近代移行期における地域形成と音楽
創られる伝統と異文化接触
編著:北原 かな子
編著:浪川 健治
内容紹介
音を通して歴史を見る。
洋楽の受容に伴い、階層間の音楽世界の差異が再編され、新たな音楽世界が形成された近代移行期。
日本史、思想史、民俗学など、多彩な研究視点から音楽の歴史性を探ることで、グローバル化する地域文化の連続と変容を問う。
洋楽受容に伴い、階層間の音楽世界の差異が再編され、新たな音楽世界が形成された近代移行期。日本史、思想史、民俗学等の多彩な研究視点から音楽の歴史性を探ることで、グローバル化する地域文化の連続と変容を問う。
地域文化はどのように変容し、新たな文化創出につながったのか。音に関わる感性の視点から、歴史の中の人間像の変化を分析・総合。社会体制の変化の背景にある文化の連続性について考察する。
目次
序 章 時のなかの音と音楽──移行する時代、変化する感性(浪川健治)
1 歴史のなかの音と音楽
2 地域の成立と「感性」
3 音と音楽をめぐる人の営み
第Ⅰ部 近世民衆の芸能と武士の奏楽
第1章 祈り、そして娯楽──近世津軽の「騒」と音(浪川健治)
1 岩木山への登拝
2 登拝儀礼──規制される音
3 幕末の登拝儀礼
4 「音」と「騒」の視覚化──絵図と文献史料
5 「騒」──解放の空間と時間
第2章 教養としての音曲・娯楽としての音曲──偕姫の養育をめぐる近世後期の萩藩の動向(根本みなみ)
1 近世大名家における音曲修養
2 大名子女の教育──一二代藩主斉広の遺児偕姫を中心に
3 江戸方の生活と音曲
第3章 近世後期の大名家奥向における奏楽の変容──松浦静山と松浦熈の比較から(吉村雅美)
1 大名家の交際と奏楽
2 松浦家江戸藩邸における接待と奏楽
3 静山の収集書と「管弦」──「新増書目」の記述から
4 幕末期における奥向の奏楽をめぐる評価
5 編成される「式楽」と排除される「謡声」
第Ⅱ部 移行期の民衆文化と音楽
第4章 北部沖縄における伝統音楽の変容──久志・辺野古の事例から(古家信平)
1 集落に伝わる音とその意味
2 古謡のはじまりと特徴
3 近代への移行と僻村の音楽
第5章 三味線の近世──「津軽三味線」以前(浪川健治)
1 「操あやつり」と三味線──一七世紀の系譜
2 定着する三味線の音
3 閉ざされた空間と三味線──御座敷のなかで
4 享受される三味線──湯治場の楽しみ
5 開かれた空間と演者の束縛──三味線の二つの性格
第6章 平尾魯僊の聴いた音と音楽──北奥地域のグローバル化と社会変容(藤原義天恩)
1 平尾魯僊の略歴と音の記録
2 魯僊が描いた音──近世弘前藩の祭と箱館の洋楽
3 幕末の津軽に響く不可思議な音と自然の音
4 明治維新期の招魂祭における音と音楽の和洋折衷
5 町民知識人が示した弘前城下の文化
第Ⅲ部 洋楽の到来と近代音楽の世界
第7章 東方正教の音楽と士族(山下須美礼)
1 東方正教の音楽
2 明治初期の正教会における詠隊
3 東北の正教会における聖歌
4 音楽修学への道筋
5 士族ハリステアニンと正教会の音楽
6 音楽的経験の連続性
第8章 明治初期弘前における洋楽受容と讃美歌(北原かな子)
1 明治の洋楽導入と弘前──地方のケーススタディとして
2 東奥義塾の洋学受容から洋楽へ
3 ジョン・イング夫妻によるキリスト教布教
4 洋楽普及を支えたオルガンの存在
5 弘前の唱歌教育の土壌となった讃美歌
第9章 明治一四(一八八一)年の天皇巡幸と弘前藩士族による雅楽(北原かな子)
1 明治天皇の巡幸と弘前
2 明治九(一八七六)年の天覧授業における東奥義塾生の唱歌
3 明治一四(一八八一)年の明治天皇東北巡幸と弘前訪問への哀願書
4 弘前行在所における雅楽演奏
5 明治一四(一八八一)年秋の弘前における政治的・思想的対立
6 対象的な思想を象徴した二種の音楽──二つの天皇巡幸のなかで
第10章 交差する邦楽調査と唱歌編纂──明治四〇年代の東京音楽学校に着目して(鈴木啓孝)
1 館山漸之進の死と平家音楽保護の打ち切り
2 平家音楽盛衰史略──明治四〇(一九〇七)年一〇月の邦楽調査掛発足まで
3 邦楽調査嘱託・館山漸之進の挫折──明治四一(一九〇八)年一二月の衝突を焦点に
4 東京音楽学校長・湯原元一の活動
5 伝統の喪失と創造──その共時的進行
終 章 歴史史料に音を読む(北原かな子)
1 受容した耳と「日本の音楽」
2 グローバル化のなかの音文化をみる
あとがき
索 引
ISBN:9784623086467
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:322ページ
。定価:6000円(本体)
。発行年月日:2020年01月
。発売日:2020年01月15日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:AVM。