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ロシアドイツ人

移動を強いられた苦難の歴史

著:鈴木 健夫

紙版

内容紹介

想像を絶する悲惨な体験を記憶し続けるために——

18世紀末、新天地を求めロシアに渡り農業で繁栄したドイツ人移民たちはその後、ロシアの体制変化の中で権利を剥奪されていく。
飢饉と疫病、強制移動、強制労働など、相次ぐ悲惨な出来事を生き抜き、やがて世界各国へ再移住していった人々の姿を、近代ロシア民衆史研究に身を捧げてきた歴史家が鮮やかに描き出す。

権力に翻弄されながら悲劇を生き抜いていった不屈の民の息遣いが、当時の文献や新聞記事、手紙、世界各国に散った子孫たちの証言によって浮かび上がる、歴史研究の精華。


他民族の社会への移住と受容・同化、戦争における民族問題、難民・飢餓にたいする国家の対策と国際支援、強制移住と強制労働、再移住先を探す国際的交渉、苦境からの脱出といった問題を潜り抜けてきた彼らの経験から、我々は現代への歴史的メッセージをどれだけ引用し得るのか、自らの知恵が厳しく試されている。——本文より

目次

総説 「移動を強いられた民」ロシアドイツ人
序説 ドイツからロシアへの移住(ヴォルガ地方、南ロシア)——一八世紀末—一九世紀初頭

第Ⅰ部 ロシアの歴史のなかに生きる——帝政・世界大戦・革命・飢饉・圧政
 第二章 帝政期ヴォルガ下流域におけるドイツ人入植地の社会経済生活
 第三章 第一次世界大戦とロシアドイツ人——忠誠・従軍・捕虜・土地収用・強制移住
 第四章 ロシア革命・内戦とロシアドイツ人——マフノ軍・赤軍と戦う
 第五章 ヴォルガに鳴り響く弔鐘——一九二一—二二年飢饉とドイツ人移民
 第六章 アンナ・ヤウクの生の軌跡——戦争・革命・飢餓・ドイツ移住
 第七章 強制移住(一九四一年)と強制労働(労働軍)——体験者の証言

第Ⅱ部 苦境からの脱出——国外移住
 第八章 北アメリカへの移住——合衆国北西部の甜菜栽培
 第九章 南アメリカへの移住——アルゼンチン移住当初のロシア的共同体秩序
 第十章 スターリン体制を逃れて中国ハルビン、そして南北アメリカへ——アムール川、ウスリー川を越えて
 [補説] 満洲の異文化社会に生きたリップハルト家一族
 第十一章 祖国ドイツへの移住——帝政期、ソ連およびソ連邦崩壊以後

■ おわりに
■ あとがき
■ 初出一覧
■ 史料・参考文献
■ 索引
■ Danksagung
■ Inhaltsverzeichnis

著者略歴

著:鈴木 健夫
早稲田大学名誉教授。著訳書に『帝政ロシアの共同体と農民』(早稲田大学出版部)、『近代ロシアと農村共同体―改革と伝統』(創文社)、『近代ヨーロッパの情熱と苦悩』(共著、中公文庫)、『ヨーロッパ人の見た幕末使節団』(共著、講談社学術文庫)、ゲルマン/ブレーヴェ『ヴォルガ・ドイツ人 : 知られざるロシアの歴史』(共訳、彩流社)などがある。

ISBN:9784750516806
出版社:亜紀書房
判型:A5
ページ数:544ページ
定価:5600円(本体)
発行年月日:2021年03月
発売日:2021年03月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:KC