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ことばの教育と平和

争い・隔たり・不公正を乗り越えるための理論と実践

他編著:佐藤 慎司
他編著:神吉 宇一
他編著:奥野 由紀子

紙版

内容紹介

本書では、言語教育の目的を言語習得に限定するのではなく、言語を通して次世代を育んでいくことに置き、いかに平和なコミュニティや社会の未来を創造しうるのか、「ことばの教育と平和」の理論的枠組みを提示する同時に教育現場での実践を紹介する。

目次

序章 平和をめざすことばの教育の枠組みを考える[佐藤慎司・奥野由紀子・三輪聖・神吉宇一]
 1.はじめに
 2.平和の定義とことばの教育
 3.平和と国家
 4.コミュニケーションと対話と平和
 5.「ことばの教育と平和」の理論的枠組み
 6.本書の構成

第1部 「ことばの教育と平和」考える編

第1章 シティズンシップとことばの学び――シリア出身の日本語学習者の語りから[市嶋典子]
 1.はじめに
 2.シリアの日本語教育
 3.シリア紛争とシティズンシップ
 4.インタビュー調査の概要
 5.インタビューの結果と考察
 6.結論

第2章 複数の文化・言語の中を生きる子どもたちにとっての「日本語」の意味――平和な社会づくりを目指した「継承日本語教育」[三輪聖]
 1.平和な社会づくりと「継承語教育」
 2.ドイツの「継承日本語教育」の現状と課題
 3.子どもたちに必要なことばの力――ドイツの教育を例に
 4.ヨーロッパの文脈における「継承日本語教育」の実践ツールの紹介
 5.おわりに
 [対談]継承語って継承しないといけないの?

第3章 コミュニケーション論から考える「ことばの教育と平和」――日本における英語の教育はいつまで「英語教育」でなければならないのか[榎本剛士]
 1.はじめに
 2.「コミュニケーション」をどう理解するか:三つのモデル
 3.「出来事」中心のコミュニケーション論がもたらす「平和」への契機
 4.「英語教育」はそもそも「平和」を拒む思考の枠組みなのか?
 5.おわりに:再帰的反省を推進力にして

第2部 「ことばの教育と平和」取り組む編

第4章 自らのコミュニケーションを振り返り、他者にかかわる――Facebookによる日米大学生の交流実践[嶋津百代・佐藤慎司]
 1.はじめに
 2.ことば・文化の教育と平和に関する研究
 3.日米大学生による交流実践:Facebookを用いたコミュニケーション
 4.自らのコミュニケーションを振り返り、他者にかかわるための視点と意識化
 5.おわりに:平和なコミュニケーションとことばの教育、そして未来のコミュニティ形成へ

第5章 戦争当事国の学生と学ぶ貧困問題を題材としたことばの教育――批判的思考力と当事者意識の高まりに着目して[奥野由紀子]
 1.はじめに
 2.批判的思考力と当事者意識
 3.本実践の枠組み
 4.戦争当事国出身者を含む日本語L2および日本語L1の学生との実践
 5.考察
 6.おわりに
 [対談]授業で取り扱っているテーマに乗れない学生が教室にいる場合にはどうしたらいいのか?

第6章 小さなクラスから平和を考える――「貧困」と「いのち」をテーマとした日本語授業の実践[元田静]
 1.はじめに
 2.実践の背景
 3.授業の概要
 4.最終インタビュー
 5.実践の振り返りと教師の足場かけ(scaffolding)
 6.「小さなクラスから平和を考える」ということ
 7.おわりに
 [対談]教室における教師の役割と「中立」であること

第7章 ことばの教育と「歴史教育」――日本語で学び合うナチ時代の負の遺産、次世代につなげるための過去との対話[村田裕美子]
 1.はじめに
 2.実践の背景
 3.授業デザイン
 4.授業の成果
 5.本実践の総括
 6.結びにかえて
 [対談]ドイツにおける日本語の授業で「ナチス」をテーマにすること

第8章 日韓がともに生きるためのシティズンシップを育む――対話・交流型授業実践を通して[森山新]
 1.はじめに
 2.先行研究
 3.日韓大学生国際交流セミナー紹介
 4.実践研究の概要
 5.その他の実践とその成果について
 6.共生に向けたシティズンシップ教育としてのことばの教育

第9章 センシティブなトピックについて議論を重ねる――英語で実施される、交換留学生・学部正規生の混合クラス[山本冴里]
 1.はじめに
 2.センシティブなトピックとは
 3.なぜセンシティブなトピックを扱うか
 4.センシティブなトピックについて議論を重ねる

[コラム]
 1 ドイツの学校制度
 2 ドイツの「政治教育」
 3 国民国家と言語
 4 ケアの倫理
 5 白バラの抵抗運動
 6 ロバーズ・ケーブでの野外実験
 7 Byramの理論に基づいた実践と評価
 8 接触仮説から発展した3つのモデル

 あとがき
 編著者紹介

著者略歴

他編著:佐藤 慎司
コロンビア大学ディーチャーズカレッジ人類学と教育プログラム修了(Ph D)。ハーバード大学、コロンビア大学講師等を経て、現在、プリンストン大学東アジア研究学部University Lecturer。専門は、教育人類学、日本語教育。
[主な著書・論文]
『文化、ことば、教育』(ドーア根理子と共編著、明石書店、2008年)
『かかわることば』(佐伯胖と共編著、東京大学出版会、2017年)
『コミュニケーションとは何か』(編著、くろしお出版、2019年)
『ともに生きるために』(尾辻恵美、熊谷由理と共編著、春風社、2021年)
他編著:神吉 宇一
大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。海外産業人材育成協会(AOTS)、長崎外国語大学を経て、現在、武蔵野大学グローバル学部教授。専門は、日本語教育学、言語教育政策。
[主な著書・論文]
『文化・ことば・教育』(共著、明石書店、2008年)
『未来を創ることばの教育をめざして:内容重視の批判的言語教育の理論と実践』(編著、ココ出版、2018年)
『The Global Education Effect and Japan: Constructing New Borders and Identification Practices( Politics of Education in Asia)』(共著、Routledge、2020年)
「共生社会を実現するための日本語教育とは」(『社会言語科学』24(1)、2021年)
『Open Borders, Open Society?: Immigration and Social Integration in Japan』(共著、Verlag Barb…
他編著:奥野 由紀子
広島大学大学院教育学研究科修了(教育学博士)。横浜国立大学准教授等を経て、現在、東京都立大学教授。専門は、第二言語習得研究、日本語教育学。
[主な著書・論文]
『第二言語習得過程における言語転移の研究――日本語学習者による『の』の過剰使用を中心に』(単著、風間書房、2005年)
『日本語教師のためのCLIL(内容言語統合型学習)入門』(編著、凡人社、2018年)
『超基礎 第二言語習得研究』(編著、くろしお出版、2021年)
『日本語×世界の課題を学ぶ――日本語でPEACE』(編著、凡人社、2021年)
『日本語でPEACE――CLIL実践ガイド』(編著、凡人社、2022年)
『第二言語学習の心理――個人差研究からのアプローチ』(福田倫子・小林明子との共編著、くろしお出版、2022年)

ISBN:9784750355795
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:336ページ
価格:2700円(本体)
発行年月日:2023年04月
発売日:2023年04月27日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:VSL
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:DS