共生社会創造におけるソーシャルワークの役割
地域福祉実践の挑戦
編著:上野谷 加代子
内容紹介
地域福祉実践を積み重ねて作られてきた共生社会。人口減少時代に入り地域があらゆる意味で大きく変化している今、共生社会が見直され、そのありかたが問われている。本書は地域福祉実践の研究者と実践者が、そもそも共生社会とは何なのかから整理し、その実態、そして創造していくための理論と方法について論考していく。そして、ソーシャルワーカーが地域福祉実践において、どのような役割を果たすべきなのかを明らかにしていく。
目次
はじめに
序 章 実践的社会福祉研究の軌跡と展望──ソーシャルワークの展開を求めて(上野谷加代子)
1 ソーシャルワークとしての地域福祉実践は共生社会づくりに役に立つのか
2 実践的研究者に成長するために影響を受けた研究者と研究方法
3 さらなるソーシャルワークの展開を求めて
第Ⅰ部 共生社会と地域福祉
第1章 地域福祉の主流化その後──地域福祉と多文化共生社会(武川正吾)
1 地域共生社会の登場
2 「共生社会」論の系譜
3 「地域福祉」論の系譜
4 この20年間の変化
5 地域福祉の新たな段階
第2章 「共助」再考とニュー・パブリック・ガバナンス(斉藤弥生)
1 「地域共生社会」は何を目指しているのか
2 政府の「地域共生社会」概念にみる「共助」と「互助」
3 戦前にみる「共助」とそのルーツ
4 共助のしくみの事例として(1) 協同組合による医療と介護
5 共助のしくみの事例として(2) 地区社協と公民館の協働
6 ニュー・パブリック・ガバナンスを求めて──分かれ目に立つコ・プロダクション
7 ソーシャルワークの機能モデルを質的調査に援用する
8 ノスタルジー(郷愁)ではなくストラテジー(戦略)に
第3章 共生社会に向けての新しい地域福祉(松端克文)
1 地域福祉論の2つの側面
2 地域福祉論の変遷
3 地域共生社会の実現をめぐって
4 個別支援と地域支援(地域づくり)の一体化をめぐって
5 地域づくり・プラットフォームの形成
第Ⅱ部 共生社会に向けた基盤整備と方法
第4章 共生社会づくりの根拠と実践(室田信一)
1 問題意識
2 「地域共生」時代の実践とは
3 「どう(how)」のロジック
4 「地域共生社会」を本気で実現するために
5 「たすけ上手・たすけられ上手」な共生社会のために
第5章 共生社会の基盤をつくる権利擁護とソーシャルワーク(鵜浦直子)
1 共生社会の基盤をつくる権利擁護とソーシャルワーク
2 成年被後見人の選挙権
3 子どもの意見表明や障がいのある人の意思決定支援
4 予防的支援
5 共生社会の基盤をつくる権利擁護とソーシャルワーク
第6章 包括的な支援体制を目指す市町村地域福祉行政の再編(永田 祐)
1 はじめに
2 包括的な支援体制の構築の課題と研究課題
3 包括的支援の構築に至るプロセス──愛知県豊田市の事例から
4 包括的な支援体制構築に向けた庁内連携体制構築の条件
第7章 共生社会における官民協働のあり方──地域福祉の政策化をめぐって(藤井博志)
1 共生社会の形成と地域福祉
2 社会福祉法上の問題点
3 自治体における官民協働のあり方
4 上位計画としての地域福祉計画の課題
5 社会福祉の共通基盤を形成する基盤となる事業の計画化
6 開発的な官民協働を促進する「民間の地域福祉基盤」の形成
第Ⅲ部 社会福祉法人としての社会福祉協議会・施設の可能性
第8章 共生社会実現に向けた社会福祉協議会の戦略(所 正文)
1 地域共生社会の実現に向けた社協のジレンマ?
2 社協活動の歩みと地域共生社会実現に向けての目指すべき姿
3 堺市社協における地域福祉推進戦略と地域共生社会実現への取り組み
4 地域共生社会の実現に向けた社協の戦略と今後の課題
第9章 共生社会をつくる地域福祉実践の新たな手法(谷口郁美)
1 共働実践を創造するプラットフォーム──滋賀の縁創造実践センター
2 共感から生まれる「越境する地域福祉実践」
3 私たちはどのような手法で共生社会を実現していくのか
第10章 共生社会における社会福祉法人の可能性を歴史から探る(堀 善昭)
1 社会福祉事業家とミッション
2 昭和初期における施設内での援助関係
3 社会福祉法人の成立過程
4 現代における社会福祉法人の先駆的な実践事例
第Ⅳ部 「災害」とレジリエンス
第11章 災害ソーシャルワークと人づくり(山本克彦)
1 災害とボランティア
2 災害ボランティアと人材養成
3 災害ソーシャルワークの理論化と人材養成
第12章 東日本大震災から学ぶ共生社会づくり(川井太加子)
1 東日本大震災との関わり
2 避難所の生活状況
3 仮設住宅の生活状況
4 活動からの学び
第13章 壊れてしまったものとの共生──震災や原発を扱った文学作品を手がかりに(大島隆代)
1 問いの存在
2 原発問題と地域共生社会
3 原発問題や震災を文学作品はどう描いたか
4 まとめにかえて──共生への道を照らすもの
第Ⅴ部 共生社会に求められる地域福祉専門職と養成
第14章 共生社会に求められる地域に根ざしたソーシャルワーカー(金田喜弘)
1 地域共生社会を創造する社会福祉専門職とは
2 地域福祉実践事例から社会福祉専門職の役割を描く
3 住民の主体性を高めるための専門職の役割
第15章 ビネットとケースメソッドで築く学びの共同体(野村裕美)
1 内発性と共感を育む学習
2 ケースメソッドとは
3 ビネット(短文事例)の活用
第16章 地域共生社会の実現へ──豊中のコミュニティソーシャルワークの実践から(勝部麗子)
1 阪神・淡路大震災から始まった孤独死対策の取り組み
2 コミュニティソーシャルワーカーの誕生と公民協働の問題解決のしくみづくり
3 豊中型地域共生社会への挑戦
4 個別支援と地域づくりをトータルに行うということ
終 章 地域福祉研究者・実践者のありようを考える(南 友二郎)
1 研究者は実践現場といかに協働するのか
2 インタビュー調査からみる上野谷加代子の実践的研究
3 共生社会構築に向けた地域福祉研究者・実践者のありようとは
おわりに
索 引
ISBN:9784623088676
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:314ページ
。定価:3500円(本体)
。発行年月日:2020年03月
。発売日:2020年03月31日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS。