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危機の時代の市民と政党

アイスランドのラディカル・デモクラシー

著:塩田 潤

紙版

内容紹介

近代的な議会政治が最初に誕生したといわれる北欧の島国アイスランド。2008年の金融危機以後、代表制民主主義の正統性が揺らぐなかで勃興した、憲法改正運動とアイスランド海賊党の結成を取り上げながら、市民社会と政党政治の相互作用を解き明かす。

目次

序章 危機の時代とアイスランドの民主主義
 第1節 危機の時代
 第2節 「危機」、いかなる危機か
 (1)代表制民主主義の危機と世界金融危機
 (2)政党の危機
 (3)「危機の運動」
 第3節 アイスランドへの視座
 第4節 研究の位置づけ
 第5節 本書の構成

第1章 先行研究と分析枠組み
 第1節 凋落する政党、動き出す市民
 (1)政党の市民社会からの離脱
 (2)政党と市民のあいだへの視座
 第2節 市民の政治参加を捉える
 (1)脱政党的な政治参加――熟議という方途
 (2)社会運動と政党――運動政党への着目
 第3節 分析視角と手法

第2章 小さな島の、大きな変容――アイスランド金融危機の歴史的文脈
 第1節 クライエンテリズムから新自由主義へ――アイスランド政治の特質
 (1)クライエンテリズム政治
 (2)新自由主義政治
 第2節 アイスランドの金融化/負債化
 (1)漁業の金融化
 (2)日常生活の負債化と格差の拡大
 第3節 鍋とフライパンで蜂起せよ!
 まとめと小括

第3章 アイスランド市民憲法の「失敗」と可能性
 第1節 金融危機から新憲法へ
 第2節 憲法改正の包摂性と敵対性
 (1)包摂性
  a.国民会議
  b.憲法議会/評議会
  c.国民投票
 (2)敵対性
  a.政治的文脈に見る敵対性
  b.新憲法草案に見る敵対性
 第3節 議会の「迷走」と憲法改正の「失敗」
 (1)左派連立政権の誕生と憲法改正過程の制度化
 (2)憲法改正をめぐる攻防
 (3)アイスセーブ問題、二〇一三年政権交代、社会民主同盟の変容
 (4)二階の正統性問題
 第4節 「失敗」の後で
 (1) 社会民主同盟内の活動家たち
 (2) 社会運動団体「立憲社会」の役割
 まとめと小括

第4章 市民熟議とアイスランド海賊党の組織化
 第1節 アイスランド海賊党と二つの運動潮流
 (1)国際的な海賊党運動
 (2)ポスト金融危機のアイスランドにおける諸運動
 (3)「海賊党」ではない海賊党――アイスランド海賊党の特殊性
 第2節 アイスランド海賊党の組織化と憲法改正のための市民熟議
 (1)宙吊りにされた新憲法――アイスランド海賊党形成の環境的条件
 (2)集合的アイデンティティの連続性
 第3節 市民熟議と政党はいかに交わるか
 (1)熟議と政党
 (2)「開かれた民主主義」の実相
 まとめと小括

第5章 路上から議会へ――運動政党、アイスランド海賊党の台頭
 第1節 運動政党とは何か
 第2節 運動政党としてのアイスランド海賊党
 (1)水平的組織構造とデジタル技術の活用
 (2)行動レパートリー
 (3)党内対立
 第3節 アイスランド海賊党の台頭
 (1)運動政党の台頭メカニズム
 (2)ポスト金融危機の政党システム再編
 (3)四党制の衰退
 第4節 反腐敗と民主的改革
 (1)ポスト金融危機の諸運動が示した社会課題
 (2)アイスランド海賊党の言説戦略
  a.診断的フレーミング――反腐敗と反エリート
  b.予示的フレーミング――憲法改正
  c.動員的フレーミング――市民の政治参加の強調
 まとめと小括

第6章 政党政治を動かす市民たち
 第1節 「政党なき民主主義」、孤独な社会、台頭するポピュリズム
 第2節 ポピュリズムとは何か――エルネスト・ラクラウを手掛かりに
 第3節 「下から」のポピュリズム――統治の論理を読み解く活動家たちのまなざし
 (1)新自由主義的統治とポスト金融危機のフロンティア
 (2)民主主義というレンズ
 第4節 「市民的有権者」という新たな主体
 (1)合理主義モデルからの脱却に向けて
 (2)制度政治に介入する「市民的有権者」
 まとめと小括

終章 政党民主主義の根源化――ポスト金融危機のラディカル・デモクラシー
 第1節 ラディカル・デモクラシー
 第2節 アイスランド事例分析のまとめ
 第3節 政党民主主義を根源化すること
 (1)政党を再考する
 (2)政党民主主義の根源化に向けて

 あとがき

 参考文献一覧
 索引

著者略歴

著:塩田 潤
1991年大阪府生まれ、神戸大学大学院国際協力研究科部局研究員、龍谷大学法学部非常勤講師、法政大学キャリアデザイン学部兼任講師。専門は政治学、政党論および社会運動論。神戸大学大学院国際協力研究科博士課程修了。ピサ高等師範学校社会運動研究所研究留学などを経て現職。主な論文に「市民熟議と政党の組織化――アイスランドにおける憲法改正の失敗とその後」(『年報政治学2022-Ⅱ』)、主な訳書にシャンタル・ムフ『左派ポピュリズムのために』(共訳、明石書店)。

ISBN:9784750354996
出版社:明石書店
判型:4-6
ページ数:296ページ
価格:3600円(本体)
発行年月日:2023年02月
発売日:2023年02月28日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JP
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:NH