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誰のためのテレワーク?

近未来社会の働き方と法

著:大内 伸哉

紙版

内容紹介

コロナ禍でテレワークが進んだが、これは単に働く場所が変わるということだけを意味するのではない。移動しないで働くことは、これまでの働き方の本質に影響するものである。そして、それは私たちの生活も変えることになる。労働法をベースに近未来の働き方を論じる。

目次

 はしがき

プロローグ ある編集者の悩みと決断
  テレワークを始める/コミュニケーションの課題/後輩たちへの思い/家族との関係/デジタルとアナログ/テレワークと労働時間管理/テレワークと健康管理/テレワークとモチベーション/独立へ

序章 テレワークとは何か
 1 テレワークの基本
  「テレ」と「ワーク」の合成語/3つのタイプのテレワーク/誰がテレワークに適しているか/テレワークの実態/テレワークの転機
 2 テレワークの政策
  政府は推進派/働き方改革では脇役/霞ヶ関とテレワーク/新型コロナショックの影響/現在のテレワーク政策/40年の眠りから覚めるか
 3 テレワークはなぜ普及してこなかったか
  テレワーク向きの仕事がない?/テレワークを阻む要因/みえてきた課題/厚生労働省の資料からみたテレワークの課題
 4 テレワークを阻害する働き方・働かせ方
  コミュニケーション/言語化の重要性/成果をどう評価するか/ジョブが不明確な日本の正社員/日本型雇用システムの壁/デジタルトランスフォーメーションの影響/経団連の立場からみる日本型雇用システムの変容

第1章 働く側からみたテレワーク
 1 雇用型テレワークの魅力
  雇用と自営/雇用で働くとはどういうことか/労働者とは誰か/通勤不要のテレワーク/ハラスメントフリー/良いとこ取りの働き方?
 2 監視とプライバシー
  テレワークと監視/テクノロジーの活用/人間の目と機械の目/プライバシーとは/つながらない権利/個人情報の保護/プロファイリング/テレワークと個人情報保護
 3 社員の安全を守るテレワーク
  会社の安全配慮義務/社員は出勤を拒否することができるか/ハラスメント職場での出勤拒否権/テレワーク権/日本型雇用システムと転勤/出勤拒否と給料/テレワークと給料
 4 可能性を広げるテレワーク
  ハンディを乗り越える/妊娠や病気のときもテレワークは味方/育児と仕事の両立/介護離職ゼロをめざして/住む場所に関係なく働ける/テレワークへの反発/乗り越えなければならない壁/居場所がない/元に戻ることはない

第2章 企業からみたテレワーク
 1 オフィスのバーチャル化
  ニューノーマルへの移行/テレワーク義務/在宅勤務の費用/納得したテレワークが大切/オフィスがなくなる/5Gのインパクト/未来の職場
 2 労働時間の管理
  法律の労働時間規制/みなし労働時間制/裁量労働制/高度プロフェッショナル制度/フレックスタイム制
 3 テレワークと健康
  健康管理と労働時間の把握/工場法時代からのレガシーシステム/心配しすぎの法律?/健康配慮義務/自己健康管理を助けるテクノロジー/パターナリズムからリバタリアン・パターナリズムへ
 4 技能の承継
  採用選考も変わる/暗黙知をどのように伝えるか/ベテラン受難の時代/テレワークで新たな発想が生まれるか

第3章 フリーワーカーにとってのテレワーク
 1 会社員は消えていく
  人間は何をして働くのか/棚卸しされるホワイトカラーの仕事/機械化とはどういうことか/雇用保障は幻想?/外部人材の活用/タニタの挑戦/BPOのインパクト/フリーワーカーか会社員か――つきつけられる選択肢
 2 セーフティネットの格差
  保障が手厚い会社員/社会保障面ではどうか/独立すれば保障はどうなる?/副業から独立へ?/公正な保障をめざして
 3 フリーワーカーへの支援
  雇用類似のフリーワーカー/自営型テレワークガイドライン/優越的地位の濫用の禁止/どのようなフリーワーカーを想定すべきか/AIに負けないジャーナリストになるために必要なこと/経済的自立に向けた支援こそ重要
 4 自立を支える公助と共助
  なぜ職業基礎教育の必修化が必要か/オンライン学習とAI教育/労働と教育/間に合うかもしれない/新たな共助の形

第4章 社会にとってのテレワーク
 1 少子高齢社会とテレワーク
  少子高齢化の進行/老後も働く/地方に移住/地方自治体とテレワーク/企業はなぜ副業を制限してきたのか/パラレルワーク
 2 地域社会とテレワーク
  職住一体化/シェアリングエコノミー/知識のシェアリング/フリーワーカーが支える政治/芸能人の政治的発言/自営型テレワークが民主主義を支える
 3 デジタルプラットフォームの効用と危険性
  仕事の仲介/デジタルプラットフォームとは/アマゾンはなぜ成功したのか/人材のデジタルプラットフォームへの規制/究極のビジネスモデルか/AIは新たな支配者か
 4 デジタル社会の落とし穴
  信用はどこから来るのか/信用スコア/HRテックの危険性/BYODの危険性/もう一つのセキュリティ/デジタルデバイドを生まないために

終章 近未来の働き方に向かって
  テレワークへの移行は止まらない/SDGsからみたテレワーク/奪われた場所主権/場所主権の回復/デジアナ・バランスの重要性/呪縛からの解放

著者略歴

著:大内 伸哉
1963年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了(博士[法学])。神戸大学法学部助教授を経て,現在,神戸大学大学院法学研究科教授。主な著書に,『君は雇用社会を生き延びられるか』(明石書店),『人事労働法』『AI時代の働き方と法』『雇用社会の25の疑問』(以上,弘文堂),『デジタル変革後の「労働」と「法」』(日本法令),『労働時間制度改革』『非正社員改革』(以上,中央経済社),『労働法で人事に新風を』(商事法務),『経営者のための労働組合法教室』(経団連出版会),『会社員が消える』(文藝春秋),『君の働き方に未来はあるか』(光文社)等。

ISBN:9784750352039
出版社:明石書店
判型:4-6
ページ数:256ページ
価格:2200円(本体)
発行年月日:2021年05月
発売日:2021年05月31日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBF