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アジア・アフリカの都市コミュニティ

「手づくりのまち」の形成論理とエンパワメントの実践

編著:城所 哲夫
編著:志摩 憲寿
編著:柏崎 梢

紙版

内容紹介

世界の都市人口が激増する現代、人口の受け皿ともなっているインフォーマル市街地は、真摯に居住環境と向き合うコミュニティがつくるエネルギッシュな「手づくりのまち」だ。気鋭の研究者たちが、アジア・アフリカ9都市の綿密なフィールドワークから近代都市計画の限界を超えた新たなまちづくりの可能性を示す。

目次

はじめに

序章 アジア・アフリカのまちづくり:論点 城所哲夫
1 インフォーマル市街地と手づくりのまち
1.1 インフォーマル市街地とは?
1.2 手づくりのまちの可能性
2 アジア・アフリカにおけるまちづくりの潮流と論点
2.1 貧困緩和政策と居住政策
2.2 居住政策とまちづくり:潮流と論点
3 成長するコミュニティ・ガバナンス

〈第1部 東アジア・東南アジア〉
第1章 ──インドネシア 志摩憲寿
「手づくり」の居住環境改善事業とその展開
1 カンポン改善プログラムの手法とその到達点
1.1 カンポン改善プログラムの手法
1.2 カンポン改善プログラムの到達点
2 インドネシアにおけるインフォーマル市街地の居住環境改善策の系譜
2.1 インフォーマル市街地の居住環境改善策の系譜
2.2 インフォーマル市街地の居住環境改善策の現在
3 「手づくりのまち」の展開可能性:インドネシアの経験から

第2章 ──タイ 柏崎梢
都市コミュニティをめぐる組織化と地域化
1 バンコク・メガシティの誕生とスラムの生成
1.1 城壁からの都市化
1.2 膨らむスラム人口
1.3 スラム政策とコミュニティの萌芽
1.4 タイ的なる「コミュニティ」主義の影響
2 「スラム」から「都市コミュニティ」へ
2.1 コミュニティの登録開始
2.2 テーマ型グループおよびネットワーク化の拡大
2.3 投資先としてのコミュニティへ
3 新たな変容としての地域化
3.1 コミュニティのフォーマル化
3.2 バンコクのコミュニティ組織協議会
3.3 コミュニティ組織協議会の実態分析
3.4 事例の紹介
4 コミュニティの組織化と地域化プロセスから見える展望と課題

第3章 ──フィリピン 小早川裕子
セブ市における土地取得事業導入過程
1 インフォーマル市街地の拡大と土地取得事業
1.1 都市インフォーマル市街地と貧困層削減政策の変遷
1.2 国家の都市貧困削減政策
2 都市インフォーマル市街地、バランガイ・ルス
2.1 バランガイ・ルスの誕生とスラム形成過程
2.2 土地取得事業導入前のルス住民の経済状況
3 土地取得事業の導入と住民の行為選択
3.1 コミュニティ抵当事業導入までの経緯
3.2 CMP導入当時の住民の行為選択と社会性
3.3 関係アクター間の隠れた目論み
4 コミュニティ開発の考察

第4章 ──中国 孫立
城中村現象とその住環境整備
1 城中村現象の出現
1.1 農民工の急増と城中村の出現
1.2 城中村の特質
2 城中村形成のメカニズム
2.1 改革開放以来の急速な都市化
2.2 都市・農村分割の二元体制
2.3 城中村形成のメカニズム
3 城中村の住環境上の課題
3.1 賃貸住宅市場における城中村の役割
3.2 住環境悪化の要因
4 城中村の住環境整備事業の課題と展望
4.1 無形改造(制度上の改善)
4.2 無形改造(制度上の改善)の評価
4.3 有形改造(再開発)
4.4 有形改造(再開発)の評価

〈第2部 南アジア〉
第5章 ──バングラデシュ ナンディニ・アワル、北原玲子
ダッカにおけるスラムの空間・社会・文化
1 メガシティの貧困
1.1 都市化とスラム
1.2 人口増加とスラム
1.3 ダッカのスラム
1.4 スラムの生活状況
1.5 スラムへの取り組み
1.6 バシャンテック・スラム
1.7 カライル・スラム
2 スラムの空間と社会
2.1 住宅の空間と生活
2.2 オープンスペースの役割
2.3 住宅の空間構成
2.4 住宅の事例紹介
3 スラムの空間と文化
3.1 住宅の材料と配置
3.2 生活と生業の空間
3.3 近隣との関係性
4 スラムの持続可能性
4.1 スラムの役割
4.2 スラムの改善
4.3 低コスト住宅の改善
4.4 スラムの再開発

第6章 ──インド 鳥海陽史、城所哲夫
ムンバイ・ダラービーの社会生態空間
1 社会生態空間の捉え方
2 インフォーマル市街地形成の制度的要因と改善策
2.1 インフォーマル市街地形成の制度的要因
2.2 インフォーマル市街地の改善政策の変遷
3 ダラービーの社会空間の特徴
3.1 ダラービー地区の概況
3.2 棲み分けと共生の論理
4 ダラービーにおける交流の場の生成と特徴
4.1 住民間交流の場の類型
4.2 交流の場の生成と共生の論理
5 ダラービーの社会生態空間の形成論理

第7章 ──パキスタン 森川真樹
インフォーマル市街地における住環境改善
1 インフォーマル市街地での住環境改善
2 学習する組織とアプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)
2.1 組織学習論の概略
2.2 学習する組織
2.3 アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)
3 住環境改善におけるAI活用事例の考察
3.1 フィールドの概要
3.2 二つの住民組織での事例から
4 そこに「在る」ものを活かす

〈第3部 アフリカ〉
第8章 ──ザンビア 梶原悠
ルサカのインフォーマル市街地における空間マネジメント
1 インフォーマル化する都市
1.1 都市の起源
1.2 都市空間構造
2 インフォーマル市街地の改善施策
2.1 (法定および改良地区)住宅法の制定
2.2 改良地区における開発規制
3 インフォーマル市街地における空間マネジメントの実態
3.1 調査の概要
3.2 居住空間の特質
3.3 土地所有と権威の所在
3.4 外部空間の利用
3.5 開発行為の規制
4 持続的な空間マネジメントの構築に向けて

第9章 ──ケニア 井本佐保里
ナイロビにおけるノンフォーマルスクールの
空間生成プロセスと近隣との関係
1 ナイロビのスラムとノンフォーマルスクール
1.1 ノンフォーマルスクールの位置づけと本章の目的
1.2 ナイロビ・ムクルスラムの概要と調査手法
2 ムクルスラムにおける学校の空間生成プロセスの実態
2.1 設立経緯と所有関係
2.2 立地条件と建物配置
2.3 教室のしつらえと工夫
2.4 その他の設備・サービスとその整備
3 ノンフォーマルスクールと近隣との関係
4 学校と近隣との新しい関係

結章 志摩憲寿、柏崎梢
「手づくりのまち」の論理
1 各章事例に読む「手づくりのまち」の到達点
論点1 マス・ハウジングvs. セルフ・ヘルプ・ハウジング
論点2 エンパワメントvs. 市場活力
論点3 コモンズvs. 私的土地所有権
2 「手づくりのまち」の論理

索引
おわりに

著者略歴

編著:志摩 憲寿
1977年生まれ。東洋大学国際地域学部准教授。博士(工学)。東京大学大学院博士課程修了、東京大学都市持続再生研究センター特任講師などを経て2014年より現職。国連ハビタット、アジア開発銀行でコンサルタント、国連大学でリサーチフェローなども兼任。専門分野は都市計画・まちづくり。近年は東南アジアに加えサブサハラアフリカも研究対象としている。主な著作に『Understanding African Urbanization: Discourse, Representation and Actuality』(編著、東京大学都市持続再生研究センター)、『世界のSSD100:都市持続再生のツボ』(編著、彰国社)など。

ISBN:9784761526139
出版社:学芸出版社
判型:A5
ページ数:208ページ
定価:2700円(本体)
発行年月日:2015年12月
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB