日本語学習は本当に必要か
多様な現場の葛藤とことばの教育
編著:村田 晶子
編著:神吉 宇一
内容紹介
2019年に「日本語教育の推進に関する法律」が公布、施行され、日本語教育に関する注目が高まっているが、「日本語は本当に必要なのか」という本質的な問いについて、私たちはどれだけ考えているのだろうか。本書では、大学の英語学位生、理工系留学生、技能実習生、介護士、夜間中学や地域の日本語教育に携わる人々など、様々な現場の葛藤と課題を明らかにし、ことばの学びの意味の重層性を浮き彫りにし、未来のことばの教育の可能性を考えていく。
目次
はじめに
第1章 日本語学習は本当に必要か――多様な現場の葛藤とことばの教育[村田晶子・神吉宇一]
1.日本語を「教える」ことに対する批判的な振り返り
2.時代の変化と日本語を「学ぶ」ことの意味の揺らぎ
3.本書の各章の紹介――現場の人々の自問自答・葛藤・迷い
4.おわりに――未来のことばの教育に向けて
第2章 英語学位生にとっての「日本語」というグレーゾーン――学生たちの4年間の葛藤と変容[村田晶子]
1.はじめに
2.英語学位生にとっての言語的トランジションの難しさ
3.調査について
4.学生たちの4年間の葛藤と変容
5.未来に向けて
第3章 エリート教育の葛藤――日英ハイブリッドプログラムの抱える課題をどう乗り越えるか[河内彩香]
1.はじめに
2.Aプログラム概要――日本語で高度な専門性を獲得するエリート教育
3.インタビュー調査の概要
4.理系教員が感じているプログラムの問題
5.留学生が感じたプログラムの問題とかれらのサポートネットワーク
6.「英語環境から日本語環境へのトランジション」問題はどのように解決できるか
7.おわりに――日本語教育関係者はどのような支援ができるか
第4章 理系英語学位留学生の就職活動の葛藤[長谷川由香]
1.深刻な理系人材の不足
2.日本企業が理系留学生にもとめる日本語力
3.理系留学生への日本語教育
4.理系留学生の就職活動の葛藤
5.おわりに――日本語教育関係者に何ができるのか
第5章 就労の日本語教育は本当に必要なのか――いわゆる「業務」と日本語の関係について考える[神吉宇一]
1.社会的背景と本章の問題意識
2.調査について
3.分析
4.共生社会のための日本語教育とは
5.今後の世界とことばの教育
第6章 就労現場で学ぶべきは「介護の日本語」なのか――技能実習生にとってのことばと学習[小川美香]
1.外国人介護人材をめぐる背景
2.介護の実習生受け入れ現場の文脈と実践
3.介護の実習生受け入れ現場における当事者の声
4.総合的な考察
5.ことばの教育の未来
第7章 多文化共生社会にとって――地域の日本語は本当に必要か[中川康弘]
1.問題の所在と提起
2.「共生」と「多文化共生」は、同一線上にあるのか
3.多文化共生の土壌となる「社会」とは
4.調査概要
5.調査結果:日本語支援に関する疑問・葛藤
6.考察
7.まとめと今後に向けて
第8章 「夜間中学=日本語学校化」は本当か――夜間中学という場での学びを探る[高橋朋子]
1.はじめに
2.夜間中学の歴史と現状
3.「夜間中学=日本語学校化」なのか
4.F夜間中学と授業実践
5.おわりに
第9章 いったい何のために日本語を教えるのか――アメリカの大学教員による変容的学習の模索[プレフューメ裕子]
1.日本語を学ぶことはキャリアには関係がない学生たち
2.日本に留学したくてもできない学生
3.アメリカの大学における外国語科目の削減
4.狭義の「日本語教育」を超えて学生と対話し、学生たちに伝えたいこと
5.おわりに
第10章 継承語学習をやめることは、挫折なのか[本間祥子・重松香奈]
1.はじめに
2.ある卒業生のストーリー
3.継承語学習をめぐる子どもたちの葛藤
4.おわりに――未来に向けて
第11章 「やさしい日本語より英語でしょ?」――日本の大学生に「やさしい日本語」を通じて伝えたいこと[吉開章]
1.学生からの質問
2.やさしい日本語の背景
3.大学生向けやさしい日本語啓発に取り組んだ経緯
4.筆者がやさしい日本語の講義を通じて若い世代の人々に学んでほしいこと
第12章 テクノロジーは日本語学習をなくすのか[李在鎬]
1.背景
2.テクノロジーの出現が意味するもの
3.言語学習を支援するコンピュータテクノロジー
4.機械翻訳と言語学習
5.言語生成AIと言語学習
6.おわりに――AIと共生する言語教育
おわりに[佐藤慎司]
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