渋沢栄一と「フィランソロピー」
国際交流に託した渋沢栄一の望み 5
「民」による平和と共存の模索
著:見城 悌治
著:飯森 明子
著:井上 潤
内容紹介
「実業家・渋沢栄一」を超えて
渋沢の国際社会に対する姿勢や、平和実現に向けた思考を問いながら、国際交流活動の実践と、その現代的意義を評価する。
その生涯の中で600におよぶ社会事業に携わってきた渋沢栄一。本書では第一次世界大戦を前後する日本社会の状況を再確認しながら、渋沢の外国人との交流の側面からフィランソロピーの実践に迫る。渋沢が関与した種々の国際交流事業や国際認識、国内外社会への貢献はどのようなものだったのか。各事業史のなかでの渋沢の役割を位置づけるほか、東アジア地域において、その歴史的な広がりも考慮しながら、渋沢の社会貢献活動とその影響を考察する。
目次
はしがき
凡 例
序 章 排外主義から国際主義へ(飯森明子)
一 国際交流への渋沢の出発点
二 変化する国際社会と渋沢の姿勢
三 本書の構成
第Ⅰ部 平和と共存に向けた「フィランソロピー」活動へのまなざし
第一章 日本の国際化と渋沢栄一の「国際道徳」(櫻井良樹)
一 渋沢の国際交流活動
二 日露戦後の日本国内の国際化
三 問われる戦争の道義的正当性
四 『伝記資料』に見る国際道徳
五 国際交流と国際道徳
第二章 渋沢栄一にとって英国とは何か(木村昌人)
一 英国は渋沢の理想の国家であったといえるか
二 「依存」から「挑戦者」へ――変化する日英経済関係
三 欧米漫遊と渡米実業団
四 揺れ動く渋沢の英国観
第三章 渋沢栄一と米国のフィランソロピー(中嶋啓雄)
一 カーネギー、ロックフェラーへの評価
二 渡米実業団とその影響
三 パナマ万博出席と最後の渡米
四 晩年の渋沢による対米「フィランソロピー」
第Ⅱ部 国際交流活動における日本の実践
第四章 博覧会と渡米実業団の交流 (ジェファー・デイキン(Jeffer Daykin)[翻訳・飯森 明子])
一 博覧会と国際関係の構築
二 相互参加としての博覧会使節団
三 アラスカ・ユーコン太平洋博覧会と一九〇九年渡米実業団
四 相互理解が育んだ友情の恩恵
五 人脈作りが開いた民間経済外交
第五章 民主化潮流と国際通信社設立への思い(高光佳絵)
一 第一次世界大戦以前の日本外務省の広報外交
二 日本の広報外交の転機と「渡米実業団」
三 「国際通信社」の設立
四 日本の国際的通信社の育成における渋沢の望み
コラム1 渋沢栄一のブラジル植民事業支援(名村優子)
第六章 日本国際連盟協会と新たな国際問題への姿勢(飯森明子)
一 国際連盟に対する日本の認識
二 日本国際連盟協会の成立
三 平和実現へのステップ
四 連盟協会における「国際主義」の限界
第七章 大災害支援にみる渋沢栄一と国際社会(飯森明子)
一 災害支援の対応をとおして国際社会を考えること
二 関東大震災にみる渋沢の救護活動
三 仏国南部地方洪水への支援――遠国支援に成功した関西実業家との人脈
四 中国への災害支援――混迷する日中関係と人道支援活動の危さ
五 被災者への渋沢のまなざしと支援の限界
コラム2 アルメニア難民救済と渋沢栄一の慈善事業(メスロピャン・メリネ)
第Ⅲ部 国際主義の体現とその限界
第八章 近代日朝関係における渋沢栄一の役割とその継承者たち(金 明 洙)
一 多岐にわたる渋沢の評価
二 大韓帝国期における渋沢の役割と対韓認識
三 植民地期における渋沢の継承者たち
四 移植資本主義と実業道徳の欠如
第九章 中国メディアによる報道と渋沢栄一のジレンマ――一九一四年の中国訪問を手掛かりに(于 臣)
一 同時代中国の「孔子学」と渋沢の『論語』読み
二 中国メディアの不信感と警戒
三 日中交流史における渋沢訪中の意義
コラム3 渋沢栄一と汎太平洋同盟(飯森明子)
付録 渡米実業団(一九〇九年)関係資料
一 参加者一覧
二 渡米実業団訪問都市・コース一覧(一九〇九年)
人名・事項索引
ISBN:9784623086580
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:232ページ
。定価:3800円(本体)
。発行年月日:2019年10月
。発売日:2019年10月15日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS。