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最近の税務争訟 ⅩⅥ

著:佐藤 孝一

紙版

内容紹介

相続により取得した資産を譲渡した場合、被相続人の保有期間中の値上がり益も譲渡所得税の課税の対象となるとした事例、納税者の長男が無権限でした所得税の修正申告及び消費税等の期限後申告について事務管理が成立し、その効果は納税者に帰属するとした事例など、計70事例を収録。

目次

第1 通則関係

1 納税申告
(1) 納税者の長男が無権限でした所得税の修正申告及び消費税等の期限後申告について事務管理が成立し、その効果は納税者に帰属するとした事例

2 更正の要求
(2) 更正の請求書の記載事項と更正の請求書と認められるための要件
(3) 破産会社に対する利息制限法超過利息に係る過払金返還請求権が更生債権として確定したことを理由とする破産管財人の更正の請求(通則法23条2項1号)は、同号に該当せず、理由がないとされた事例

3 無申告加算税
(4) 実地調査以後にされた期限後申告書の提出が決定を予知して行ったものでないと認められるとした事例

4 重加算税
(5) 代表権を有しない常務取締役による架空外注取引等と重加算税の賦課要件の充足
(6) 売買契約書記載の引渡が不可能となった後にその記載に合わせた領収証を作成させた行為は収入すべき時期の仮装隠ぺい行為に当たるとした事例
(7) 債権放棄に係る損失の損金算入が寄附金に当たると認識しつつされたものとは認められないとして、重加算税を取り消した事例
(8) 相続財産である生命保険金の一部等を除外した一覧表を作成し、申告手続を依頼した税理士に交付した行為が隠ぺい又は仮装に当たらないとした事例
(9) 税理士に交付した遺産分割協議書に相続開始前に被相続人名義預金口座から引き出した金員を記載しなかったことは隠ぺい・仮装に当たらないとした事例
(10) 措置法35条1項の適用要件を満たさない(母屋と別棟は一構えの家屋でない)と認識しつつ、同項を適用して過少申告をしたとは認められないとして、重加算税を取り消した事例
(11) 税理士に対して売上げの入金口座の通帳を提示しなかったこと等をもって隠ぺい又は仮装に当たると解することはできないとした事例
(12) 換地不交付清算金の受領を一貫して隠ぺいしようとしていたとは認められないとして、通則法68条2項を適用した重加算税賦課決定を取り消した事例

5 国家賠償請求訴訟
(13) 減額更正の嘆願と税務署長の職務上通常尽くすべき注意義務(国家賠償法上の違法)
(14) 所得税の調査対象者の経営するグループ法人等の預金取引について銀行調査を行ったことの違法を理由とする国家賠償請求の当否
(15) 税務職員が滞納者の妻及び長女名義の預貯金からの自主納付を促し、納付させた行為の違法を理由とする国家賠償請求の当否


第2 所得税関係

1 所得区分等
(16) 監査役の地位にある会社から支払を受けた金員、大学から支給された非常勤講師料の所得区分
(17) 関係会社に対する上場株式の高額譲渡と所得区分(譲渡所得・一時所得)

2 収入金額
(18) 相続により取得した資産を譲渡した場合、被相続人の保有期間中の値上がり益も譲渡所得税の課税の対象となるとした事例―その一
(19) 相続により取得した資産を譲渡した場合、被相続人の保有期間中の増加益も譲渡所得税の課税対象になるとした事例―その二
(20) みなし贈与税の課税対象とされた資産の譲渡と譲渡所得課税(低額譲渡該否、所得税法9条1項15号適用の有無)
(21) 弁護士業務を営む者が事務所の移転に伴い受領した立退料(必要経費の補塡)が事業所得の総収入金額に該当するとした事例(青色更正の理由の差替え)

3 必要経費...252
(22) 賃貸借条件、返還時期等賃貸契約に関する情報の収集、都市計画図の購入に関する支出、墓地復元費積立金等の不動産所得の必要経費該否
(23) 病院事業に係る破産手続開始決定後に債権者に支払った金員が開業費に当たらないとした事例
(24) 共有の賃貸物件の固定資産税等、家事関連費等の必要経費算入の許否(仕入税額控除の可否)、妻(学習塾勤務等)及び子(予備校生)の事業専従者控除の可否、青色申告承認の取消処分の適否
(25) 税理士が青色事業専従者(妻)に支給した専従者給与のうち、類似同業者給与比準方式による相当額を超える部分は必要経費に算入できないとした事例

4 譲渡所得課税と取得費・譲渡費用
(26) 元所有者の土地台帳の記載に基づき譲渡土地の取得時期及び売買代金に基づいて取得費を認定し、更正処分を取り消した事例
(27) 貸農地の譲渡に当たり耕作者に支払った各金員は譲渡費用に当たらないとした事例(その各領収書に離農補償金又は離農補償費と記載したことを理由とする重加算税賦課の適否)
(28) 譲渡土地に存していた建物の取壊し費用、減価償却費相当額、固定資産税及び都市計画税が取得費にも、譲渡費用にも該当しないとした事例

5 譲渡所得課税の事例
(29) 公有地の拡大の促進に関する法律に基づき設立された公社が所有していた代替地が所得税法58条1項の適用対象である土地に該当しないとされた事例
(30) 寄附された株式が財団の公益事業の用に直接供されたということはできず、譲渡所得非課税承認の要件を充足しないとした事例

6 所得控除
(31) 事実上の婚姻関係にある者は控除対象配偶者に該当しないとした事例

7 税額控除
(32) 課税処分時における納税者の生活の本拠は所有家屋ではなく、貸与を受けた宿舎であり所有家屋は「引き続き居住の用に供している」もの(措置法41条1項)に当たらないとした事例

8 源泉徴収義務と告知処分
(33) 取締役が不正に会社から取得した金員は給与等に該当しないとして、源泉所得税の納税告知処分等を取り消した事例


第3 法人税関係

1 収益等の帰属
(34) 分散計上されたナイトクラブ経営に係る収益の帰属者、役員報酬の真否と帰属者、役員報酬の事業年度末の増額計上と損金算入の可否、重加算税の賦課等
(35) 会社と元取締役らとの間の調停に係る債務免除の有無及び解決金の帰属(代表者個人又は会社)

2 益金の額と計上時期
(36) 工事請負に係る注文書等の「検収したもの」との文言をもって「特約又は慣習」があったとは解されず、請負工事に係る収益の計上時期は検査合格日の属する事業年度であるとして課税処分を取り消した事例

3 損金の額と計上時期
(37) 太陽光発電システム本体及び発電所のフェンス等に係る減価償却費の計算(事業供用の日)

4 寄附金課税
(38) 完全子会社に対する支援計画に基づく債権放棄と寄附金課税(更正の理由附記の程度、理由の差替えの許否)

5 タックスヘイブン対策税制
(39) 販管費の割合に基づく寄与度利益分割法による独立企業間価格算定の適否(措置法66条の4―移転価格税制)
(40) 比較対象法人はマナウスフリーゾーン外で事業活動を行っており、検証対象法人との比較可能性を有せず、国外関連取引により支払を受けた対価の額が独立企業間価格に満たないことにつき立証があったとは認められないため、移転価格課税を行うことができないとした事例


第4 消費税関係

1 免税
(41) 輸出物品販売場許可を受けた者がした家電製品の販売が「通常生活の用に供する物品」(消費税法施行令18条1項)の譲渡(非居住者に対する譲渡)に当たらないとした事例(消費税と推計課税の許否)

2 課税売上(資産の譲渡等)
(42) 弁護士会が会員である弁護士から支払を受ける弁護士法23条に基づく照会手続の手数料等と消費税課税
(43) 弁護士会が弁護士協同組合等から受取った事務委託金等と消費税課税

3 仕入税額控除
(44) 個別対応方式による課税仕入れの用途区分の判断基準時
(45) 原処分時における帳簿等の不提示と仕入税額控除の許否(争訟手続上、帳簿等の保存の事実を主張立証することの許否)
(46) 税務職員の質問検査(消費税法62条1項・法人税法153条)時における帳簿書類等の不提示と仕入税額不控除の許否(青色申告承認取消処分の適否)


第5 贈与税・相続税関係

1 贈与税の課税対象
(47) 親族関係のない者からの株式の譲受けと相続税法7条の適用の有無

2 相続税の課税価格
(48) 代償分割により取得した価額弁償金に係る課税価格の計算及び小規模宅地特例の適用

3 債務控除
(49) 被相続人の生前においてされた借地契約解除の意思表示により負うこととなった建物収去・土地明渡に係る債務が債務控除の対象となるとされた事例

4 財産評価
(50) 変額個人年金保険契約の被保険者死亡後における死亡給付金受取人による支払期間36年の年金方式指定と「有期定期金」で「残存期間が35年を超えるもの」該否

5 更正の請求
(51) 「相続により取得した財産についての権利の帰属に関する訴え」(相続税法施行令8条1号)は、権利の存在を前提としたその帰属に関する訴えに限られるとした事例


第6 登録免許税関係

1 課税標準
(52) 原処分庁認定の登録免許税の課税標準(土地の価額)が類似の固定資産課税台帳の登録価格を基礎としたものとはいえないとして、還付の通知をすべき理由がない旨の通知処分を取り消した事例
(53) 固定資産課税台帳に登録された価格がなく、類似不動産が存在しない土地の登録免許税の課税標準の額の算定


第7 徴収関係

1 詐害行為の取消
(54) 生命保険金受取人を滞納会社から被告会社に変更したことは詐害行為に当たるとした事例

2 第二次納税義務
(55) 滞納会社の取締役兼株主が解散に際して退職慰労金として金員の支給を受けたことが徴収法34条にいう「残余財産の分配」に当たるとした事例
(56) 徴収法35条を適用した第二次納税義務の納付通知書を請求人に発した日における、請求人の所有する株式の価額は零円であるとして、納付告知処分を取り消した事例
(57) 貸借対照表の金額をもって株式の価額を算定するのは相当ではないとして、第二次納税義務(徴収法35条)の納付告知処分が一部取り消された事例
(58) 滞納会社が唯一の株主に対して行った剰余金の配当が徴収法39条にいう「第三者に利益を与える処分」に当たるとした事例
(59) 滞納者から請求人に対する財産分与は無償譲渡等の処分(徴収法39条)に当たらないとした事例

3 差押・取立
(60) 通則法52条4項に規定する「なお不足があると認めるとき」になされたものとは認められないとして差押処分が違法とされた事例
(61) 差し押さえた動産は滞納法人に帰属する財産でなかったとして、差押処分が取り消された事例
(62) 遺産分割前の共有不動産の滞納者持分の差押えを原因とした滞納者を共同相続人とする所有権移転登記等の嘱託の適否(共有持分を対象とした差押処分の効力の範囲)
(63) 民法94条2項の類推適用により土地の共同相続人は、当該土地を差押えた国に対し、滞納者が当該土地の所有権を単独相続していないことを対抗できないとした事例
(64) 相続人不存在の滞納者Aの債権者代位権に基づくY相続財産特別代理人に対する共有者全員持分全部移転登記抹消登記請求が認容された事例
(65) 供託金還付請求権の取立権は、それを差し押さえた国が有しているとした事例


第8 不服申立・訴訟関係

1 訴訟要件
(66) 最高価申込者決定に基づく手続の続行の停止を求める申立には理由がないとした事例(「重大な損害を避けるため」(行政事件訴訟法25条2項)の充足の有無)
(67) 買受代金が納付された公売処分の無効確認を求める訴えが不適法とされた事例
(68) 売却決定の差止めを求める訴えが「重大な損害」を生ずるおそれについて証明がないとして却下された事例(適法に裁決取消の訴えを提起した者が裁決の無効確認を求める訴えの適否)

2 主張
(69) 賦課処分の違法性を滞納処分(差押処分・配当処分)の取消訴訟において取消事由として主張することの許否
(70) 源泉所得税納税告知処分を受けた者が法定納期限後に同処分の起因とされた法律行為の錯誤無効を主張して同処分の適否を争うことができるとした事例(錯誤成否の審理方法)


総目次

判示事項等索引

ISBN:9784754727659
出版社:大蔵財務協会
判型:A5
ページ数:1120ページ
定価:5300円(本体)
発行年月日:2020年05月
発売日:2020年06月05日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KFFD
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:LNU