「学校」を生きる人々のナラティヴ
子どもと教師・スクールカウンセラー・保護者の心のずれ
編著:山本 智子
内容紹介
子どもや教師・スクールカウンセラー・保護者にとって「学校」とはどのような場所か。一般的な言説の中で語られている「学校」と子どもや大人がそこで生きている現実の「学校」との間で,また子どもの思いと大人の思いとの間で,どのようなずれが生じているのか。本書は,子どもと大人,それぞれの立場・視点から生まれる多様な声・物語に着目し,元生徒と教師・スクールカウンセラーの語り合い等を通して,私たちが自明だと考えている学校についての認識を捉え直し,学校が抱える課題の本質や,学校がもつ可能性などについて考える。
目次
はじめに
第Ⅰ部 学校の多様なナラティヴ
第1章 子どもが語り直す物語──子どもから「大人」への変容(山本智子)
1 「育てられる者」から「育てる者」への語り直し
2 思春期・青年期の子ども
3 語り直される物語
4 語り直されない物語
5 子どもの物語を支えるために
第2章 発達障害のある子どもにどうかかわるか──「気になる行動」を理解する(伊丹昌一)
1 発達障害のある子どもの学校での生活
2 発達障害とは
3 発達障害のある子どもの保護者への支援
4 支援の実際──授業中に先生に反抗的な態度をとる小学校6年生の翔太くんの事例
第3章 スクールカウンセラーから見た「学校」──見えにくいドミナント・ストーリー(廣瀬幸市)
1 複雑化する学校現場
2 スクールカウンセラー養成の現場で
3 現代の学校を取り巻く複雑な事情
4 スクールカウンセラーの立場から
5 学校におけるナラティヴとは
6 目指すべき共通の方向性
第4章 「学校」とはどのような場所か──歴史を手がかりに考える(光田尚美)
1 「学校」を考えるとは
2 古代・中世の学校
3 近代の学校
4 新教育運動の中の学校
5 学校を見つめる
6 「語り」が紡ぎ出す学校の意味
7 「学校」という物語
第Ⅱ部 元生徒と教師・スクールカウンセラーの対話
第Ⅱ部のはじめに(山本智子)
第5章 「何でオレばっかり!」──学校になかった大切なもの(吉川武憲先生・山田哲徳さん)
「よう来てくれたの」
「何でオレばっかり」
人間、見た目だけじゃないやん
少年院は楽しかった
お前が悪いとはいっさい言わん
全部を褒めてくれるし怒ってもくれる
少年院では勉強しようと思った
ひっかかる言葉
聞き方・言い方の違い
その車がものすごく光ってみえる
第6章 「あそこで変われてなかったら、今ごろどうなってたかな」──通級指導教室での体験のもつ意味(芳倉優富子先生・高中伸介さん)
今の仕事
小学校と通級指導教室
野球の話が好き
手を出す先生
「こいつ、どうなんや」
先生の思い
通級指導教室に通い始めたとき
人との距離が縮まっていく
みんないい人
周りに当たらないように
会社のうっとうしい人
芳倉先生だったから行った
わかってくれる人が必ずいる
「絶対、ああいう自分には戻りたくない」
支援級(特別支援学級)に入ったことについて
ちゃんとした大人になれている
「よく考えている子だな」
「俺らしいな」
今だったら絶対にしない
第7章 「めっちゃ言ってくる先生」との出会い──不登校・自傷行為から脱するまで(森下文先生・河合美穂さん)
他のカウンセラーとは全然ちがう先生
「ほっておけへん」
お父さんが残した大量の写真
いろんなことを思い出した
登校とリストカット
おばあちゃん
留年と休学
門衛のおじさん
お父さんのお墓に行く
「普通」の進路にこだわる
「めっちゃ言ってくる」先生
祖母の死と気持ちの変化
先生のところに来て補充する
カウンセラーになりたい
出会い
第8章 「これはちょっと逃げられないな」──元担任と元生徒の20年近くのつながり(川畑惠子先生・さやかさん)
まっとうに生きてくれているだろうか
父と母の関係
自分がいない方が世の中は丸く回る
進学と父に対する責任
人を信用できない子?
人間関係の難しさ
これはもう逃げられない
この子らしい生き方をしてほしい
他の子どもと比較される
同窓会
大学に行く
共通のものを感じる
教師は見返りを求めない
絶対いつか死ぬから
死ぬときには全部プラマイ・ゼロに
終 章 学校でナラティヴを活かす(森岡正芳)
1 学校でなぜナラティヴが必要なのか
2 学校での出来事を語る
3 第Ⅱ部の対話より
4 学校のナラティヴ
5 伝えつなぐ力
おわりに
ISBN:9784623083350
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:A5
。ページ数:248ページ
。定価:2600円(本体)
。発行年月日:2019年07月
。発売日:2019年06月24日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JNA。