これからの公共政策学 1
政策と規範
著:佐野 亘
監:山谷 清志
他著:松元 雅和
内容紹介
公共政策によって世の中の様々な問題を解決し、社会を改善するには、どうすればよいのだろうか。これまで、経済成長、権利保障、科学技術の進展などが重視されてきたが、現在、それだけで解決できない問題が山積され、価値や規範について正面から考えることが求められている。これからの時代、公共政策を何のために行うのか、実現したい価値は何か、どのような規範に基づいて政策を考えるのか、を改めて問うテキスト。
目次
刊行のことば
はしがき
序 章 社会をよくするにはどうすればよいか(佐野 亘)
1 なぜ規範的議論は避けられてきたのか
2 本書の構成と意義
第Ⅰ部 政策規範論の課題
第1章 なぜ公共政策規範か(佐野 亘)
1 公共政策とはなにか
2 価値・規範とはなにか
3 なぜ価値や規範について学ぶのか
4 価値や規範に関する議論は無意味か
5 価値や規範をどう使うか
6 求められる規範のあり方
コラム① 「右」と「左」の議論の限界
第2章 規範のつかまえ方(松元雅和)
1 実証研究と規範研究
2 規範研究の懐疑論
3 規範研究の方法
4 実証研究と規範研究の交錯
5 実証研究と規範研究の協働
コラム② 規範研究とメタ倫理学
第3章 非理想理論(松元雅和)
1 理想理論と非理想理論
2 非理想状態Ⅰ――不利な条件
3 非理想状態Ⅱ――部分的遵守
4 実行可能性問題
5 政策規範における理想と現実
コラム③ 公共政策と実行可能性
第Ⅱ部 規範の内実
第4章 社会全体の利益(松元雅和)
1 政策規範としての功利主義
2 功利主義の特徴
3 経済学への展開
4 効用と権利
コラム④ 社会全体における「全体」の範囲
第5章 分配的正義(大澤 津)
1 ロールズの正義論
2 運と責任
3 ケイパビリティ・アプローチ
4 分配的正義に関するその他の論点
5 チェックリストとしての分配的正義論
コラム⑤ リバタリアニズムと再分配
第6章 非個人主義的価値(佐野 亘)
1 客観的な価値は存在するか
2 人間の活動と性質
3 モノや状態に内在する価値
コラム⑥ ノートルダム大聖堂は何を象徴しているのか
第Ⅲ部 規範の衝突とその対応
第7章 規範の役割(大澤 津)
1 道徳的価値と政策
2 卓越主義
3 卓越主義への批判
4 政治的リベラリズム
5 卓越主義のバージョンアップ
6 政治の目的と理想的社会像
コラム⑦ お金に還元できない価値の復活と政治的安定
第8章 合意形成(佐野 亘)
1 意見の対立と合意の意義
2 合意の諸形態
3 重なり合う合意
4 妥協
コラム⑧ 価値の通約不可能性
第9章 規範的政策分析(佐野 亘)
1 規範的政策分析の必要性
2 考慮すべき価値の列挙
3 価値の定義と指標化
4 政策との関連づけ
5 諸価値間の重みづけ
コラム⑨ フランク・フィッシャーの政策分析フレームワーク
第Ⅳ部 規範適用の現場
第10章 理想と現実の距離(大澤 津)
1 理想と現実の距離への認識
2 合理的計画による社会改善への疑問
3 社会的規律への批判
4 保守主義
5 漸進主義と反対しにくい政策
6 現行制度から出発する「正義」
7 理想追求への根本的懐疑
コラム⑩ 「再発防止」の理想と現実?
第11章 政策決定者と規範(松元雅和)
1 ヴェーバーの責任倫理
2 責任倫理の性質
3 責任の分配Ⅰ――政治家と官僚
4 責任の分配Ⅱ――集団と個人
5 「汚れた手」の問題
コラム⑪ 本人-代理人関係の範囲
第12章 政策実施者と規範(大澤 津)
1 公務員と規範をめぐるアプローチ
2 権威の担い手としての公務員
3 民主主義の担い手としての公務員
4 現実の行政への含意
コラム⑫ 協働のための権威を担うには?
索 引
ISBN:9784623086849
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:282ページ
。定価:2800円(本体)
。発行年月日:2021年05月
。発売日:2021年05月07日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JB。