ローマ百景 I
建築と美術と文学と
著:マリオ・プラーツ
他訳:白崎 容子
紙版
内容紹介
原題『パノプティコン・ロマーノ』の「パノプティコン」とは、ギリシア語の「パン」(すべて)と「オプティコン」(視覚的なもの)との合成語であり、英国の法学者・哲学者のジェレミー・ベンサムが考案した、囚人に知られずに周囲の独房を監視できる円形の刑務所とともに、望遠鏡と顕微鏡との両方の機能をもった望遠顕微鏡をも表わす言葉である。すなわち本書は、ローマという都市の「看守」を自認するプラーツが、遠くは望遠鏡を覗き、近くは顕微鏡で観察した報告集とでも評することができるだろう。本書に含まれている全二八編は、書評という形式を借りたローマに関する建築と美術と文学の秀逸なエッセイである。他のプラーツの著作と同様に、ローマをめぐって書かれた滋養に富むが、少しばかり辛口の都市文化論というつもりで、個々の論考——無論、それぞれはそれなりに手強いのであるが——を味わい、楽しむと良い。
目次
序
ピラネージ
プッサンの谷
英雄的風景
リチャード・ウィルソン
一八世紀ローマに暮らす
消え去りしローマ
ローマの知られざる「驚異」
屋上テラスの愉しみ
写真に見る一九世紀ローマ
ローマの感傷
ローマのオステリア
カプラローラ
ボマルツォの怪物
ミセス・ストロング
趣味人の死
アザレアの園
ローマの噴水
装飾されたファサード
コルソ通り
スペイン広場
ポポロ広場
ナヴォーナ広場
リッチ広場
ヴェネト通り
ネオンに照らされた美術館
現代の遺跡
カルシウムの消化不良
ローマの魅惑——あとがきにかえて 白崎容子
人名/著作名/美術作品名/地名/モニュメント名 索引