福祉は「性」とどう向き合うか
障害者・高齢者の恋愛・結婚
他著:結城 康博
内容紹介
「私、知的障害者だから恋愛できないね」は、日本社会の現実なのか。老いらくの性は、年甲斐もないことなのか。障害者・高齢者の性・恋愛・結婚は、自己責任なのか。本書は、当事者とその家族・支援者(福祉職員・街コン関係者等)へのインタビュー等を基に、「機会平等」の観点から支援の是非・あり方について考えたものである。「自己決定の尊重」と「社会規範」の狭間にある、誰もが持つ「性的ニーズ」への支援について真正面から捉えた一冊。
目次
まえがき
序 章 福祉専門職の悩み——現場からの報告(結城康博)
1 タブー視される「性」の問題
2 レイプ未遂?——判断の困難な認知症高齢者のケース
3 福祉専門職へのセクシュアルハラスメント
4 現場が抱える問題①——高齢者福祉施設の場合
5 現場が抱える問題②——障害者福祉施設の場合
6 超高齢化社会の到来
第Ⅰ部 高齢者・障害者の性
第1章 高齢者の性・恋愛・結婚(後藤宰人)
1 性生活を続ける高齢者夫婦たち
2 恋をする高齢者たち
3 恐怖を覚える女性——求める夫と避ける妻
第2章 高齢者と性風俗(後藤宰人)
1 性風俗に通う男性高齢者たち
2 「上客」として扱われる男性高齢者
3 人は死ぬまで性欲を持ち続ける
4 男性高齢者が性風俗に求めるもの
5 性風俗を利用する女性高齢者
第3章 障害者の性・恋愛・結婚①——肢体不自由者の場合(武子愛)
1 切実な欲求としての「性」
2 肢体不自由者の周囲を取り巻く問題
3 本人を取り巻く問題
4 障害者の権利に関する条約
5 「性的ニーズ」を要求できるかどうかは運次第——支援者の姿勢が鍵
第4章 障害者の性・恋愛・結婚②——知的障害者の場合(武子愛)
1 知的障害者であるがゆえに生じる困難
2 施設を利用する知的障害者の問題——「性的ニーズ」を満たすことができない人々
3 性風俗産業に利用される女性
4 「搾取」による「寂しさ」の解消——軽度の知的障害者が抱えるジレンマ
第5章 障害者と性風俗(後藤宰人)
1 健常者も障害者も同じ
2 障害者対応性風俗と障害者専用性風俗
3 障害者が「専門店」に求めるもの
4 性風俗から見える社会のひずみ
第Ⅱ部 利用者の「性的ニーズ」と福祉専門職
第6章 「性的ニーズ」と向き合うことになった福祉専門職(武子愛)
1 介護とセクシュアルハラスメントは分けられない?
2 「性的ニーズ」の対象となることはどのように捉えられてきたのか——先行研究の知見から
3 施設(組織)で対応したケース
4 一職員のみでの対応を求められたケース
5 自分に向けられた「性的ニーズ」の表明をどう捉えるか——虐待防止法をめぐって
第7章 「性的ニーズ」をどのように捉えるのか(武子愛)
1 「性」に立ち入りたくない福祉現場
2 支援する側はどう思ったのか——支援者たちの証言から
3 「性的ニーズ」への支援の障害——社会規範・利用者の判断能力・支援の根拠
4 福祉の理念および人権に関する宣言から
5 「性的ニーズ」への支援は可能か
第Ⅲ部 公共政策・社会環境から見た「性的ニーズ」
第8章 「性的ニーズ」への支援と公共政策(結城康博)
1 社会保障費の増加の中で
2 介護保険外サービスを利用した支援
3 現行の法令に規定されている余暇活動への支援
4 公共財と私的財
5 ボランティアによる支援
6 厳しい社会保障費問題の壁
7 「性的ニーズ」に関するケア・支援に悩む従事者
第9章 「性的ニーズ」を取り巻く社会環境——社会福祉の視点から(米村美奈)
1 社会福祉における性の捉え方
2 利用者の「性的ニーズ」を取り巻く障壁
3 障壁を作り出したのは誰か
終 章 自己決定を尊重した支援は可能か(米村美奈)
1 嘘をついた男性利用者——行きたかったのはレストランではなく性風俗
2 自己決定とは
3 自己決定への支援
4 支援者の自己開示——「性的ニーズ」への対応に求められるもの
5 利用者の「真」のニーズの追求
6 対話による潜在的ニーズの把握
7 支援者が自己決定に「No」ということ——婦人保護施設のケースを踏まえて
8 利用者のニーズだけがすべてではない——婦人保護施設に保護された女性たち
9 専門職の責務
あとがき
索 引
ISBN:9784623081691
。出版社:ミネルヴァ書房
。判型:4-6
。ページ数:244ページ
。定価:2200円(本体)
。発行年月日:2018年02月
。発売日:2018年02月26日
。国際分類コード【Thema(シーマ)】 1:JKS。