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和解学叢書 6=文化・記憶

想起する文化をめぐる記憶の軋轢

欧州・アジアのメディア比較と歴史的考察

編:浅野 豊美

紙版

内容紹介

ドラマやドキュメンタリー作品など、さまざまな記憶が想起されるメディア環境を舞台に記憶が摩擦し衝突する様相を第2次大戦後から今日に至る、日本・韓国・中国を包摂する東アジアと欧州との比較を通じて論じる。「国民的和解」を醸成する可能性はどこにあるか。

目次

『和解学叢書』刊行に寄せて[浅野豊美/梅森直之/劉傑/波多野澄雄/外村大/土屋礼子]
はしがき 国際和解学研究の現代的意味[浅野豊美]

第Ⅰ部 戦後日本とアジアをめぐる文化交流とメディア

第1章 戦後日本の対外文化交流政策理念の模索と歴史認識問題の起源[浅野豊美]
 はじめに
 1 「平和」と「民主」を基調とするアメリカに向けた文化交流政策の起源
 2 講和条約後の対外文化交流の政治化とアジア諸国民との交流の模索
 3 戦後日本の東南アジアをめぐる文化交流政策と「反省」の問題――「心」の交流の起源としての技術=未来の文化
 4 韓国文化財返還と文化協定による日韓交流再定義の模索
 結論

第2章 歴史の忘却と抵抗の痕――一九六〇年代社会派ドラマの放送中止事件から[丁智恵]
 はじめに
 1 作り出される「愛」と「友情」の物語
 2 時代に鋭く斬り込む社会派ドラマ
 3 ドラマ『若者たち』が描いた在日朝鮮人の差別問題
 おわりに

 コラム・1 戦後日本の戦争体験論と「被害者意識批判」[福間良明]

第Ⅱ部 現代映像作品にみる和解と葛藤

第3章 韓国映画における「総聯系」在日朝鮮人表象と和解[金泰植]
 1 李承晩・朴正煕政権の映画政策
 2 在日朝鮮人の登場する映画の増加
 3 『EXPO70東京作戦』における和解表象
 4 『帰ってきた八道江山』における和解表象
 5 映画『ウリハッキョ』における和解表象
 6 「和解」表象の政治について

第4章 映画にみる日中戦争の記憶イメージとその可能性――国際受賞作への分析を中心に[李海燕]
 はじめに
 1 『未完の対局』(佐藤純彌・段吉順監督、一九八二年)
 2 『紅いコーリャン』(張芸謀監督、一九八七年)
 3 『鬼が来た!』(姜文監督、二〇〇〇年)
 4 『南京!南京!(City of Life and Death)』(陸川監督、二〇〇九年)
 5 『キャタピラー』(若松孝二監督、二〇一〇年)
 6 『ラスト、コーション』(アン・リー監督、二〇〇七年)と『スパイの妻』(黒沢清監督、二〇二〇年)
 おわりに

第5章 「記憶の記憶」時代における日中和解[青山瑠妙]
 はじめに
 1 主旋律のドキュメンタリー制作
 2 対立・友好と和解
 おわりに

第Ⅲ部 現代日本におけるメディアと記憶文化

第6章 NHKスペシャル三〇年における〈和解〉[中山大将]
 はじめに
 1 NHKスペシャルとは
 2 〈和解〉関連番組の抽出方法
 3 抽出番組の内訳と一覧表の用語の説明
 4 抽出番組の数量的概観
 5 〈和解〉を直接扱った番組
 さいごに

第7章 テレビの「八月ジャーナリズム」におけるアジアの表象――放送メディアに媒介される“和解”の契機と課題[米倉律]
 はじめに
 1 「八月ジャーナリズム」の概要
 2 日本人の「被害」の現場としての「アジア」――一九五〇~七〇年代
 3 焦点化された日本の「加害」――一九八〇~九〇年代
 4 「アジア」と「加害」の再後景化――二〇〇〇~一〇年代
 終わりに

第8章 日本社会における戦争と植民地支配の記憶――戦後キネマ旬報ベスト・テン映画の検討[加藤恵美]
 はじめに
 1 集合的記憶の性格
 2 社会的な集合的記憶としての映画
 3 戦争と植民地支配の多様な記憶――キネマ旬報ベスト・テン映画の分析
 おわりに

第Ⅳ部 ヨーロッパとアジアの記憶文化比較

第9章 戦争・ホロコーストと帝国・植民地支配表象をめぐるメディアの正義と和解――ヨーロッパとアジアをまたぐ複眼的視座を求めて[バラク・クシュナー/浅野豊美]
 はじめに
 1 和解の観念
 2 和解を妨害するメディアの構造――排他的物語と記憶メディア
 3 パラダイムを変える必要性
 4 メディアの倫理――和解のための七つの提言
 5 歴史家の倫理と作法
 6 アイディアの実践
 結論

第10章 「ホロコースト・ドキュメンタリー」――記憶と和解[武井彩佳]
 はじめに
 1 ホロコースト・ドキュメンタリーの成立
 2 初期ドキュメンタリーの役割
 3 ドキュメンタリーの新しい潮流
 4 「記憶」の時代へ
 5 冷戦後の「和解」の模索
 おわりに

第11章 記憶・文化・和解――戦後英語圏の映画・ドラマに見る日本イメージの変化[小菅信子]
 はじめに
 1 第二次世界大戦と戦後和解
 2 日本軍捕虜収容所の記録と記憶
 3 アドベンチャーとしての「戦場にかける橋」
 4 文化の衝突の場としての日本軍捕虜収容所
 5 記憶、芸術、和解の文化二〇世紀末以降
 おわりに

 コラム・2 井上ひさしの遺言――「和解」をめぐる二つの作品[成田龍一]

 あとがき

著者略歴

編:浅野 豊美
現職:早稲田大学政治経済学部教授
専門分野:日本政治史、東アジア国際関係史、国際政治学
代表著書:『帝国日本の植民地法制』名古屋大学出版会、2008年
『戦後日本の賠償問題と東アジア地域再編――請求権と歴史認識問題の起源』、慈学舎出版、2013年

ISBN:9784750356310
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:424ページ
価格:4500円(本体)
発行年月日:2023年08月
発売日:2023年08月25日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JPS