時間の解体新書
手話と産みの空間ではじめる
著:田中 さをり
内容紹介
自身の手話習得および育児の体験を踏まえ、マクタガートの時間論や生と死の問題を、ろう者(手話)と産む性の視点から考察することを通して、言語モードとジェンダーの制約から人間の定義と哲学そのものを拡張する試み。
目次
はじめに
第1部 手話と哲学者のすれ違い
1 声と魂の強すぎる結びつき
声と音の原理的な理解
アリストテレスの捉えた魂の仕組み
不安定な生物の分類体系
2 手話-口話論争のジレンマ
転換点
生き方への誇りとアイデンティティ
3 音象徴と図像性
鱗雲と障子紙のまだら
名前の正しさを保証するもの
声の音象徴
手話の図像性
言語の優位性という幻想
4 原始的な言語への曲解
手話と教育
明白な誤訳
不適切な引用による自説の権威化
不適切なレイアウト
曲解の背景
第2部 時間論を手話空間で考える
5 時間はリアルなのか
手話の空間に見るある哲学者の時間
時間という哲学上の謎
時間の実在性にどう切り込むか
時計を読む子ども達
天才数学者の奮闘
マクタガートの時間論の骨子
6 手話の4次元空間
手話の時空間構造
2つのメンタルスペース
マクタガートの各系列を手話の空間に再配置する
7 問題と言語形式の不一致
A系列の矛盾と困難
手話空間におけるA系列とB系列の不自然さ
マクタガートの時間論と言語形態の問題
[コラム] 日本手話のリズム
第3部 生と死の現実を産む性の視点で考える
8 誰のものでもない現実
夢ではない第1の現実
科学的に暴かれる第2の現実
力としての第3の現実
9 死ぬことと生まれること
第4の現実は出産?
出産以外の第4の現実
10 誰かの出産と私の出産、そして死
出産の類型としての死
文献一覧
解説 手話から見えてくる時間の流れと出産[森岡正博]
おわりに
初出情報