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シリーズ・現代の福祉国家

在宅育児手当の意義とあり方 17

自治体による新たな現金給付とその可能性

著:安藤 加菜子

紙版

内容紹介

少子化対策が喫緊の課題とされて久しいが、子どもの世話を専ら行う人は経済的に不利な立場に陥りやすい。本書は、日本の一部自治体で導入される在宅育児手当に注目し、その意義やあり方を探る。働き方を問わない、乳児を自ら世話するすべての親への経済的支援はいかに可能か。北欧の事例との比較、自治体の取組過程やケアの倫理の実践的応用といった視点から、「親による世話」に現金を給付する在宅育児手当を総合的に捉える。

目次

序 章 「家族内での世話」を政策は支援できるのか
 1 在宅育児手当への注目
 2 家族の世話の是非
 3 乳児を対象とした在宅育児手当の意義や実態
 4 ケア,政策,乳児と在宅育児手当の定義
 5 規範的な議論と記述的な議論を行う必要性
 6 学術的意義と社会的意義の追求
 7 家族について論じきれていないこと
 8 各章の内容


 第Ⅰ部 在宅育児手当をめぐる社会的状況

第1章 在宅育児手当の政策的位置付けと研究の背景
 1 在宅育児手当が子育て支援政策のなかで占める位置
 2 在宅育児手当への関心につながる三つの必要性
 3 子育て支援政策におけるジェンダーへの配慮
 4 2000年以前の在宅育児手当の事例

第2章 在宅育児への普遍的な経済支援を構想することの難しさ――両立支援政策が想定した親のニーズと「働き方の葛藤」
 1 働き方についての考え方の変化
 2 「働き方の葛藤」について
 3 両立支援政策における親のニーズと「働き方の葛藤」
 4 親の政策ニーズの把握のされ方
 5 把握されていた政策ニーズと「働き方の葛藤」との関係
 6 「乳児を世話する親への普遍的な経済支援」を構想する難しさ

第3章 自宅での子どもの世話と現金給付――日本と諸外国との違い
 1 諸外国での乳児の親への現金給付と0歳児保育の利用状況
 2 北欧の選択的な在宅育児に対する給付
 3 日本の在宅育児手当
 4 日本の事情を踏まえた議論の必要性


 第Ⅱ部 日本における在宅育児手当の事例

第4章 在宅育児手当を受け取ることの意味――鳥取県内6町の事例から
 1 「親による子どもの世話を支援する政策」の現状と課題
 2 「親による世話」への支援の普遍化に伴う二つの課題
 3 在宅育児手当の正当性は確保されるのか
 4 鳥取県内6町の在宅育児手当
 5 地域の母親たちの実情と在宅育児手当の意義
 6 他事例の検討・行政の認識・実施上の課題

第5章 在宅育児手当を導入した自治体の特徴――母親の働き方と保育
 1 在宅育児手当を導入した自治体全般に注目する理由
 2 在宅育児手当を導入した自治体の特徴に関する仮説
 3 仮説検証のための比較分析
 4 在宅育児手当を導入した自治体の特徴
 5 地域の特徴からみる在宅育児手当の意義

第6章 行政側は在宅育児手当の意義をどう捉えていたのか――インタビューと要綱の分析
 1 職員や自治体組織の認識に注目する理由
 2 自治体の政策プロセスの分析
 3 在宅育児手当の導入プロセス
 4 研究対象とした事例
 5 調査と分析の結果
 6 在宅育児手当に想定される複数の意義

第7章 在宅育児手当導入のポイント――事例から学べること
 1 在宅育児手当の導入過程に注目する理由
 2 合意調達の重要性
 3 関係者ごとの合意調達
 4 社会一般からの合意調達
 5 何が在宅育児手当の導入に影響を与えるのか


終 章 在宅育児手当の意義と実施上の課題
 1 日本の在宅育児手当についてわかったこと
 2 「乳児を世話する親への普遍的な経済的支援」なのか
 3 本書で論じきれなかったこと
 4 本書に残る課題

参考文献一覧
初出一覧
あとがき
索  引

著者略歴

著:安藤 加菜子
2024年3月現在
京都大学大学院人間・環境学研究科人文学連携研究者
京都大学学際融合教育研究推進センター政策のための科学ユニット研究員

ISBN:9784623097043
出版社:ミネルヴァ書房
判型:A5
ページ数:304ページ
定価:5500円(本体)
発行年月日:2024年03月
発売日:2024年04月09日
国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS