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続 部落解放論の最前線

水平社一〇〇年をふまえた新たな展望

他編著:朝治 武
他編著:谷元 昭信
他編著:寺木 伸明

紙版

内容紹介

部落解放解放論研究会は2015年7月に発足し、歴史的視点はもとより広い視野に立って、被差別部落と部落差別の変容、部落差別の存続要因、主要な部落解放理論、部落解放運動のあり方、部落解放への道筋と展望などの研究活動を進めてきた。2018年5月から研究会は第二期に入り、第一期の成果と問題点をふまえ、部落解放運動、部落問題、歴史認識をめぐる現状と課題を深く掘り下げるだけでなく、部落解放と深く関係する被差別マイノリティと反差別・人権をめぐる課題にも視野を広げてきた。この第二期の充実した報告内容をまとめ、2022年の全国水平社創立100年に向けて、あらたな展望を提案する。第一期の成果をまとめた『部落解放論の最前線—多角的な視点からの展望』の続編。

目次

発刊にあたって………朝治武・谷元昭信・寺木伸明・友永健三

第一部 部落解放運動の課題と展望

「部落差別解消推進法」公布・施行五年………友永健三
―成果と課題―
Ⅰ 五年間の取り組みの成果
Ⅱ 政府・法務省が取り組んだ実態調査結果
Ⅲ 問題点と今後の課題

狭山第三次再審請求審における現状、課題、展望………中北龍太郎
Ⅰ 狭山事件とは
Ⅱ 裁判の経過
Ⅲ 確定判決の証拠構造
Ⅳ 第三次再審請求審の現状
Ⅴ 新証拠による情況証拠の崩壊
Ⅵ 秘密の暴露の崩壊
Ⅶ 自白の信用性―テープ分析から
Ⅷ 自白の信用性―T供述との矛盾、大変遷
Ⅸ 今後の課題と展望

鳥取ループ・示現舎裁判闘争の現状と今後の課題………中井雅人
Ⅰ 差別表現の種類
Ⅱ インターネット上の差別表現
Ⅲ 「復刻版・全国部落調査」出版事件の事案の概要
Ⅳ 権利侵害の内容
Ⅴ 相模原支部決定の持つ重要性
Ⅵ 問題点と課題
Ⅶ 鳥取ループの特性
Ⅷ 二〇二一年九月二七日東京地裁判決を受けて

被差別部落女性の主体性と複合差別………熊本理抄
Ⅰ 被差別部落女性の聞き取りから
Ⅱ 部落解放同盟による主体性形成支援
Ⅲ 主体性形成における「複合差別」概念の有用性と課題

大阪府ハートフル条例と社会的企業………冨田一幸
Ⅰ ハートフル条例は三兎を追う
Ⅱ 維新政治との相克
Ⅲ まずエル・チャレンジがあって
Ⅳ 総合評価入札で雇用を競う
Ⅴ 公園管理に社会的企業
Ⅵ 国際的な公共調達戦略
Ⅶ ハートフル条例への軌跡
Ⅷ そして、条例改正へ

部落解放論の再構築に向けた論点整理………谷元昭信
―「全国水平社創立一〇〇年」への問題意識―
Ⅰ 近現代日本の差別体質を根底から揺さぶり続けた一〇〇年
Ⅱ 部落差別解消過程の五段階と部落解放運動の三期区分の特徴
Ⅲ 部落解放への展望―水平的社会連帯と地域共生社会の実現


第二部 部落問題をめぐる現状と課題

同和行政の果たしてきた役割と今後の課題について………中川幾郎
Ⅰ 同和から人権への移行に対する警鐘
Ⅱ 総合性を追及してきた同和行政
Ⅲ 同和行政は「人権」の基本認識を行政に基礎づけた
Ⅳ さまざまな「集団」「まちづくり」に人権感覚が不可欠であることを認識させた
Ⅴ 忘れてはならない国際基準
Ⅵ 同和行政は、人権課題の行政における「総合性」を絶えず問いかけてきた
Ⅶ 地域社会、市民社会での実践

現代社会の部落差別における「属地性」………阿久澤麻理子
―部落の所在地情報の公開をめぐって―
Ⅰ 「する側」の問題として定義される「差別」
Ⅱ 部落差別における「系譜性」と「属地性」―なぜ「地名」が出身者の判定基準にされるのか
Ⅲ 属地的情報による部落出身者の判定―大阪府調査(二〇一〇)
Ⅳ 市民意識に現れる属地的差別―大阪府堺市調査(二〇一五、二〇二〇)
Ⅴ 「全国部落調査事件」裁判

「同和教育」の現状と課題………髙田一宏
―「部落差別解消推進法」の制定を踏まえて―
Ⅰ 部落の実態と子どもたちの教育環境の変化
Ⅱ 学力保障の周辺化・変質
Ⅲ 部落問題の学習機会の減少
Ⅳ 「部落差別解消推進法」の意義と限界
Ⅴ 同和教育の普遍性と個別性

社会教育と啓発の現状と課題………上杉孝實
Ⅰ 社会教育と啓発
Ⅱ 社会教育における同和教育の展開
Ⅲ 部落問題に関する意識の現状
Ⅳ 教育・啓発の体制
Ⅴ 教育・啓発の内容・方法

戸籍(婚姻)をめぐる女性の人権………栄井香代子
Ⅰ 女性たちの行政闘争
Ⅱ 民法における結婚(九〇〇条と七七二条をめぐる女たちの闘争)
Ⅲ 憲法の結婚と民法の結婚の矛盾
Ⅳ 人間を扶養者・被扶養者に分けて維持された「家制度」から脱却できるか
Ⅴ さまざまな人権課題を横断する戸籍問題

「是旃陀羅」差別と仏教の平等観………近藤祐昭
―真宗大谷派の「是旃陀羅」解釈を中心として―
Ⅰ 真宗大谷派における「旃陀羅」解釈
Ⅱ 真宗大谷派『部落問題に関する教学委員会報告書』(二〇一六年)
Ⅲ 比喩的な表現としての「是旃陀羅」


第三部 反差別・人権をめぐる現状と課題

障害者差別解消法から五年、成果と課題を考える………松波めぐみ
Ⅰ 障害者差別解消法の基盤にある「社会モデル」とは
Ⅱ 障害者差別解消法の概要と「合理的配慮」
Ⅲ 障害者差別解消法、五年間の成果と課題

在日コリアンをめぐる差別問題の現状と課題………文公輝
Ⅰ 在日コリアンとは誰のことか
Ⅱ 在日コリアンに対する差別
Ⅲ 差別事件の具体例
Ⅳ 学校/職場のレイシャルハラスメント
Ⅴ パワハラ防止法が一部のレイシャルハラスメントを措置対象に
Ⅵ ヘイトスピーチ解消法による社会の変化

「アイヌ施策推進法」に見るアイヌ民族の人権課題………上村英明
―この法律で何が起こったか―
Ⅰ 「アイヌ施策推進法」の背景―「旧土人保護法」と「アイヌ文化振興法」
Ⅱ 「アイヌ施策推進法」をめぐる問題
Ⅲ 今後の課題

現代的琉球人差別の淵源を考える………松島泰勝
―なぜ、琉球人遺骨返還訴訟を闘うのか―
Ⅰ 学術人類館事件の経緯と東京人類学会の関与
Ⅱ 学術人類館事件に対する新聞社の批判と琉球人返還運動
Ⅲ 清朝人、朝鮮人のケースとの比較を通じて
Ⅳ 現代の日本人研究者による学術人類館事件認識の一端
Ⅴ 金関丈夫、島袋源一郎と学術人類館事件との関係
Ⅵ 結論

移住労働者の人権をめぐる現状と課題………藤本伸樹
―技能実習制度を中心に―
Ⅰ あいつぐ国連からの勧告と日本の法制度
Ⅱ 技能実習生に対する人権侵害事象
Ⅲ 企業の社会的責任と政府の「移民政策」の課題

LGBTsに対する差別の現状と課題………仲岡しゅん
―刑務所におけるトランスジェンダーの処遇を中心に―
Ⅰ LGBTとはなにか
Ⅱ トランスジェンダーとして生きて
Ⅲ 家庭とセクシュアルマイノリティ
Ⅳ 刑務所とトランスジェンダー
Ⅴ 共通点と特有の問題

企業と人権………松岡秀紀
―国連の取り組みを中心に―
Ⅰ 「企業と人権」をめぐる世界と日本の流れ
Ⅱ 「ビジネスと人権に関する指導原則」と人権デュー・ディリジェンス
Ⅲ 「負の影響」から考える
Ⅳ 「国際的に認められた人権」から考える


第四部 部落問題をめぐる歴史認識の現状と課題

近世におけるかわたの人びとへの身分差別の主体と諸形態についての試論………寺木伸明
Ⅰ 身分と差別
Ⅱ 近世におけるかわたの人びとへの身分差別の主体と諸形態
Ⅲ 近世かわたの人びとへの身分差別の主体と諸形態の実際

水平運動史研究の論点と課題………朝治 武
―『水平社論争の群像』の批評に接して―
Ⅰ 『水平社論争の群像』の出版
Ⅱ 『水平社論争の群像』の批評
Ⅲ 『水平社論争の群像』の批評に対する私の見解

衡平運動史研究の現状と課題………渡辺俊雄
Ⅰ 研究史の簡単な紹介
Ⅱ 衡平社はどういう組織か
Ⅲ 創立とその後の経過
Ⅳ 衡平社はなにと、どう闘ったのか
Ⅴ 衡平運動の、いくつかの特徴
Ⅵ 水平社との交流・連帯

ガンディーの非暴力主義と西光万吉の和栄政策………加藤昌彦
Ⅰ 西光万吉研究のきっかけ
Ⅱ ガンディーと被差別カースト
Ⅲ 西光万吉と非暴力主義の出合い
Ⅳ 和栄政策の提案とその行方

古地図と地名について………廣岡浄進
―情報化と部落史研究の課題―
Ⅰ 経緯
Ⅱ 絵図のオープンアクセスの現状
Ⅲ 全国部落史研究会の提言
Ⅳ 法務省依命通知をめぐって

部落解放論研究会第二期(二〇一八年五月~二〇二〇年四月)報告記録一覧
執筆者略歴

著者略歴

他編著:朝治 武
朝治 武(あさじ・たけし)
1955年生まれ。大阪人権博物館館長。著書に『水平社の原像』(解放出版社、2001年)、『アジア・太平洋戦争と全国水平社』(解放出版社、2008年)、『差別と反逆―平野小剣の生涯』(筑摩書房、2013年)、『水平社論争の群像』(解放出版社、2018年)などがある。
他編著:谷元 昭信
谷元昭信(たにもと・あきのぶ)
1951年岡山県生まれ。大阪市立大学法学部中退。部落解放同盟中央書記次長就任など部落解放運動一筋に活動。反差別国際運動(IMADR)結成に参画。現在、大阪市立大学、関西学院大学の非常勤講師。
他編著:寺木 伸明
寺木伸明(てらき・のぶあき)
1944年滋賀県生まれ。1972年大阪大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。現在、桃山学院大学名誉教授。全国部落史研究会顧問。著書に『近世被差別民衆史の研究』(阿吽社、2014年)など。

ISBN:9784759210361
出版社:解放出版社
判型:A5
ページ数:458ページ
定価:3000円(本体)
発行年月日:2021年12月
発売日:2021年12月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB