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危機に対応できる学力

分断化した社会を修復する文化資本と連帯感

著:小宮山 博仁

紙版

内容紹介

コロナ禍で改めて明らかになった社会の格差拡大と分断化。家族形態や文化資本、ハビトゥス、学力をキーワードに今の社会を読み解き、連帯意識を育むメタ認知や非認知能力の役割にも焦点を当てて、危機に対応できる持続可能な社会システムのあり方を探求する。

目次

 はじめに

第1章 教育と経済をめぐる社会的背景――閉塞感漂う平成から危機の令和へ
 1 「生きる力」という用語が出てきた社会背景
 (1)社会・経済の動き/(2)政治の動き/(3)文化の動き
 2 OECDのPISA(ピザ)を考える
 3 危機の対応と「生きる力」について
 (1)グローバル化した社会での感染症の危機/(2)危機を乗り越えるには
 4 平成時代の日本の経済状況
 (1)グローバル化した社会を概観する/(2)平成時代の日本経済の流れ/(3)平成時代の経済政策の概要/(4)閉塞的な経済状況と教育/ (5)日本の今の経済状況
 5 感染症による危機下の生活スタイルの変化
 6 危機下のグローバル化した社会状況

第2章 危機で求められる能力とは
 1 危機と「生きる力」
 2 「生きる力」と学力・能力の関係
 3 過去の学力論をふりかえる
 (1)古くて新しい学力低下論争/(2)広岡亮蔵の学力の三層構造/(3)広岡の学力論の社会的背景/(4)広岡の学力論と現在とのつながり
 4 現代の学力論
 (1)学力を定義する/(2)内発的動機づけと外発的動機づけ
 5 学校での学びの動機づけ
 (1)小学校での学び/(2)中学受験の学び方/(3)高校受験を考える/(4)大学受験を考える
 6 外発的動機づけの勉強で生じる社会現象
 (1)職業/(2)企業規模/(3)所得格差
 7 持続可能な社会と学び
(1)世の中のしくみ/(2)6つの難題に直面する日本

第3章 内発的動機づけの学びと連帯感
 1 連帯感
 2 連帯感と学力
 3 2007年全国学力・学習状況調査で判明したこと
 (1)全体的にみて/(2)地域の規模別調査/(3)都道府県別調査/(4)向上している学力、不足している学力/(5)学習に対する関心・意欲・態度/(6)学力を左右する要因/(7)2007年全国学力・学習状況調査の意義
 4 家族形態を考える
 (1)東北型農村/(2)西南型農村
 5 日本の農村の変貌
 (1)変動激しい1960年代の農村/(2)農業経済の激変/(3)1980年代以降の農村地帯/(4)学歴に関心が向く農村
 6 家族形態は1970年代以降どのように変わったか
 (1)同族結合(東北型農村)/(2)講組結合(西南型農村)
 7 1970年代以降の大都市の変貌
 8 これからの社会で求められる能力

第4章 格差ある分断化した社会
 1 格差ある社会
 (1)格差ある社会の不都合/(2)格差ある社会は何が問題なのか/(3)格差ある社会と学び
 2 戦後の日本の格差ある社会を考える
 (1)階級格差~イデオロギーの対立~/(2)大衆消費社会/(3)大衆消費社会と格差
 3 格差ある社会がなぜ問題なのか
 (1)中間層と格差/(2)三つの格差
 4 学歴社会を考える
 (1)初期の学歴社会論/(2)中期の学歴社会論/(3)1990年代以降の学歴社会論
 5 教育で格差を縮小できるか
 (1)都市と農村の学力格差(1959年・2008年)/(2)都道府県別の学力格差を考える/(3)学力格差を左右する文化資本/(4)教育と再生産/(5)東北6県の経済資本と学力/(6)経済資本が学力に影響する要因
 6 SDGsと格差
 (1)2020年からの学び方の変化/(2)SDGs(エスディージーズ)とは?/(3)「持続可能な開発目標」の四つの分類
 7 学力と地域格差の要因
 (1)東北6県と北陸地方の学力/(2)子どもの育つ居場所/(3)日本の学校制度/(4)学校の教育力

第5章 メタ認知と連帯感
 1 メタ認知とは
 2 メタ認知を活用して算数・数学を解く
 (1)算数(割合)/(2)数学・図形の証明/(3)メタ認知をどのように活用しているか/(4)OECDが考えているメタ認知とは
 3 メタ認知とナルシスト
 (1)ナルシストとは/(2)日本のナルシスト現象/(3)教師はナルシストが多い?/(4)ナルシスト的な教師とメタ認知
 4 メタ認知と世の中のしくみ
 (1)人と自然界の関係/(2)人と社会の関係性/(3)世の中のしくみを知るために
 5 メタ認知とエリート教育
 (1)競争教育を考える/(2)教師から見たエリート教育/(3)エリート教育の弊害/(4)エリート教育と分断化した社会/(5)能力別クラス/(6)同質集団と異質集団/(7)異質を排除する分断化した社会/(8)異質集団でのメタ認知

第6章 危機に対応できる社会システム
 1 タテの序列化とヨコのつながり
 (1)タテの序列化/(2)ヨコのつながり
 2 ヨコのつながりの具体例
 (1)県民性/(2)文化資本の違い:個人的体験/(3)ヨコのつながりと排除
 3 四つの社会システムを考える
 (1)社会システムの4分類/(2)社会システムの4分類と学び方
 4 持続可能な社会システム
 5 分断化した社会を修復する~まとめとして~
 (1)社会を持続させる経済政策/(2)セーフティネットの再構築/(3)文化資本の共有化と連帯感/(4)費用対効果が高い学びの動機づけ/(5)連帯感の再構築/(6)分断化した社会を修復する

 あとがき

著者略歴

著:小宮山 博仁
1949年生まれ。教育評論家。日本教育社会学会会員。放送大学非常勤講師。教育書及び学習参考書を多数執筆。最近は活用型学力やPISAなど学力に関した教員向け、保護者向けの著書、論文を執筆。
著書・監修書:『学歴社会と塾』(新評論、1993年)、『現代教育の常識を疑う』(新評論、1994年)、『塾――学校スリム化時代を前に』(岩波書店、2000年)、『面白いほどよくわかる数学』(日本文芸社、2004年)、『子どもの「底力」が育つ塾選び』(平凡社新書、2006年)、『新聞コラム活用術』(ぎょうせい、2009年)、『「活用型学力」を育てる本』(ぎょうせい、2014年)、『はじめてのアクティブラーニング 社会の?〈はてな〉を探検』全3巻(童心社、2016年)、『眠れなくなるほど面白い 図解 数と数式の話』(日本文芸社、2018年)、『眠れなくなるほど面白い 図解 数学の定理』(日本文芸社、2018年)、『眠れなくなるほど面白い 図解 統計学の話』(日本文芸社、2019年)、『大人に役立つ算数』(角川ソフィア文庫、2019年)、『眠れなくなるほど面白い 大人のための算数と数学』(日本…

ISBN:9784750353531
出版社:明石書店
判型:4-6
ページ数:280ページ
価格:2000円(本体)
発行年月日:2022年02月
発売日:2022年03月01日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JN