研究叢書 477
国語論考
語構成的意味論と発想論的解釈文法
著:若井 勲夫
内容紹介
第一章では、マルティン・ブーバーの我汝哲学に基づいて我と汝としての人間関係が両者の間にある言葉とどのように相関し、成立し、機能しあうかを考察した。さらにその言語表現の根底を支え、在らしめる永遠の汝の存在を明らかにし、そこに真実の言葉が生きることを論じた。
第二章では、主として神道関係の語の意味を言語主体の表現意識に立返り、その表現しようとする過程を究めて、語の成り立ちを探る。語構成意識の分析を通して、意味世界の広がりを究め、日本人の思考と精神のあり方を明らかにした。
第三章では、動詞の自動詞と他動詞の別を発展させ、言語主体が対象を「こなた」「かなた」として捉える発想・観点によって、表現しようとする意味がどのように変るかを多くの用例を分析して明らかにした。さらに、芭蕉の発句と俳文をこの発想によって解釈し直し、その表現意図を究明した。
附篇では、国語のあり方、縦書きであることの意義等を論述し、国語の将来やその対策、文化の根幹を考えた。
目次
第一章 言語論
我と汝としての言葉
第二章 語構成的意味論
第一節「かみ」
第二節「まつる」
第三節「たま」
第四節「かぐら」
第五節「けがれ」
第六節「みそぎ」
第七節「はる」「なつ」「あき」「ふゆ」
第八節「たて」「よこ」
第九節「やさし」
第三章 「こなた」「かなた」の発想論的解釈文法
第一節 動詞の自他
第二節 「こなた」か「かなた」か
第三節「こなた」「かなた」の発想
第四節「こなた」から「かなた」へ
第五節「かなた」から「こなた」へ
第六節「こなた」「かなた」の総合的表現
第七節 芭蕉の発句と俳文の解釈
附篇
一、国語は日本語か
二、国語縦書き論
(附)本書収載の既発表論文の一覧
あとがき