思惟の道としての現象学
超越論的媒体性と新たな哲学の歩み
著:新田 義弘
内容紹介
現象学の創始者フッサールが生誕150年を迎え、世界中で現象学そのものの新たな見直しが進められています。本書はその現象学のわが国における第一人者の最近の思索と活動を集大成した注目の哲学書です。
著者は「超越論的媒体性」という概念を提唱したことで世界的に知られています。フッサール、ハイデガーといった先人たちの営為を引き継ぎ紹介するだけでなく、現代思想・哲学の最先端を踏まえてその問題点を指摘、さらに彼ら自身気づいていなかった可能性をうがち発展させ、新しい哲学へと生まれかわらせようとしている。最前線で思考しつづける、現代では稀となった本当の哲学者です。
本書では、フッサールが始めて構想して以来の現象学の問いと方法と思索の深まり、そして変貌の様子を明快にあとづけたうえで、現象学そのものがひとつの生き物のように変容、成長していくさまを「思惟の道」としてとらえ、それを現代世界のありように照らしてさらに変容・発展させていくことが哲学の「知の責任性」だと説きます。
ハイデガーの「顕現せざるものの現象学」、フィヒテの「像」の哲学に隠されていた可能性をおしひらき、「超越論的媒体性」を軸にした新しい「生命の哲学」を構想する。そのとき、「死」「他者」といった古くからの問題に新しい道が開かれ、西洋起源の哲学が西田幾多郎、井筒俊彦といった東洋思想と出会い、さらには真摯な宗教や芸術がいきづく領域へと限りなく近づき、まったく異なる世界と生命のありようまで垣間見せてくれる。スケールの大きい、未来へ向けた書物だといえましょう。
目次
■第一部 超越論的媒体性とはなにか
第一章方法の事象回帰の運動 フッサールの現象学のたどった道
第二章反省理論からの解放 自己意識の現象学の課題
第三章超越論的媒体性としての自覚
■ 第二部 知の像性と生命性
第四章知の像性と仮象の発生
第五章断想 他者と死
第六章フッサールとハイデガーのあいだ 「視象性」をめぐる問いの往還
■ 第三部 知の帰属性と責任性
第七章知の責任性と生の根本気分
第八章知の自証性と世界の開現性 西田幾多郎と井筒俊彦
第九章行為的直観の現象学的究明 芸術・宗教・哲学の交差域への問い