出版社を探す

テキスト建築意匠

編著:平尾 和洋
編著:末包 伸吾
他著:大窪 健之

紙版

内容紹介

設計理論、かたちの操作、構造表現、空間、光、都市などのテーマで、設計を巡る思考の助けとなるような基礎的知識、あるいは最低限知っておくべき理論的フレームを、意匠(design)という言葉で広く捉えつつ、わかりやすく解説。巻末には、一問一答スタイルの問題集を掲載し、講義の進捗状況が把握できるように工夫した。

目次

はじめに
凡例

第1章 近代の建築
1 近代への変容
社会の変容/ビルディング・タイプの変化と新しい材料と技術/原型の模索と様式の相対化
2 世紀末転換期の建築
中世モデルと生産・デザインの調和:アーツ・アンド・クラフツ/様式からの離脱過程:アール・ヌーヴォー/表層の自立と装飾の排除:ヴァーグナーとロース/均質空間への道程:シカゴ派と高層建築/アーツ・アンド・クラフツから近代への接続:ドイツ工作連盟
3 前衛運動と近代建築の模索
速度の美:未来派/革命と建築:ロシア構成主義/抽象への意思:デ・ステイル/国際建築へ:バウハウス/近代と個人の表現:表現主義
4 近代建築の3巨匠
フローイング・スペースと有機的建築:フランク・ロイド・ライト/近代建築の5原則と彫塑性への転換:ル・コルビュジエ/ユニバーサル・スペースへの還元的展開:ミース・ファン・デル・ローエ
5 近代建築の成熟とその展開
近代建築の思考形態と意匠/普遍性と地域性との呼応:カリフォルニア・モダン/近代の古典主義への近接:イタリア合理主義建築/経験主義と近代:北欧経験主義

第2章 現代の建築
1 現代建築の視座
2 歴史主義
ロバート・ヴェンチューリと建築の意味性/歴史主義の様々な試行/ネオ・コルビュジアン:近代建築の歴史
3 合理主義
合理としてのタイプ/アルド・ロッシと記憶の中の都市/合理主義の展開
4 構造主義
西洋の外への視点/ヘルツベルハーと都市・建築空間の領域化/構造主義の建築
5 場所
空間から場:現代建築の意識の転換/批判的地域主義/批判的地域主義の諸相/テクトニック:カーンの構造とスカルパの細部
6 構造
技術・構造表現主義の建築/ハイテック:機械から環境へ
7 「建築」の解体から脱構築
建築の解体/構造主義とポスト構造主義/脱構築の建築/チュミとコールハース

第3章 戦後日本の建築
1 戦後近代建築と日本
テクニカル・アプローチ/伝統論争
2 都市への進出
メタボリズムと未来都市
3 近代建築批判
テクノロジー批判・近代建築理念の解体/都市からの撤退・周縁なるものへの視座
4 1980年代
表層と記号・大文字の建築/機能から様相へ
5 1990年代以降
ランドスケープと公共性/ライト・コンストラクション/建築とプログラム

第4章 建築表記の射程
1 建築表記から見えるもの
2 意図の伝達
Situation/Area/Occasion/Division
3 思考の外在化
Sketch/Collage/Description/Rhetoric
4 アンビルトの表記
アンビルト/都市とアンビルト/アーキグラムとセドリック・プライス/強化された物質的存在/リアリティーの表記/物語としての建築/SFにおける建築/社会へのアイロニー

第5章 建築の原点
1 自然の変化と人間による構築
原点への志向/原始の人々にとっての洞窟/天体の動きと巨石による構築/巨石遺構の象徴性
2 聖なる場所の理念と生成
聖なる場所と原初的体験/聖なる場所の構築─中心性と軸性─/神話と創造/「都市」(キヴィタス)と「都会」(ウルブス)/「まち」のイデアと概念モデル/古代ローマの創建儀礼と概念モデル
3 建築理念と「原始の小屋」
祖形としての原始の小屋/ウィトルウィウスの原始の小屋/理性の原理としての原始の小屋/ロージエとデュラン=自然と人為/建築による自然の模倣・再現/自然の模倣としての原始の小屋/自然の規範性としての原始の小屋
4 ルイス・カーンによる元初への問い
建築の「元初」/「オーダー」と「デザイン」/「サーヴァント・スペース」と「サーヴド・スペース」/「オーダー」から「フォーム」へ/「フォーム」と「リアライゼーション」/「フォーム」ドローイングの空間的特徴/元初の場所としての「ルーム」
5 実存的空間とゲニウス ・ロキ
実存的空間の概念/実存的空間の諸要素と諸段階/ゲニウス・ロキの概念/ゲニウス・ロキの両義的本性/人間と場所の双方性

第6章 建築の要素
1 西洋の内と外
建築は内と外の出会うところに作られる/西洋建築史における内部空間の形成/ル・コルビュジエの4つの内外規定
2 日本の内と外,曖昧な境界
日本の木造建築の作られ方/内外の連続と中間領域/結界の特性
3 床
建築空間の構成要素/床の起源/高床(板敷)と土間/場を規定するものとしての基壇・台座/階級や序列を固定化する床の意匠/生命や食物を守る床,機能を分化する床/大地との関わり,人工の床
4 屋根
屋根のはじめ/領域を示し,構築をまとめる/階級や序列を表す/技術進歩と屋根表現
5 壁
西洋建築のメイン・モチーフ/防衛の壁/分割する壁/壁の視認性と秩序化,表現の場/日本の壁
6 柱
基本構造のシンボルとしての柱/柱の意味/中心を示す柱と世界軸/方向性と領域性/柱のかたちのもつ効果
7 門と窓(開口部)
開きつつ閉じる門/閾/都市に開かれた建築の門/視線を通す窓/光と風を通す窓

第7章 建築のかたち
1 かたちの基本
かたちの基本要素/理想的な幾何学と比例
2 単体としてのかたち
中心性を持ったかたち/方向性を持ったかたち/求心性と遠心性
3 かたちの基本操作
引き算的と足し算的/重合と分割
4 かたちの組織化
規則性を持った群/不規則性とダイナミズム/不規則性の組織化

第8章 部分と全体
1 全体と部分の概念
建築における部分と全体/全体からの発想と部分からの発想/知覚の立場では「部分」が先立つ
2 調和とプロポーション
調和と秩序/神殿のシュムメトリア/ルネサンスの円柱学/アルベルティの数的「均整Concinnitas」/立体的なプロポーション/木割と匠明
3 身体と人間尺度
オーダーと身体/寸法単位のベースとしての身体/身体のまわりにある距離帯
4 ミクロコスモスの思想
ミクロとマクロ/部分が全体を表す/一元論と多元論/現代の自己相似性
5 部分の集まり方
統合(Unitas):有機的統一と論理的統一/ルネサンスとバロックの対比/単一中心と多中心/単一中心の建築の例/多中心の建築の例/プレグナンツの法則
6 分節化
分節(Articulation)/建築における6つの分節サンプル

第9章 光について
1 建築と光
ショーペンハウアーの言葉/光の量ではなく「光の質」が重要
2 影をつくる光
光の下の造形/ギリシア神殿の柱/光の鋳物師/光と色彩
3 差し込む光
内部空間に差し込む光/ドームと天窓/光をうける面/トロネの厚い壁と強い光/バロックとキアロスキュロ
4 日本の光
陰翳礼賛とバウンス・ライト/光を受ける日本の意匠/日本建築のプランと光
5 光の壁
モザイクのきらめき/神の宮居と光の形而上学/中世ゴシック教会の光
6 満たす光
クラシシズムと理性の光/明るい都市空間/鏡面とライト・ウェル/衛生と透視性
7 20Cの多様な光
水晶のメタファー/ガラスブロックと光を通す壁/影のない拡散光/アトリウム建築/動く光=モバイル・ライト/影の復権

第10章 空間について
1 空間の位置づけ
空間芸術としての建築/空間の不可捉性/老子の「無」
2 宇宙Spaceのイメージ
宇宙と空間/プラトンのコーラ/ケプラーの宇宙のコップ/アリストテレスのトポス/有限で求心的な空間像・場所の現在
3 有限から無限へ
有限宇宙論の矛盾/縮減された無限宇宙/ブルーノの無限・世界の多数性/デカルトの延長・解析幾何学/カルテシアン・グリッドと世界地図/ニュートンの絶対空間・相対空間
4 無限空間の波紋
空間の恐怖/芸術への影響/均質空間(Universalspace)/観念としての空間─ロック─/頭の中の先験的空間─カント─
5 幾何学的空間
遠近法と無限遠点/無限概念による新しい幾何学的造形/バロック的都市デザインとヴィスタ/視覚の遊び
6 建築の本質=空間
感性の学問/カントとヘーゲルの美学/ゼンパーの様式論/シュマルゾーの空間と身体/空間体験は言葉にできない
7 空虚と非連続な空間概念
ギリシアとカラームの原子論/ライプニッツのモナド
8 20Cの空間概念
空間は物体の位置関係である/時空間の概念/リーマンによる幾何学空間の相対化/ポアンカレの幾何学的空間と表象的空間/メルロ・ポンティの身体からの空間/ピアジェの心理的空間の発達説/心理的空間と物理的空間

第11章 近・現代の都市
1 没場所性とグローバリズム
「都市とは何か」という問い/没場所性/グローバリズム
2 産業革命と近代の都市化
大都市化と都市計画の誕生/19C後半のパリ大改造と道路開設/超過収用と地割の大規模化/オスマン型道路の空間的特徴とその源流
3 近代都市計画とユートピア
田園都市の構想/田園都市構想の実践的側面/工業都市構想とその影響/「300万人の現代都市」の構成原理/「ヴォワザン計画」への展開/「ヴォワザン計画」の意義/「輝く都市」の理念/都市デザインにおける計画概念の4段階
4 都市イメージ論
視覚的経験と「わかりやすさ」(legibility)/パブリック・イメージとイメージアビリティ(imageability)/都市イメージの5つのエレメント/環境経験とシークエンス/シークエンスによる都市イメージ分析
5 都市のコンテクスト
都市組織とコンテクスト/都市組織と建築類型/建築ティポロジア/「図と地」,コラージュ・シティ/セミラチスとしての都市/パターン・ランゲージ

第12章 力の流れと表現
1 積む
積み木の原理/組積造の開口/まぐさ式構造と持ち送りアーチ/アーチ/ヴォールト/ドーム/土の建築/校倉造
2 組む
木の架構/木造のバランス構造/和小屋と洋小屋/トラス/鉄の架構/鉄の種類/建築部材の規格化/橋梁の表現/キャンティレバー/サスペンションの架構/サスペンションの展開/張弦梁構造/テンセグリティ/コンクリートの架構/コンクリートスラブ
3 曲げる
コンクリート構造の展開/シェル構造/シェル構造の展開/折板構造/膜の架構

第13章 持続可能性と建築デザイン
1 持続可能性への視座
環境問題の背景とパラダイム・シフト/持続可能な開発と建築デザインの領域
2 文化財の保存と活用
文化的多様性の継承/文化財建造物の保存と活用/近代化遺産の保存と活用/町並みの保存と活用
3 リサイクルとリユース
材料のリサイクルとリユース/建築のリユース(コンバージョン)
4 省エネルギーとデザイン
通風・換気とデザイン/断熱・暖房とデザイン/日射・採光とデザイン/エネルギーへのまなざしとデザイン
5 防災から減災のデザインへ
地震とデザイン/火災とデザイン/風水害とデザイン

問題集
索引
図版出典

著者略歴

編著:平尾 和洋
立命館大学理工学部建築都市デザイン学科助教授
1966年生まれ.京都大学工学部建築学科卒業,京都大学大学院修了.京都大学工学研究科助手を経て現職ならびにVIDZヴィズ建築設計事務所パートナー.博士(工学),一級建築士.共著に『日本の住宅戦後50年』(彰国社).
編著:末包 伸吾
神戸大学工学部建設学科助教授
1963年生まれ.神戸大学工学部建築学科卒業,ワシントン大学大学院および神戸大学大学院修了.鹿島建設建築設計部を経て現職.博士(工学),一級建築士.訳書に『ルドルフ・シンドラー』(鹿島出版会).
他著:大窪 健之
京都大学大学院地球環境学堂助教授
1968年生まれ.京都大学工学部建築学科卒業,京都大学大学院修了.京都大学工学研究科助手を経て現職.立命館大学 歴史都市防災研究センター客員教授を兼任.博士(工学),一級建築士.共著に『地球環境学のすすめ』(丸善).

ISBN:9784761531461
出版社:学芸出版社
判型:B5変
ページ数:224ページ
定価:3200円(本体)
発行年月日:2006年12月
発売日:2006年12月10日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AMR