知・紛争/Ⅳ おわりに



第2部 紛争交渉過程としての裁判
 第6章 民事訴訟の構造と過程
  Ⅰ 民事訴訟過程の構造/Ⅱ 本人訴訟と弁護士訴訟 /Ⅲ 訴訟主体性と問題定義/Ⅳ 主張・立証の意義/Ⅴ 和解期日/Ⅵ 裁判官の役割と過程的制御/Ⅶ 和解と判決/Ⅷ 訴訟後交渉と執行手続

 第7章 訴訟過程と訴訟利用期待の変容──法的解決観念のゆらぎ
  Ⅰ 問題の所在/Ⅱ 法制度理念言説の支配/Ⅲ 訴訟利用期待の実相:「過剰期待」と「過少期待」/Ⅳ 訴訟接触と期待の縮小/Ⅴ 「期待」の過程的適正化への方向/Ⅵ まとめにかえて:法社会学の役割

 第8章 交渉的秩序と不法行為訴訟──解釈法社会学と実践
  Ⅰ 訴訟機能への現代的要請/Ⅱ 不法行為制度の機能的限界と問題点/Ⅲ 日常的「責任」観念の構造/Ⅳ 関係調整型不法行為訴訟の展望

 第9章 少額事件・本人訴訟と裁判手続
  Ⅰ 問題の所在/Ⅱ 調査の概要と結果/Ⅲ 本人訴訟過程の分析/Ⅳ まとめ

 第10章 自律的紛争交渉における合意と規範の交錯──正当事由紛争を例として
  Ⅰ 交渉における合意と規範の交錯/Ⅱ 正当事由紛争の特質/Ⅲ 裁判外交渉過程の限界/Ⅳ 訴訟過程の意義と問題/Ⅴ 合意型処理へ:まとめにかえて

 第11章 医療事故紛争の構造と裁判の限界
  Ⅰ はじめに/Ⅱ 医療事故紛争の生成過程/Ⅲ 医療事故紛争の構造と紛争当事者のニーズ/Ⅳ 医療事故訴訟の問題性/Ⅴ 様々な医療事故紛争処理システム/Ⅵ 現場応答モデルの提言:ケアと対話のコンフリクト・マネジメント

 第12章 実践としての要件事実論の構造
  Ⅰ 要件事実論における語られざる側面:問題の所在/Ⅱ 実践としての要件事実/Ⅲ 社会的事実の認知的構成と要件事実論/Ⅳ 実践としての要件事実論:創造性と再帰的変容

 第13章 司法運営のコスト──紛争交渉論の視点から
  Ⅰ はじめに/Ⅱ インプット制御をめぐるコスト政策/Ⅲ 手続選択・改変によるコスト低減方策/Ⅳ コスト論の限界と克服

 第14章 「訴額」算定に内在する法専門性の呪縛──訴訟手数料をめぐって
  Ⅰ 問題の所在/Ⅱ 「訴額」=「手数料」連動システムの機能不備/Ⅲ 「訴額」=「手数料」連動システムの潜在的象徴機能



第3部 リーガル・プロフェッション
 第15章 弁護士役割の構造と転換──中立性と党派性の意義転換のなかで
  Ⅰ 弁護士役割の矛盾構造とその変容/Ⅱ 弁護士役割モデルの再構築へ向けて

第16章 弁護士業務の変容とクオリティ・コントロール──ユーザーの選択による「質」の確保へ向けて
  Ⅰ はじめに/Ⅱ 法廷弁護士モデルと「業務の質」 /Ⅲ 弁護士業務のクオリティ概念の拡張/Ⅳ クオリティ・コントロール・システムの再構築

第17章 関係的資源としての弁護士
  Ⅰ 日本におけるリーガル・サービス供給体制と弁護士/Ⅱ 社会関係の変容と司法改革の意義/Ⅲ 関係的資源としての弁護士/Ⅳ まとめ:関係的市民社会と弁護士

第18章 弁護士像の転換と法曹養成教育──司法改革理念の意義をめぐって
  Ⅰ 改革理念の再検討/Ⅱ 弁護士と「専門性」:その過剰性と過少性/Ⅲ 法曹養成教育とその構造転換

第19章 司法書士による支援型裁判関与と簡裁代理権の意義
 Ⅰ はじめに/Ⅱ 本人訴訟と簡裁代理/Ⅲ ADRによる紛争解決支援/Ⅳ おわりに /ケアリングとしての紛争過程関与

 あとがき
 参考文献一覧
 初出一覧
 人名・事項索引

ISBN:9784762831461
出版社:北大路書房
判型:A5
ページ数:336ページ
定価:5800円(本体)
発行年月日:2021年03月
発売日:2021年03月22日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:LA