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中国における正史の形成と儒教

著:渡邉義浩

紙版

内容紹介

中国の正統な歴史書である「正史」は、いつ、どのようにして、「儒教」のくびきを脱したのか。司馬遷の『史記』はそもそも思想を語る書だった。しかし、やがて、史書として認識される。「三国志」研究の第一人者である著者は、「正史」と「儒教」の抜き差しならない関係を、時には推理小説のようにひもとき、またある時は大河小説のように活写していく。事実を記すだけでは収まらない中国史学が、国家の正統性や勧善懲悪の考えを取り込みながら、独自性と独創性を秘めることを大胆に考察する本書。西欧の近代歴史学とは異なる歴史学の位相、「ワタナベ 史学」の到達点がここにある!!

目次

第一章 『史記』と『漢書』――『春秋』と『尚書』の継承
 1  司馬遷の『春秋』観
 2 「史の記」と『春秋』
 3 『漢書』と『尚書』
 4 『漢書』と「古典中国」

第二章 『三国志』と『続漢書』――正統の所在と鑑としての歴史
 1 二つの予言と蜀学
 2 西晉の正統性と倭人伝
 3 鑑としての歴史
 4 「古典中国」を鑑に

第三章 「史」の宣揚と正統――『春秋左氏経伝集解』と『漢晉春秋』
 1 杜預の左伝解釈
 2 左伝体の尊重
 3 史論と蜀漢の正統
 4 正と統

第四章 「史」の自立と「記言の体」――『三国志』裴松之注
 1 史書の濫造
 2 史学独自の方法論
 3 物語と歴史
 4 煩悶する裴松之

第五章 史学と文学――范曄と劉勰
 1 史書の文学性
 2 范曄の文章論と李賢注
 3 劉勰の文学論
 4 劉勰の史学論

第六章 正史の成立――史学と権力
 1 沈約の南朝意識
 2 皇帝権力と史書
 3 御撰『晉書』の特徴
 4 『隋書』経籍志の史学論

第七章 史学の権威と研究法――唐代の史書と『史通』
 1 「南北史」の大一統
 2 『史記』三家注
 3 『史通』の特徴
 4 劉知幾の史学研究法

終 章 中国史学の展開と儒教

さらに深く知りたい人のために

あとがき

著者略歴

著:渡邉義浩
中国史学者。早稲田大学理事・文学学術院教授。1962年生まれ。東京都出身。文学博士。専攻は「古典中国」学。著書に『後漢国家の支配と儒教』(雄山閣出版)『三国政権の構造と「名士」』(汲古書院)『三国志よりみた邪馬台国』(同)『「三国志」の政治と思想』(講談社選書メチエ)『儒教と中国─「二千年の正統思想」の起源』(講談社選書メチエ)『三国志の舞台』(山川出版社)『関羽─神になった「三国志」の英雄』(筑摩選書)『三国志─演義から正史、そして史実へ』(中公新書)など。

ISBN:9784657210180
出版社:早稲田大学出版部
判型:4-6
ページ数:280ページ
定価:1800円(本体)
発行年月日:2021年12月
発売日:2021年12月20日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:NHF
国際分類コード【Thema(シーマ)】 2:1FPC