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世界歴史叢書

ブラジルの都市の歴史

コロニアル時代からコーヒーの時代まで

著:中岡 義介
著:川西 尋子

紙版

内容紹介

ブラジルの都市は到来した様々な人々によって建設されており、世界的にも類を見ない特異な経験の地である。フィールド調査と史資料を基に、植民地時代から20世紀前半の移民の時代まで各地に建設された都市の成り立ちをたどり、歴史の変遷も浮きぼりにする。

目次

序章 都市のブラジルへ
 都市の建設が義務づけられた
 大西洋の周縁から――一六世紀
 奥地探検と定住
 砂糖地帯の内陸占有――一七、八世紀
 内陸に浮かぶ定住群島――一八世紀
 宗教ミッションの役割
 辺境の価値づけ――一九世紀
 パイオニアイズム――二〇世紀
 「額縁の都市」「絵画の都市」

第1部 大西洋岸

Ⅰ 低平地の大湿地開発――呼応する丘と湾の景観都市 リオデジャネイロ
 丘の上の都市
 巡礼の道から大湿地を開発
 丘と湾の風景が欧州の視覚世界と呼応
 欧州文化の崇拝から「カリオカダージ」へ
 世界遺産の景観群と丘のファヴェーラ
 「地の記憶」の都市づくり

Ⅱ 海に浸る町――「町」に変える都市施設 サンヴィセンチ
 大きな島の丘のふもと
 流刑者や遭難者が住み着いた
 「町」にする
 起源の町と災害
 再建された「町」
 海岸の町パラチの現在へ

Ⅲ ブラジル「発見」の山と湾、川と丘――キリスト騎士団の箱庭聖地 ポルトセグーロ
 占有の石標
 海辺の交易所
 カピタニアの最初の町
 聖と俗が醸す町の風合い
 「聖地」上町の空間構成
 十字架に見立てたか

Ⅳ サトウキビ農園地帯の中心――母国のミニチュアの自治都市 オリンダ
 都市図のオリンダ
 海岸に三角錐の高台
 ノヴァルジタニアづくり
 リスボンのミニチュア都市
製糖の夢と現実
大農園主の別宅からなる自治都市

Ⅴ ブラジル植民都市のひな型――ルネサンス都市の実験場 サルヴァドール
 「諸聖人の湾」の中
 一六世紀の総督府を今歩く
 町づくりの指令書
 土地に写された規範
 町の外に場所を定める
 居住核+郊外のひろっぱ
 ブラジル植民都市の展開

Ⅵ 州浜の自由都市――寛容に向かい合う水の都 レシーフェ
 異文化の侵攻
 二核構成の海上都市計画
 レシーフェの都市建設
 フリブルゴ――自由都市
 都市の居住分布
 「南のイェルサレム」
 システム境の地

第2部 内陸

Ⅶ 奥地と結ぶ内陸高原――夢追い人が集まる丘の都市 サンパウロ
 内陸高原の二川合流地先の丘
 東西南北へつながる先住民の古道
 奥地探検のパウリスタの町
 町に住み着く構図
 小規模農園と小宮殿の世界
 丘の上のパウリスタ大通り
 地に刷り込まれた遺伝子

Ⅷ 山岳のアライアル――無名の人びとの祝祭都市 オウロプレット
 特徴ある山の景観
 ノマドの採鉱地から始まる
 採鉱地の住まい
 「アライアル」と教会・祭礼
 ファサードだけの都市
 基層としてのアライアル
 鉱山技術による都市空間整備

Ⅸ 点在するファゼンダ――大農場が生んだ自前都市 ポンペウ サンタホーザデヴィテルボ
 内陸に生まれた「ファゼンダ」
 ファゼンダの生活と拠点
 「ファゼンダ内町」の形成プロセス
 都市的機能を備えるファゼンダ
 継起するファゼンダの生活システム
 ファゼンダシステムの都市化

第3部 辺境――南部

Ⅹ ドイツ系移民都市――商業ネットワークの都市 イビラマ
 われらこの地を信じてやってきた
 川の蛇行部に「町の場所」
 道に展開するコミュニケーション
 商業ネットワークと会員共同施設
 一国一城のような土地と住居
 夫婦原理が流れる

XI イタリア移民都市――世界の教会網の都市 ヴェラノポリス
 われら神とともにやってきた
 地形を無視した幾何学的な農村
 守護聖人は本国からもってきた
 教会がかなめの市街地
 変わらぬ住居の空間構成
 家族原理の社会

第4部 奥地

XII 日本移民都市――ミニ国家としての都市 ウライ
 われら新世界に参加す
 「区」と小学校からなる移住地
 日本人にとって市街地とは何か
 すぐに日本人会を結成
 国家原理のコミュニケーション
 日本人会と空間装備
 住むところにこだわらなかった
 親子原理が都市をつくると

終章 「ファゼンダ」――もうひとつの帰結
 パライーバ渓谷の「コーヒーファゼンダ」
 センザーラ付きカーザグランデ
 近代建築の原材料となったカーザグランデ
 〈ドミノ住宅〉の着想
 カーザグランデからの着想
 詩人サンドラールからのブラジル情報
 世界遺産になったのはカーザグランデか
 コルビュジエの理論も他者の着想から
 過去のリメイクのモダニズム

 あとがきにかえて
 図版・写真出典
 参考文献
 索引

著者略歴

著:中岡 義介
1944年、神戸市生まれ。京都大学工学部建築学科卒、同大学院修了。工学博士。地域都市計画家、教育家。福井工業大学、佐賀大学、兵庫教育大学大学院教授を経て、現在、兵庫教育大学名誉教授。その間、京都大学人文科学研究所客員部門講師、中国・中南工業大学客員教授、国立歴史民俗博物館・国立民族学博物館共同研究員等を兼任。2000年から2年間、日本学術振興会サンパウロ研究連絡センター長等として日伯間の学術振興に従事。
主要著書
『空間の原型 すまいにおける聖の比較文化』(共編、筑摩書房、1983)
『奥座敷は奥にない 日本の住まいを解剖する』(彰国社、1986)
『六人家族の中国ノート』(学芸出版社、1989)
『ラテンアメリカ 都市と社会』(分担執筆、新評論、1991)
『マスシティ 大衆文化都市としての日本』(共著、学芸出版社、1991)
『地文学事始 日本人はどのように国土をつくったか』(分担執筆、学芸出版社、2005)
『路地研究 もうひとつの都市の広場』(分担執筆、鹿島出版会、2013)著:川西 尋子
神戸市生まれ。京都教育大学卒、兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科修了。博士(学校教育学)。サンパウロ人文科学研究所特別研究員としてブラジル研究に従事。兵庫教育大学、大阪教育大学、他2大学において小・中・高の教員養成教育に従事。学校教育に比較都市研究の視点を導入するため、ブラジルの都市、日本の城下町および北海道の開拓都市、インドネシア・バリ島の集住など、ならびに諸国の学校・教育の歴史と現状に関する研究をおこなっている。
主要著書
『首都ブラジリア モデルニズモ都市の誕生』(共著、鹿島出版会、2014)
『バリ島巡礼 集住の村々を探る』(共著、鹿島出版会、2016)
『自然科学のためのはかる百科』(分担執筆、丸善出版、2016)

ISBN:9784750349374
出版社:明石書店
判型:4-6
ページ数:408ページ
価格:4800円(本体)
発行年月日:2020年01月
発売日:2020年02月01日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHK
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1KLSB