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研究叢書 501

『発心集』と中世文学

主体とことば

著:山本 一

紙版

内容紹介

「表現主体と言語の交わる場を読み解く」
第Ⅰ部は、長期間にわたり発表してきた『発心集』論を、あらためて補筆体系化した九章に、『十訓抄』論二編を加えて構成。第Ⅱ部には、発表時に反響の大きかった副詞的「あやまりて」についての論を再構成して収録したほか、『方丈記』、西行などに関する論考を収める。第Ⅰ部はおもに説話集を編纂する主体に関する研究であり、第Ⅱ部は語と表現の解釈に関する問題をおもに扱う。

目次

口絵 木陰のタチツボスミレ
自序                                   
凡例                                   
第Ⅰ部 説話集と編者主体                         
第一章『発心集』卷一・卷二の展開―思索の表現としての説話配列―      
 1 再出家の話群(第1話から第5話)                  
 2 物欲・執心の話群(第6話から第8話)                
 3 無名の聖たちの話群(第9話・第10話)               
 4 偽悪の話群(第11話から第13話)                 
 5 慈悲・非所有の話群(第14話から第18話)             
第二章 袈裟と琵琶―社寺宝物伝承と『発心集』編者の関心―         
 1 袈裟説話の性格                           
 2 心情への関心                            
 3 琵琶説話の性格                           
 4 編者による操作                           
第三章 『発心集』の思想的核心―往生の条件―               
 1 宿業―往生の条件の不可知性―                    
 2 主体的思索へ                            
第四章 『発心集』の法華読誦仙人譚から―編者の関心と説話配列―      
 1 法華読誦仙人譚の問題点                       
 2 出奔した弟子(第38話)                     
 3 独居修行者と大寺院(第39話)                   
 4 構図の逆転(第40話)                       
 5 『発心集』の構成―「間奏部」という提案―              
第五章 恩義と信義への関心―『発心集』増補の可能性との関係において―   
 1 八巻本巻末前後の説話連接                      
 2 恩義と信義の主題による連接                     
 3 「間奏部」における第62話の異質性                 
 4 補説―巻四から巻五への移り―                    
第六章 『発心集』の一面―貴族の道心―                  
 1 少納言統理遁世のこと(第54話)                  
 2 中納言顕基出家籠居の事(第55話)                 
 3 成信、重家同時に出家する事(第56話)               
 4 花園左府八幡に詣で、往生を祈る事(第57話)            
 5 まとめにかえて                           
第七章 『発心集』の数寄説話                       
 1 成通と西行                             
 2 永秀と時光・茂光                          
 3 数寄聖蓮如                             
第八章 『発心集』の終章                         
 1 巻六終結説について                         
 2 第74話をめぐって                         
  (1)原拠説話の問題                         
  (2)固有名詞の問題                         
  (3)『発心集』の中での第74話                   
 3 第75話をめぐって                         
  (1)『発心集』的諸要素の集成                    
  (2)「終章」の意味                         
 4 『発心集』の構成と性格                       
第九章 『発心集』と『閑居友』『撰集抄』                 
 1 『発心集』の反「智者」性                      
 2 慶政・長明と慈円                          
 3 『閑居友』の「智者」性                       
 4 『撰集抄』の自己権威化                       
 5 補記―『発心集』巻七・巻八について―                
第十章 『十訓抄』と歌物語                        
 1 歌物語依拠の形態(一)                       
 2 依拠の形態(二)                          
 3 「第五」の配列の中で                        
 4 「第八」の配列の中で                        
 5 作品諭・編者諭に向けて                       
第十一章 『十訓抄』の注釈的空間―『俊頼髄脳』『古来風体抄』関係説話から―
1 『俊頼髄脳』の受容                         
  (1)『十訓抄』が参照した『俊頼髄脳』                 
  (2)諸書の「相互注釈的」な関係                   
  (3)編者の「理解」と「無関心」                   
  (4)編者の「誤読」、文字づらの影響力                  
2 『古来風体抄』の受容とその周辺
  (1)『古来風体抄』と『大和物語』                   
  (2)「桂の御子」問題に対する編者の姿勢                
3 時平・国経・平中譚をめぐって                     
  (1)国経の妻と平中の妻                       
  (2)「岩躑躅」の歌の作者                       
  (3)腕に書かれた歌                          
第Ⅱ部 ことば、こと、もの―読解のために―                 
第一章 副詞の「あやまりて」―『宇治拾遺物語』『平家物語』の語彙から―   
 1 『宇治拾遺物語』の用例、その一(用例一)               
 2 『宇治拾遺物語』の用例、その二(用例二)               
 3 『平家物語』の用例(用例三)                     
 4 その他の用例                            
 5 補足的説明                             
 6 ここまでのまとめ                          
 7 用例の追加                             
第二章 「夢見」と「議勢」―『平家物語』の語彙から―            
 1 「予告する」意味の「夢見」                     
 2 「議論」もしくは「議論の趣旨」の意味の「議勢(義勢・擬勢)」     
第三章 「霞」と反照―藤原家良歌の「ほてり」など―             
 1 「霞」に対応するべき和語は何か?                   
 2 和語「かすみ」に対応するべき漢語(漢字)は何か?           
 3 和語「かすみ」の範囲と「霞」との接点                 
 4 漢語「霞」の範囲と「かすみ」との接点                 
第四章 「ふるさと」と「ふるや」―『方丈記』の和歌的修辞―         
 1 歌語としての「ふるさと」                       
 2 歌語としての「ふるや」                        
 3 まとめ                               
第五章 外山と音羽山―『方丈記』の修辞と歌枕―               
 1 地名の妥当性と修辞の妥当性                     
 2 三つの「音羽山」                           
 3 遠望される歌枕「音羽山」                       
 4 修辞としての「音羽山」と「外山」                   
第六章 「もんをむすびて」―思想形成期の親鸞―               
 1  慈円伝と親鸞伝                          
 2 「恵信尼消息」の「もん」をめぐって                  
 3 『三夢記』が示唆する軌跡                       
 4 結語                                  
第七章 冷然―稚児追考―                         
 1鰐淵寺文書の稚児                           
 2「冷然」の用例、『玉葉』ほか                       
第八章 きさらぎの望月―西行「願はくは花の下にて」の周辺―        
 1 往生―臨終のイメージ―                       
 2 歴月―桜と太陰太陽暦―                       
 3 配列―勅撰集と私家集―                       
第九章 寂蓮治承之比自結構百首―西行の一面―               
 1 歌林苑と奉納和歌行事をめぐって                   
 2 寂蓮勧進の百種をめぐって                      
 第十章 藤に似る菫・風待つ花―自作注読解―               
 1 景物へのまなざし―藤原俊成の場合―                 
 2 到来する風情―慈円の場合―                     
あとがき

著者略歴

著:山本 一
1952年生。大阪大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)大阪大学。大阪大学文学部助手、金沢大学教育学部講師、同助教授、同教授を経て、2018年3月まで金沢大学人間社会研究域学校教育系教授。

ISBN:9784757608801
出版社:和泉書院
判型:A5
ページ数:328ページ
定価:9000円(本体)
発行年月日:2018年06月
発売日:2018年06月08日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:FB
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPJ