和泉選書 186
私の古典文学研究
始めと終り
著:片桐 洋一
紙版
内容紹介
若き古典文学研究者への遺言
「原典を目ざすという姿勢が何よりも研究の基本になるべきだが、享受した当代と後代の人々の心をも含めた形、つまり民族の心の中に生きた姿のまま作品を把握するために、本文研究・伝本研究は享受史の研究とともにあるべきだと思うのである。」
「京都大学を卒業した昭和二十九年以来、日本古典文学、特に平安時代の和歌と物語に関する論文を数多く書いて来た。もう書き尽したから廃業宣言をしようと思っていたが、書評の類を除いても、まだ少し残っていた。しかも残っていたものは、私の節目節目をなすものであったり、いま最も言いたいことであったので、捨てるに惜しく、ここに心情を吐露してみた。評者の方々の共感を得るかどうかわからないが、私の真情を聞いていただきたいと思う次第である。」
目次
研究篇
一 平安時代における作品享受と本文
二 『土左日記』定家筆本と為家筆本
三 『伊勢物語』の本文と『伊勢物語』の享受
四 『古今集』における『萬葉集』
五 藤原定家の三代集
六 『古今和歌集』と『後撰和歌集』
七 冷泉家時雨亭文庫の三十六人集
八 『毘沙門堂旧蔵本古今集注』の本文
九 住吉大社本『古今秘聴抄』について―『中世古今集注釈書解題』補遺の内―
十 『枕草子』論序説
随想篇
一 国文学の衰退
二 王朝物語の享受と生成
三 私の国文学者人生―我が生い立ちの記―
あとがき