実在した倭京
藤原京先行条坊の研究
著:新庄 宗昭
内容紹介
五〇年にわたる研究史を俯瞰して、倭京実在論に迫る。
藤原宮の載る地層を剥がすと、街路網と生活痕跡が現れた−−
本書では、この下層の街区を、藤原宮・京に先在した、斉明朝期に遡る条坊都市「倭京」であり、その中枢宮殿は「浄御原宮」と呼ばれたと指摘する。
目次
はじめに
序 章 謎と矛盾を秘める七世紀後半の歴史
1 飛鳥時代後半の歴史の霧
2 歴史の霧を晴らすために
第一章 藤原京先行条坊発掘調査研究史・上
1 発掘調査の開始から先行条坊の発見まで――一九六五~一九八〇
2 先行条坊の研究拡大――一九八一~一九九三
第二章 藤原京先行条坊発掘調査研究史・下
1 先行条坊の研究深化――一九九四~二〇〇三
2 先行条坊理解の固定化――二〇〇四~二〇一七
3 研究の現状と課題
附論 建設現場実務の誤解
第三章 先行条坊の建設上限考
1 下ッ道・中ッ道の先行研究
2 《大尺四里の論理》――中ッ道は条坊道路である
3 紀寺考・建立が先か条坊が先か
4 下ッ道の建設が七世紀半ばを示す傍証
5 先行条坊の造営上限を規制してきたバリア「新城」
6 飛鳥土器編年とその実年代考
第四章 飛鳥浄御原宮の所在地考
1 飛鳥浄御原宮の内郭構造の原点
2 小澤毅説とその枠組み
3 小澤毅説の検証
4 飛鳥浄御原宮は何処か
第五章 実在した倭京
1 『日本書紀』「詣」の字義/倭京に詣る
2 斉明朝期の「突然の人口集中」と土木事業
3 孝徳紀・斉明紀に見える「倭京」「京」
4 天武紀「京師」「京内」「古京」の理解
5 持統朝「新益京」の意味するもの
6 留守司高坂王の論理
7 倭京の実相・その規模と構造
補論 『書紀』「詣」全数調査
第六章 先行条坊の建設主体・「鼠」考
1 景行紀・皇極紀の鼠
2 鼠の出現と大化元年に連続する事変
3 鼠の東国経営
4 鼠の都城造営・難波京と倭京
5 鼠の国「倭国」
補論 難波宮のパラドックス序説
終 章 七世紀後半の歴史・第二幕
1 白村江の大敗とその結末
2 鼠の行方
3 『日本書紀』の真実
4 飛鳥とは何か
5 脱出! 藤原京・平城京遷都
おわりに
図版出所一覧
参考文献
人名・事項索引