歌集『三千世界を行く船』
著:小谷 博泰
紙版
内容紹介
収録歌より
朝焼けの窓あけて見るベランダに夢の続きのような鬼百合
仁王門の仁王は何をいかりおる春爛漫とやがて夕ぐれ
いつになく寂しい春だ田螺など鳴いていないかどぶ川のぞく
ハロウィンがすんで霜月はるかなるミサの歌声が風に聴こえる
帝国の滅んだのちの港町マリアの宿が赤く灯りて
クリスマス・イブのカフェにて引き当てた異世界旅行の片道切符
人生についの日はあり一輪の桜が咲いた今日の青空
梅雨はやくあけてかんかん照りの日の道に子どものわれがふりむく
城あとの池のほとりに人おらず止んですぐ降る大粒の雨