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エリア・スタディーズ 59

リビアを知るための60章

第2版

編著:塩尻 和子

紙版

内容紹介

他に類を見ない独特な政治思想を掲げ、42年間にわたり続いたカッザーフィーの独裁体制が崩壊してから9年、待望の改訂新版。予断を許さない内戦状態が続く「カッザーフィー後」の現状と、なお連綿と変わらない風土と人々の姿を、現地からの声も交えつつ紹介する。

目次

 はじめに
 凡例
 リビアと地中海諸国(地図)

Ⅰ リビアの成り立ち――地理・歴史・民族

第1章 リビアの風土――海と砂漠の国
第2章 古代のリビア――「リビアにはすべてのものがある」――ヘロドトス
第3章 トリポリタニア――ライバルはカルタゴ
第4章 地中海の砦 トリポリ――三〇〇〇年を生きた都
第5章 世界遺産の古代都市① レプティス・マグナ――大理石の都
 【コラム1】レプティス・マグナ紹介
第6章 世界遺産の古代都市② サブラータ――モザイクの都
第7章 世界遺産の隊商都市 ガダーミス――砂漠の魔法の入口
第8章 民族運動の狼煙――砂漠のライオン
 【コラム2】イドリース一世――リビア王国の孤独な君主
第9章 フェニキア人の末裔――民族と言語
第10章 リビア人気質――三つの原点
 【コラム3】リビア人意識の形成
 【コラム4】サヌースィー教団

Ⅱ リビアの反政権闘争

第11章 二〇一一年の民衆蜂起――燎原の火のごとく
第12章 革命はいつもベンガジから――リビアの歴史的特徴
第13章 独裁者の死――誰にも知られない砂漠に
第14章 カッザーフィーとは何者だったのか――「アラブの狂人」
第15章 カッザーフィーの生い立ち――遊牧民の誇りのなかで
第16章 カッザーフィーの革命――周到な準備の成果

Ⅲ 国際社会とリビア

第17章 テロ支援国の過去――日本赤軍もカルロスも
第18章 アメリカとの因縁の関係――二〇〇年にわたる確執
第19章 カッザーフィー爆殺未遂事件――高まったカリスマ性
 【コラム5】「アメリカ蛮行の記念碑」での食事会
 【コラム6】女性たちの革命記念日
第20章 国連制裁解除――「バスに乗り遅れるな」
第21章 大量破壊兵器放棄宣言――カッザーフィーの大変身?
第22章 カッザーフィーの後継者は誰か――「あの家族」を継ぐ者
 【コラム7】リビア人小説家、ヒシャーム・マタール
第23章 リビアの若者意識――豊かな国の貧しい意識

Ⅳ 深刻な難民問題

第24章 よりよい生活を求めて――夢のアフリカ連邦
第25章 リビア経由でヨーロッパへ――「中央地中海ルート」
 【コラム8】地中海を渡る難民を撮り続けて
第26章 政変後の労働市場――流入する移民労働者

Ⅴ 砂漠との戦い

第27章 ローマの穀倉――オリーブとオレンジの実る地
第28章 大人工河川計画――砂漠との戦い
第29章 リビアの宗教事情――タブーの表裏
第30章 リビア料理は多国籍料理――ご馳走はクスクス
 【コラム9】手厚い食糧補助金制度
 【コラム10】花嫁衣装は伝統衣装――部族によって異なる色と形
 【コラム11】独自のイスラーム暦と標準時
第31章 教育制度――制服は迷彩服
第32章 女性の活躍――カッザーフィー夫人にならって
 【コラム12】リビア女性の活動再開を祝う
第33章 都市のイメージ――外観より内側という考え方

Ⅵ 天然資源と日本との関係

第34章 注目の石油・天然ガス調査――世界最高級の石油
第35章 日本とリビアの関係史――資源を求めて
第36章 油田開発の公開入札――日本の大きな賭け
第37章 日本からの経済投資――技術開発に期待
第38章 石油生産は国家再建の鍵――リビア経済と石油部門
第39章 経済活動と民兵組織――首都トリポリの真の支配者?
 【コラム13】内陸都市サブハーの風景

Ⅶ カッザーフィー政権の崩壊

第40章 民衆蜂起と独裁体制の動揺――混乱の始まり
第41章 民衆蜂起のきっかけ――それはベンガジから始まった
第42章 反体制組織の誕生と多国籍軍の軍事介入――内戦状態に突入
第43章 トリポリ陥落――カッザーフィー政権の崩壊
第44章 独裁体制の終焉――カッザーフィーの死
 【コラム14】カッザーフィーは誰に殺されたのか

Ⅷ 新生リビアの生みの苦しみ

第45章 暫定政府の成立と混乱――カッザーフィー政権崩壊直後の政治課題
第46章 民兵集団の台頭――新たな危機の始まり
 【コラム15】「真実を知りたい」
第47章 国民議会選挙法の施行――リビア初の自由国政選挙
 【コラム16】国民議会選挙に立候補
 【コラム17】アメリカ総領事館襲撃事件
第48章 移行政府の始動と課題――旧政権関係者の公職追放をめぐって
 【コラム18】新生リビア見聞記(二〇一三年三月)
第49章 イスラーム主義勢力との抗争――新たな危機の始まり
 【コラム19】陶器の町・ガルヤーンを目指して
第50章 ハリーファ・ハフタルの登場――行き詰まる新体制
 【コラム20】ハフタル将軍とは何者か
第51章 東西に二つの政府――軍事的緊張の高まり
 【コラム21】人道的犯罪の露呈――タワルガ避難民

Ⅸ 統一国家再建への期待

第52章 統一政府の樹立に向けて――政治対話の開始
 【コラム22】カッザーフィーの従弟は語る
第53章 「イスラーム国」との戦い――厳しい船出となった国民和解政府
第54章 複数政府体制――困難になる国家再建
第55章 ハフタル将軍と東部政権――有力政治家かそれとも新たな独裁者か
第56章 民主化プロセスの停滞――指導力を発揮できない国民和解政府
第57章 残る植民地支配の後遺症――中東世界に共通する問題
第58章 民衆蜂起の果てのカリスマ待望論――カリスマを排除したものの
第59章 大統領選挙への期待――国家分断の解消に向けて
第60章 新生リビアの安定は可能か――国際社会の支援と介入
 【コラム23】祖国への想い

 参考文献
 リビア略史(年表)
 新生リビア政権の系譜(図解)
 索引

 執筆者紹介
 編著者紹介

著者略歴

編著:塩尻 和子
1944年岡山市生まれ。
東京大学大学院人文社会科学研究科博士課程単位取得退学(博士(文学)東京大学)。
筑波大学教授、同大北アフリカ研究センター長、同大理事・副学長(国際担当)、東京国際大学特命教授、同大国際交流研究所・所長を経て、現在、筑波大学名誉教授。
専門分野は、イスラーム神学思想、比較宗教学、宗教間対話、中東地域研究。
最近の主な著書・論文:「公共宗教としてみたイスラームの世俗性と普遍性」(『ピューリタニズム研究第13号』日本ピューリタニズム学会、2019年)、「イスラーム・ジェンダー論の行方」(『いま宗教に向き合う』第4巻、岩波書店、2018年)、「宗教間対話運動と日本のイスラーム理解」(『宗教と対話――多文化共生社会の中で』教文館、2017年)、「ジハードとは何か――クルアーンの教義と過激派組織の論理」(『変革期イスラーム社会の宗教と紛争』明石書店、2016年)、『イスラームを学ぶ』(NHK出版、2015年)、「初期イスラーム思想における理性主義的人間観と宗教倫理」(『イスラム哲学とキリスト教中世Ⅱ 実践哲学』、岩波書店、…

ISBN:9784750349732
出版社:明石書店
判型:4-6
ページ数:388ページ
価格:2000円(本体)
発行年月日:2020年03月
発売日:2020年04月02日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB