出版社を探す

無機固体化学 構造論・物性論

著:吉村 一良
著:加藤 将樹

紙版

内容紹介

(「まえがき」より抜粋)
本書は,基礎的な化学の学習を一通り終えた学部学生を念頭に,より専門的な物性化学,固体化学について,初学者が学習するための手引きとなる内容をまとめたものである.
無機化学は,元来,金属や鉱物などの無機固体物質を研究対象にし,それらの性質,構造や物質相互の反応を研究する学問であり,炭素を中心とする生物・生命由来の有機物質を対象にする有機化学と相補的な学問であった.ところが,半導体やセラミックスに代表されるような無機化学工業・産業の発展とともに,その守備範囲は物理化学,固体物理学,結晶化学などと相互に関連しながら拡大し,さらには錯体化学,有機金属化学,生物無機化学,無機物性化学など,従来の無機化学には収まらなかったものまで含まれるようになった.学問の統合的発展という意味では誠に喜ばしいことであるが,一方で,初学者にとっては何から学べばよいのか途方に暮れることにもなりかねない.
 そこで,初学者が固体化学や物性化学の分野で研究活動を行うに至るまでの必要な概念や知識を改めて洗い出し,大学教養レベルの無機化学と,専門分野の橋渡しになるような学習書を作ろう,というのが,本書における著者らの最大の目標である.もちろん,紙数の都合上全てを盛り込めたわけではないが,初学者が理解しやすいようにテーマを取捨選択し,さらに本書読了後の発展的な学習への導入にも配慮したつもりである.

目次

目 次
第1章 化学結合と電気陰性度
1.1 固体における化学結合
1.2 電気陰性度の均等化原理
1.3 化学結合のイオン結合性,共有結合性
1章 参考文献

第2章 イオン結合性結晶の基本原理
2.1 電気的中性原理
2.2 ポーリングの静電原子価則(ポーリングの第2原理)
2.3 イオン半径比則(ポーリングの第1原理)
2章 参考文献

第3章 固体の熱化学
3.1 マーデルングエネルギー
3.2 格子エネルギーのモデル
3.3 ボルン-ハーバーサイクル
3.4 熱化学的現象と格子エネルギー
3.5 量子論から見た固体エネルギー論
3章 参考文献

第4章 固体結晶の熱力学と平衡状態図論
4.1 系,相,成分
4.2 ギッブスの相律
4.3 相の平衡条件と自由エネルギー組成曲線
4.4 平衡状態図論と平均場近似:正則溶体モデル
4.5 液相-固相の相平衡:溶体の熱力学
4.6 固相の相平衡:相分離現象
4.7 相分離と共晶系:計算機シミュレーションによる平衡状態図
4.8 包晶反応と中間相の生成
4.9 不変系反応と平衡状態図
4.10 三元系平衡状態図
4.11 ブラッグ-ウィリアムズ近似の応用例:秩序・無秩序相転移
4章 参考文献

第5章 固体の結晶構造と構造因子
5.1 固体の結晶構造と対称操作
5.2 結晶構造パラメーター
5.3 結晶面による回折とブラッグの式
5.4 逆格子と構造因子
5.5 構造因子の計算例と消滅則
5章 参考文献

第6章 結晶の構造化学
6.1 単体の構造
6.2 最密充填構造とその空隙
6.3 MX型構造
6.4 MX2型構造
6.5 MX3型,M2X3型構造
6.6 複合化合物
6章 参考文献

第7章 格子欠陥 ―静的な格子欠陥―
7.1 ゼロ次元的な静的格子欠陥
7.2 転位-一次元的格子欠陥-
7.3 積層欠陥-二次元的面欠陥-,結晶粒界・ボイド-三次元的欠陥-
7章 参考文献

第8章 動的な格子欠陥としての格子振動
8.1 原子の熱運動:格子振動
8.2 固体中の弾性波としての格子振動
8.3 固体中の素励起としての格子欠陥(フォノン)
8章 参考文献

第9章 拡散 ―固体中の原子の運動―
9.1 フィックの第1法則
9.2 拡散の機構
9.3 自己拡散および相互拡散
9.4 フィックの第2法則と俣野の修正式
9.5 真の拡散係数の求め方
9章 参考文献

第10章 相転移の熱・統計力学と量子論的記述
10.1 相転移現象
10.2 規則・不規則転移
10.3 電子状態の相転移
10.4 相転移の現象論:ランダウ理論
10章 参考文献

著者略歴

著:吉村 一良
吉村一良(よしむらかずよし)
1958年長野県に生まれる
1981年京都大学工学部卒業
1983年京都大学大学院工学研究科修士課程修了
1986年京都大学大学院工学研究科博士後期課程研究指導認定退学
1986年福井大学工学部応用物理学科助手
1988年京都大学理学部化学科助手
1993年京都大学理学部化学科助教授
2002年京都大学大学院理学研究科化学専攻教授現在に至る
その間,
1996年米国マサチューセッツ工科大学物理学教室客員研究員
1998年米国イリノイ大学(アーバナ・シャンペーン校物理学教室) 客員助教授
2000年東京大学物性研究所客員助教授(常勤,併任)
2011年東京大学物性研究所客員教授(常勤,併任)
2013年より2016年まで京都大学低温物質科学研究センター長(併任)
2016年より京都大学環境安全保健機構副機構長ならびに(附属) 物性科学センター長(併任)
工学博士
専門分野:無機固体物性化学,物性物理学,磁性と超伝導
著:加藤 将樹
加藤将樹(かとうまさき)
1968年大阪府東大阪市に生まれる
1990年京都大学理学部化学科卒業
1992年京都大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了
1994年京都大学大学院理学研究科化学専攻博士後期課程中退
1994年京都大学理学部化学科助手
1995年京都大学大学院理学研究科化学専攻助手(大学院重点化による)
2004年同志社大学工学部機能分子工学科助教授(2007年准教授に職名変更)
2008年同志社大学理工学部機能分子・生命化学科准教授(学部,学科改組による)
2011年同志社大学理工学部機能分子・生命化学科教授現在に至る
その間,
2015年英国エディンバラ大学客員研究員
2018年より同志社大学リエゾンオフィス所長
博士(理学)
専門分野:固体化学,物性化学

ISBN:9784753635016
出版社:内田老鶴圃
判型:A5
ページ数:284ページ
定価:3800円(本体)
発行年月日:2019年11月
発売日:2019年11月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:PNK