出版社を探す

オイラトの民族誌

内陸アジア牧畜社会におけるエコロジーとエスニシティ

著:シンジルト

紙版

内容紹介

牧畜社会において、人人関係(エスニシティ)と人獣関係(エコロジー)が、いかにお互いに影響しあい、いかなる共生の論理を生み出しているのか。内陸アジアに分布するオイラト系牧畜民の間で実施したフィールドワークで得られた経験に基づいて考える。

目次

第1章 めぐりあい:オイラトから人類学へ
 1.1 オイラトという同胞なる他者
 1.2 人類学における転回と連続
 1.3 非定住民という源泉
 1.4 ゾミアという概念
 1.5 集団観という課題
 1.6 本書の構成

第2章 命をいただく:三つの屠畜方法
 2.1 美味しさの歴史
 2.2 慣習法にみる人畜関係
  2.2.1 チンギス・ハーンの大ジャサ
  2.2.2 オイラト法典
 2.3 三種の屠畜方法
  2.3.1 モンゴル式屠畜方法
  2.3.2 イスラーム式屠畜方法
  2.3.3 チベット式屠畜方法
 2.4 優しさの基準
  2.4.1 窒息という方法
  2.4.2 人道的な方法
  2.4.3 窒息させるわけ
 2.5 美味しさの行方

第3章 命をはなつ:セテルという実践
 3.1 自然認識という課題
 3.2 最後の遊牧帝国の末裔
 3.3 セテルのスケッチ
 3.4 セテルは屠られないか
 3.5 セテルは環境にやさしいか
 3.6 牧畜民にとってのよいこと

第4章 幸運を求める:セテル実践の拡がり
 4.1 人畜関係の概観
 4.2 セテルの儀礼と扱い
  4.2.1 セテルの儀礼
  4.2.2 セテルの扱い
 4.3 セテルのようなもの
 4.4 セテルの動態
  4.4.1 セテルの弱化
  4.4.2 セテルの強化
 4.5 セテルのような実践

第5章 万物を横断するヤン:牧畜民の自然観の現在
 5.1 個体性
  5.1.1 個の経験
  5.1.2 個の疎外
  5.1.3 個の強調
 5.2 ツェタルの実践
  5.2.1 ツェタルの輪郭
  5.2.2 ツェタルの生
  5.2.3 ツェタルの死
 5.3 ツェタルの論理
  5.3.1 ?らないわけ
  5.3.2 売らないわけ
  5.3.3 ヤンの観念
 5.4 個体性の再考

第6章 不幸を語る:土地と物を超えた存在であるオボー
 6.1 現実理解のための歴史
 6.2 変わりゆく人と人との関係
  6.2.1 少数派となるネイティブ
  6.2.2 多数派となるオールドカマー
  6.2.3 裕福になりゆくニューカマー
 6.3 土地をめぐる人びとの軋轢
  6.3.1 売国奴だった先祖
  6.3.2 祖国を愛する末裔
  6.3.3 守れたはずの帝国のオボー
 6.4 病が結びあわす過去と現在
  6.4.1 1940年代の熱い病
  6.4.2 文明の敵による病
  6.4.3 帝国の敵による病
  6.4.4 共和国の敵による病
 6.5 不幸の語りを突き動かすもの

第7章 喧嘩をする:牧畜民集団の生成史
 7.1 キルギス族であること
 7.2 モンゴル族であること
 7.3 モンゴル=キルギス人であること
  7.3.1 「十ソムン」という範疇
  7.3.2 モンゴル=キルギスの「モンゴル」
  7.3.3 モンゴル=キルギスの「キルギス」
 7.4 モンゴル=キルギス人の現在

第8章 不和を避ける:もうひとつの共生
 8.1 共生という理念
  8.1.1 共感なき寛容
  8.1.2 民族の共生
  8.1.3 他者の呪力
 8.2 乾親とその論理
  8.2.1 血縁という境界
  8.2.2 文化という境界
 8.3 乾親と幸運の追求
  8.3.1 自我を制限する幸運
  8.3.2 自我を拡大する幸運
  8.3.3 エブグイの回避
 8.4 共生の実際

第9章 民族を横断する親族:牧畜民の集団観の現在
 9.1 親族、民族、生業
 9.2 元モンゴル系と元チベット系諸部族の現在
 9.3 ニェディの契機と機能
 9.4 ニェディにみる親族
 9.5 ニェディにみる民族
 9.6 チベット牧畜社会における集団観の動態

 引用文献
 付録
 あとがき
 索引

著者略歴

著:シンジルト
1967年内モンゴル自治区生まれ
熊本大学大学院人文社会科学研究部教授

【専門分野】
社会人類学、内陸アジア研究

【学歴職歴】
2002年7月一橋大学大学院社会学研究科地域社会研究専攻博士課程修了、博士(社会学)。2003年4月~2005年3月一橋大学大学院社会学研究科助手。2005年4月~2006年3月日本学術振興会外国人特別研究員。2006年4月より熊本大学文学部助教授、2007年4月より同大学准教授、2014年1月より同大学教授、2017年4月より現職。

【主要著作】
『新版 文化人類学のレッスン―フィールドからの出発』学陽書房、2017年;『動物殺しの民族誌』昭和堂、2016年;『アジアの人類学』春風社、2013年;Ecological Migration: Environmental Policy in China (Bern & N.Y.: Peter Lang, 2010)(以上すべて共編著);『民族の語りの文法―中国青海省モンゴル族の日常・紛争…

ISBN:9784750351865
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:284ページ
価格:4200円(本体)
発行年月日:2021年03月
発売日:2021年04月21日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JBCC
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:NH