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公正社会のビジョン

学際的アプローチによる理論・思想・現状分析

編:水島 治郎
編:米村 千代
著:小林 正弥

紙版

内容紹介

政治への不満、ジェンダー間の不平等、雇用不安。絶望感と諦めが充満するなかで、それでも「公正な社会」を実現することは可能か。政治・経済・社会・法の諸側面を融合し討議を重ねてきたプロジェクトチームが、不公正な社会状況を打ち破る新たな秩序を提言。

目次

序文 「公正な社会」に向けて[水島治郎・米村千代・小林正弥]

第1部 公正をめぐる理論と思想

第1章 公正にできることはまだあるか――絶望と分断に抵抗する[川瀬貴之]
 1 はじめに
 2 社会を動かす力:一元論に抵抗する
 3 社会から離れようとする力:アパシーに抵抗する
 4 多様な社会における,共有された公正
 5 おわりに

第2章 公正社会論の思想的展開――ロールズの正義論からコミュニタリアニズムまで[小林正弥]
 1 公正とは何か?:正義や公平・平等との関係
 2 ロールズにおける公正概念と「公正社会」論への発展
 3 リベラルな公正原理と政治的責務論:恣意性の排除と不偏性
 4 コミュニタリアニズム的公正論
 5 統合的公正社会論に向けて:ロールズ解釈とリベラル・コミュニタリアニズム

第3章 多次元的な統合的公正社会理論――協力的公共システムにおける規範的4基準[小林正弥]
 1 統合的公正社会理論における協力的システム
 2 政治哲学の4象限とロールズの2次元的正義論・3次元的公正社会論
 3 4次元的公正社会論における「公正の3理念」
 4 4次元的な「公正な正義」
 5 4次元的公正社会論
 6 公正社会の規範と実証:公正度の向上に向けて

第4章 「社会的公正」をめぐる意識の変容――不公平感の計量社会学[金澤悠介]
 1 はじめに
 2 階層意識としての不公平感
 3 不公平感の意味変容:新たな不公平感の出現?
 4 2000年以降の不公平感の変容
 5 おわりに

第2部 「不公正社会」の現状分析

第5章 「不公正社会」への逆襲なのか――ポピュリズムの政治社会的文脈[水島治郎]
 1 はじめに
 2 拡大するポピュリズム
 3 2つのポピュリズム
 4 社会経済構造の変容と既成政党の衰退
 5 大都市と地方:地域間格差と分断の表出
 6 「置き去りにされた地域」にどう対応するか:日英の旧産炭地域比較
 7 おわりに

第6章 社会的包摂の現在――雇用の不安定化と若者の就労[濵田江里子]
 1 はじめに
 2 福祉国家の再編:社会的排除と包摂
 3 困難な状況に置かれた若者
 4 社会的な包摂に向けた取り組み
 5 おわりに

第7章 家族における平等と包摂――家族と公正[米村千代]
 1 はじめに
 2 家族へのまなざし
 3 家族における不平等
 4 主婦の形成と展開
 5 きょうだい関係における対等性
 6 親子関係の長期化・単身者の増加:包摂と支援
 7 おわりに

第3部 グローバル公正社会の構想

第8章 メコン川流域の開発と市民社会――ラクチェンコーンの活動に注目して[五十嵐誠一]
 1 はじめに
 2 メコン川の開発:ダム建設と商業航行計画
 3 ラクチェンコーンの誕生と沿革
 4 ラクチェンコーンの活動
 5 おわりに

第9章 深刻化する環境問題と食料安全保障――環境的公正と行動経済学的アプローチ[李想・小林正弥]
 1 はじめに
 2 社会の経済発展と環境への影響
 3 環境問題の現状
 4 環境における公正
 5 次の段階の環境問題:食料安全保障についての行動経済学的アプローチ
 6 おわりに

第10章 グローバルな社会サービス供給の模索――イングランドの成人社会的ケアを事例として[日野原由未]
 1 はじめに
 2 人の国際移動の進展と社会サービス
 3 イングランドの成人社会的ケアにおける外国人材
 4 おわりに

第11章 地域統合と社会的公正の新時代――主権国家の特質とAPECの可能性[石戸光]
 1 はじめに
 2 地域統合の特質と社会的公正
 3 主権国家体制についての概観
 4 WTOと地域統合をめぐる社会的公正
 5 社会的公正とAPECの可能性
 6 おわりに

第12章 条約の脱退条項の機能――その発動は公正な国際制度の否定か?[藤澤巌]
 1 はじめに
 2 条約締結を促進する手段としての脱退条項
 3 脱退条項の発動による条約からの解放
 4 条約修正の手段としての脱退条項の利用
 5 国際法上の評価
 6 おわりに

 あとがき
 執筆者紹介

著者略歴

編:水島 治郎
千葉大学大学院社会科学研究院教授
東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了 博士(法学)
〔主要業績〕
『ポピュリズムとは何か――民主主義の敵か,改革の希望か』(中央公論新社,2016年,第38回石橋湛山賞受賞)
『反転する福祉国家――オランダモデルの光と影』(岩波書店,2019年)
『ポピュリズムという挑戦――岐路に立つ現代デモクラシー』(編著,岩波書店,2020年)
編:米村 千代
千葉大学大学院人文科学研究院教授
東京大学大学院社会学研究科博士課程修了 博士(社会学)
〔主要業績〕
『社会学を問う――規範・理論・実証の緊張関係』(共編著,勁草書房,2012年)
『「家」を読む』(弘文堂,2014年)
『よくわかる家族社会学』(共編著,ミネルヴァ書房,2019年)
著:小林 正弥
千葉大学大学院社会科学研究院教授
東京大学法学部卒業
〔主要業績〕
『サンデルの政治哲学――〈正義〉とは何か』(平凡社,2013年)
『コミュニタリアニズムの世界』(共編著,勁草書房,2013年)
『ポジティブ心理学――科学的メンタル・ウェルネス入門』(講談社,2021年)

ISBN:9784750351599
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:312ページ
価格:3800円(本体)
発行年月日:2021年04月
発売日:2021年04月17日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB