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シリーズ・学力格差 第4巻〈国際編〉

世界のしんどい学校

東アジアとヨーロッパにみる学力格差是正の取り組み

監:志水 宏吉
他編著:ハヤシザキカズヒコ
他編著:園山 大祐

紙版

内容紹介

韓国、香港、シンガポール、イギリス、フランス、ドイツ、オランダ、計7カ国の「しんどい」地域(低所得層や移民が多く居住する地域)に立地する小学校で、学力格差の問題がどのように解決されようとしているかという国際比較研究を行った成果である。

目次

 刊行にあたって シリーズ・学力格差 全4巻[志水宏吉]
 はじめに[シム チュン・キャット]

序章 東アジアの優等国と欧州の大国の学力格差是正[ハヤシザキ カズヒコ]
 1.社会の変動と学力
 2.本書でとりあげる国々
 3.7つの国の教育の特徴
 4.各国のひとつの「しんどい学校」の実践をえがく
 5.2部構成

第Ⅰ部 各国の教育事情と学力是正策

第1章 シンガポール――落ちこぼれをつくらない都市国家の教育戦略[シム チュン・キャット]
 1.はじめに――「ヒト」だけが唯一の資源であるシンガポールの宿命
 2.国づくりの根幹をなすシンガポールの教育制度
 3.シンガポールにおける学力格差是正策
 4.外国人児童の教育
 5.おわりに

第2章 韓国――政府と自治体はテストの点数向上を目指さない[朴志煥]
 1.トンビが鷹を生めない韓国社会
 2.韓国政府の教育政策
 3.自治体の教育政策
 4.革新教育政策の行方と是正

第3章 香港――潤沢な教育費を投入し、移民の言語能力向上に資する教育政策[石川朝子]
 1.香港の社会と政治経済
 2.香港の教育制度
 3.香港の教育の特徴
 4.香港における学力格差と移民が抱える教育課題
 5.香港における学力格差是正のための教育政策

第4章 イングランド――格差是正は至上命題! 現場に次々とムチうつ保守政権[ハヤシザキ カズヒコ]
 1.イングランドにおける学力格差の是正策
 2.連立政権以後の教育改革の反動
 3.イギリスの貧困と格差
 4.学力格差の是正の成果と学校の目標
 5.ロンドンの学力格差是正
 6.まとめ

第5章 フランス――エリート教育からの転換、大衆化する学校教育に挑む[園山大祐]
 1.政策背景
 2.階層別にみる教育の大衆化
 3.初等教育段階から始まる学力低下と階層間格差
 4.中等教育の大衆化と進路選択にみる格差の固定化
 5.校区間格差是正策「第6次優先教育」の特徴
 6.移民の学業問題
 7.おわりに

第6章 ドイツ――個々への支援を目指す、連邦と州による教育政策[濵谷佳奈]
 1.はじめに
 2.分岐型学校体系に基づく学力格差是正策という矛盾?
 3.教育モニタリングの総合戦略による学力格差是正への挑戦
 4.成績低位層の児童生徒に向けた支援策
 5.おわりに

第7章 オランダ――社会文化的多様性への学校教育の終わりなき挑戦[末岡加奈子]
 1.はじめに
 2.オランダにおける社会文化的多様性と、都市部の貧困問題
 3.移民の背景をもつ子どもの「教育達成」
 4.教育システムと学校教育の特徴
 5.初等教育からの学校選択と児童の「家庭背景」に応じた予算配分
 6.人口動態の多様化に伴う教育優先政策の経緯
 7.おわりに――近年の動向

第Ⅱ部 各国のしんどい小学校はどのようにガンバっているのか?

第8章 シンガポール――世界トップレベルの学力を誇るシンガポールのしんどい学校[シム チュン・キャット]
 1.はじめに――ネイバーフッドスクールの特徴
 2.調査対象マーライオン小学校の特色
 3.調査対象と方法
 4.マーライオン小学校4年生児童のスクールライフ
 5.マーライオン小学校の授業風景
 6.インタビューからみる低学力児童が抱える諸問題
 7.おわりに

第9章 韓国――革新学校づくりと学力保障のジレンマ[朴志煥]
 1.ウリ小学校の置かれた地域的文脈
 2.地域によるウリ小学校へのサポート
 3.民主的な学校文化づくり
 4.体験中心の教育実践
 5.学力保障への取り組み
 6.学力のジレンマ
 7.過程中心教育に対する省察

第10章 香港――学校に関わる全ての人的リソースをパワーに[石川朝子]
 1.移民児童の学力を支える「望海小学校」の取り組み
 2.教職員と保護者の「学力観」をめぐるジレンマ
 3.望海小学校の取り組みの特徴――学校に関係する全ての人で児童の学びを支える
 4.取り組みの結果
 5.調査を終えて

第11章 イングランド――プレッシャーにつぶされない教職員と子どもたち[ハヤシザキ カズヒコ]
 1.タワーハムレット
 2.マルメスベリー小学校と校長のジョアン
 3.スタッフ
 4.スチュワーツクラスの1日
 5.介入と促進
 6.学童保育――朝食クラブと放課後クラブ
 7.コミュニティ・アプローチ
 8.学力格差縮小の成果
 9.イングランドの「いいわけゼロポリシー」

第12章 フランス――基礎学力と「コンヴィヴィアリティ」の育成をめざして[園山大祐]
 1.はじめに
 2.本校におけるフレネ教育と制度主義教育の実践の意味とは
 3.調査地とエッフェル小学校の特徴
 4.エッフェル小学校の授業実践の特徴
 5.授業観察からみえてきたこと
 6.校長先生および教員のインタビューから
 7.求められる学力と学力向上の難しさ
 8.おわりに

第13章 ドイツ――健康な教員が担うインクルーシブな教育実践[濵谷佳奈]
 1.はじめに
 2.ノルトライン・ヴェストファーレン州イグナチオ基礎学校の特徴
 3.イグナチオ基礎学校でのVERA3の結果とその評価
 4.イグナチオ基礎学校にみる学力底上げに向けたカリキュラムと教育実践
 5.児童の成長と分岐型中等教育への進路勧告
 6.おわりに

第14章 オランダ――ロッテルダムの未来を担う子どもたち[末岡加奈子]
 1.はじめに
 2.調査対象と方法
 3.教師と子どもたちの一日
 4.是正策の一つとしての食生活への介入
 5.授業実践
 6.学力テストと中等学校への進学
 7.おわりに

終章 世界を通してみるがんばる教師たち[園山大祐]
 1.はじめに
 2.政策にみる共通点、各国の特徴
 3.欧米にみるポピュリズム化と国際教育調査の与える政策影響への懸念
 4.国際調査(PISA,TIMSS)の結果と7カ国の教育制度との連動性
 5.日本への示唆
 6.おわりに

 おわりに[志水宏吉]
 監修者・編著者 略歴

著者略歴

監:志水 宏吉
所属:大阪教育大学講師、東京大学助教授などを経て、現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門:教育社会学・学校臨床学。主な著書:『「つながり格差」が学力格差を生む』亜紀書房、2014年。『マインド・ザ・キャップ!』(高田一宏と共著)、大阪大学出版会、2016年。
他編著:ハヤシザキカズヒコ
所属:福岡教育大学准教授。専門:教育社会学、人権教育。主な著書・論文:『「往還する人々」の教育戦略』(共著)明石書店、2013年。「英米のコミュニティ・スクールと社会的包摂の可能性」『教育社会学研究 第96巻』、2015年。
他編著:園山 大祐
所属:大阪大学大学院人間科学研究科教授。専門:比較教育社会学、移民教育研究。主な著書:『日仏比較 変容する社会と教育』(編著)明石書店、2009年。『岐路に立つ移民教育』(編著)ナカニシヤ出版、2016年。『フランスの社会階層と進路選択』(編著)勁草書房、2018年。

ISBN:9784750348803
出版社:明石書店
判型:A5
ページ数:336ページ
価格:2800円(本体)
発行年月日:2019年09月
発売日:2019年09月14日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNA