和泉選書 183
病の言語表象
著:木村 功
紙版
内容紹介
我々は多かれ少なかれ、病と無縁で生きることはできない。
本書は、社会的な差別をともなう病であるハンセン病、HIV・エイズ、精神病などを対象に、主に日本近現代文学に描かれた言語表象について詳細な検討を加えたものである。病という観点から、小説などの表象を横断的に解析した本書は、日本の近現代社会における国家・社会・医療・福祉が抱える構造的な問題を浮かび上がらせている。
目次
はじめに
第一章 楽土/ディストピアの言説空間――小川正子「小島の春」におけるハンセン病の言語表象――
第二章 隔絶-他者化の言語表象――北條民雄「いのちの初夜」論――
第三章 近代日本のディストピア――長島・明石海人・「奇妙な国」――
第四章 エイズの表象
第五章 エイズのイデオロギー
第六章 精神病院の光景――安岡章太郎「海辺の光景」論――
第七章 メランコリーの光学――梅崎春生における鬱病とその言語表象――
第八章 がん表象の地平――山本文緒「プラナリア」を中心に――
第九章 小説・映画の中の障害者像――田辺聖子「ジョゼと虎と魚たち」論――
索引
あとがき