歴史に学ぶ 減災の知恵
建築・町並みはこうして生き延びてきた
著:大窪 健之
内容紹介
歴史的な町並みには、統一感のある美しさがある。しかし一方で、これらは、自然災害から身を守り暮らすなかで、工夫し、積み重ねてきた知恵の結晶とも言えるものだ。地震、火災、水害、風害等に対してうまく防御する技術がない時代に、それらを受け流すことで生き延びてきた昔の人たち。震災後の今こそ、その知恵に学びたい。
目次
プロローグ
減災という伝統文化──歴史的町並みと災害を受け流すデザイン
町並み景観と生き残るデザイン/災害のデパート/防災神話の限界/防災から減災へ/減災のデザイン
1 揺らして逃がす地震対策
震災という宿命
1 しなりで揺れを受け流す──伝統建築は柔らかい
五重塔は地震で倒れたことがない/核となる心柱/現代に活かされている柔構造
2 きしむことで揺れを止める──地震の力を摩擦に変える仕口
仕口の力/あえて破壊させる/めりこみを利用する
3 「ドミノ倒し」が止まるわけ──復元力が決め手の巨大柱構造
なぜ途中で止まるのか/巨大柱の建築列伝
4 揺れが来たら空を飛べ──石場建ての免震効果
建築が飛びはねる?/石の上に建つ
5 そもそも耐震性能は必然?偶然?──事実と解釈のはざまに
6 逃げるが勝ち──避難を考えた特殊建築
避難する知恵/VIPの避難所
2 燃えても守れる火災対策
木でできた町/昔の火の消し方/火消という人々
1 燃えるものにはふたをする──瓦と漆喰で被覆された伝統的耐火建築
屋根材の変遷/塗屋造と土蔵造/味噌で隙間を埋める
2 「うだつ」を上げろ──町並みに挿入された防火壁
3 シッポを切って生き延びる──防火帯のある建築と町並み
連なって建つ蔵/池をはさむ/火除け地をつくる/導火線を断つ知恵/燃えても折れない巨大柱
4 燃えても消せるまちづくり──自然水利を活かした伝統的防災都市
防火のための水路/バケツの下がる町並み/現代に生きる知恵/茅葺きの防火システム
3 ぬれても流れぬ水害対策
1 弱さゆえに受け流す──伝統的な洪水対策
人間の想定を超える可能性/隙間によって水勢を弱める/桂垣の隙間と弾力/もう一息の高さをかせぐ畳堤/洪水からすばやく復旧する橋/流れとともに生きる/輪中の生活
2 万一に備える生き方──身近な場所への避難計画
津波避難所になった寺/土地の歴史/稲むらの火
4 日常としての風雪対策──台風と豪雪に向き合う知恵と工夫
自然と共生してきた住環境
1 低く静かにやり過ごす──様式となった台風対策
福木と石垣/赤瓦の屋並み/台風への備え/軒を支えるサンゴの礎石/室戸の知恵
2 身を寄せ合って助け合う──雪害対策
合掌集落/新潟県の雁木
エピローグ
「減災の知恵」の復活と歴史の再生──「歴史・防災まちづくり」へ向けて
コミュニティー居久根による津波対策/伝統に学ぶ美しい減災まちづくり
補注
おわりに