和泉選書 178
平安文学の本文は動く
写本の書誌学序説
著:片桐 洋一
紙版
内容紹介
読みやすく分かりやすい「写本の書誌学」のすすめ。印刷がない時代、本は書写され読まれ楽しまれてきた。写本時代の文学の楽しみ方の基本を学び、古典文学の享受の基本と面白さが分かる。
目次
Ⅰ享受本文の生成
一、我々は藤原定家校訂本を読んでいる
二、『更級日記』の場合
三、文学作品はオーダーメードで一点だけ作られる
四、草稿本と清書本
五、既発表の巻を改稿して新しい巻を作る――『うつほ 物語』の場合――
六、後人による補筆
七、読者の書き込みと書き込み排除
八、享受本文の成立
九、成立と享受の連続性
十、成立段階の本文生成と享受段階の本文生成
Ⅱ研究本文の生成――『古今和歌集』を例として――
一、伝承から実証へ
二、写本の中に情報を詰め込む――清輔本の方法――
三、俊成の『古今和歌集』本文――清輔との違い――
四、俊成本『古今和歌集』の諸相
Ⅲ藤原定家の古典書写
一、藤原定家の『古今和歌集』書写
二、嘉禄二年本『古今和歌集』の擦り消し訂正
三、初期の定家本『古今和歌集』を見る――建保五年本――
四、たくさんあった定家手沢本私家集
五、「村雲切」から『定家本貫之集』へ
六、伝西行筆『一条摂政御集』をめぐって
まとめ 平安時代における本文の享受と成立